12 雨宮さん家の双子は小生意気
「え、ええっと、雨宮さんの妹だよな? 双子の……」
「うん、私は霞」
「そして私は澪」
「うわっ!」
ひとりだけかと思ったら、もうひとり横からヌッと現れた。
揃った双子の顔は一卵性なのかそっくりだが、後から現れた方は髪型をポニーテールにしている。
ツインテールなのは霞。
ポニーテールなのは澪。
髪型が違っていてくれて助かった、じゃないと服もお揃いのターコイズブルーのパーカーワンピースなので見分けがつかなかった。
「おにいさんは? 雫姉のなに?」
「お名前は?」
双子らしい連携で交互に尋ねられる。
一階に下りた雨宮さんとはすれ違いになったのか、霞ちゃんも澪ちゃんも、俺がここにいる事情を雨宮さんから聞いていないみたいだ。
「えっと、俺は晴間っていうんだ。雨宮さんの学校の友達で、服が不幸なアクシデントで濡れたから、ちょっと着替えを借りているところ。……というかいい加減、君たちも部屋の中で話さないか?」
双子は警戒しているのか、ドアの隙間から覗き見ている体勢のままだ。不審者として扱われているようで地味に心にくる。
「ねえ、霞。晴間って……」
「うん、あの晴間だと思うよ、澪」
いや、どの晴間?
双子はなにやら不穏なやり取りをしたあと、ようやく部屋に入ってきた。
小学校五、六年生くらいだとは思うのだが、近くで見るとふたりとも雨宮さんに似て、将来有望そうな美少女だ。
むしろリトル雨宮さん。
だけど雨宮さんより勝ち気というか、どちらも小生意気な雰囲気なので、小さい双子の女王様って感じがする。
そんな双子の女王様たちは、俺をじろじろと値踏みするように凝視してくる。
「うーん、第一印象は42点かな。雫姉が『カッコよくて優しくてあと可愛い』なんてべた褒めするから、どんな人かと思ったら普通じゃん。普通の男子じゃん」
「雫姉を騙しているなら許さないし、私は35点。この人が本当に、雫姉の大好きな『晴間くん』なの? 偽物じゃない?」
小学生の口から出るとは思えない辛辣な言葉に、グサグサめった刺しにされて、俺はなにやらもっとすごいことを聞き逃した気もするが、チーンと撃沈する。
今時の小学生女子ってこんな怖いのか?
これなら合法ロリ妖怪なココロさんの方がまだ人間味があるぞ。
むしろ俺、なんか敵視されている……?
「え、ええっと、俺は君たちと初対面のはずだけど、君たちに嫌われるようなことしたかな?」
「ふむ、性格は今のところ悪くなさそうだけど、私たちが小学生だからって舐めているのかも。プラス5点してやっぱりマイナス8点」
「私もプラス8点してマイナス10点」
おい、どっちも結局マイナスじゃねえか。
「でもね、澪。大事なのは雫姉にとって害を及ぼすかどうかだから」
「そうだね、霞。うるさいブラコンの零の代わりに、私たちが見極めなきゃ」
双子は体を寄せ合って、丸聞こえなヒソヒソ話をする。
どうやら俺は、雨宮さんの友人としてふさわしいかどうか、ごきょうだいによる審査を受けている真っ最中らしい。
そういうことか。
ならば受けて立とう。
「俺は雨宮さんに害なんて及ぼさないよ。逆に及ぼす奴を排除する心構えだ!」
「ふーん。今のが本当ならプラス30点だけど、じゃあテストね」
「ズバリ、雫姉のことはどう思っている?」
「可愛い。マジで可愛い。この世で一番可愛いと言っても過言ではないほど可愛い」
「雫姉のいいところ言える?」
「最低十個ね」
「そんな簡単でいいのか? まず優しいし、人への気遣いが女神だし、可愛いし、頑張り屋だし、真面目だし、可愛いし……」
「雫姉の好物は知っている?」
「これくらいは知っていて欲しいよね」
「いや余裕だろ、どら焼き!」
質問攻めにあいながらも、俺も一歩も退かずに答えていけば、どうにか俺への点数評価はふたりとも60点代まで跳ね上がった。
それでも厳しい。なんだこの厳しさ。
「ふんっ、意外とやるじゃん、おにいさん」
「じゃあ次は……」
双子がまだまだ続けようとしたところで、開きっぱにしてあったドアから「こ、こら! 霞も澪もなにしているの!」と雨宮さんが戻ってきた。
雨宮さんが携えるシックなお盆には、グラスに入った麦茶に、袋入りお煎餅が。俺へのおもてなしセットだよな。その実家のお母さんみたいなセットに、素朴な雨宮さんらしさを感じて妙にほんわかする。
一方で、雨宮さんの登場に双子はツインテールとポニーテールを跳ねさせ、ギクリと体を強ばらせる。
「ちょ、ちょっと噂の晴間くんを試しただけだもん……だって『また』、ろくでもない男に、雫姉が傷つけられることあったらイヤだし」
「事前調査は大切だって、学校の先生も言っていたよ。雫姉はお人好しだから、私たちが守らなきゃいけないんだもん……」
雨宮さんの前では急にしおらしくなる双子。
こうしていると、多少愛らしくないこともない。
しかし、ろくでもない男とは……?
雨宮さんの過去をほのめかす言葉に、俺は自然と眉が寄る。





