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【書籍3巻&コミカライズ連載中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
四章

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38 一件落着……からの?

「なんだよ……わざわざ腹いせしに来たのか? それかやっぱり俺と付き合いたいって? 今からでも謝れば、キープのカノジョくらいにならしてやるよ!」

「はあ?」


 ダメだ、まったく話が通じないタイプだ。

 俺もたいがい自信過剰だが、この男も別のベクトルで自信過剰だろう。どうしたらそのような思考になるのか、まったく持って理解できない。


 キープのカノジョってなんだよ、いよいよ怒りが爆発しそうになる。


 雨宮さんは、雨宮さんは俺の……!


「……あ、あなたとお付き合いなんて、絶対にしません!」


 バッと俺の背から出て、そう否定したのは雨宮本人さんだ。


 両手を強く握り締め、いっぱいいっぱいになりながらも茶髪野郎を睨んでいる。可愛いのに凛とした横顔は、思わず息を呑むほどに綺麗だった。


「――私には世界で一番、可愛くてカッコいいカレシがいるの! その人だけが大好きだから!」


 控え目な性格の雨宮さんが、プールの水面を揺らす勢いで俺への想いを叫んでくれた。その事実に胸を打たれる。


 ちゃんと変われているよ、雨宮さん。

 今まさに、過去のトラウマに勝ったじゃないか。


「ふ、ふざけんな!」

「っ! 雨宮さん、危ないっ!」


 逆上した茶髪野郎は、ブンッと勢いよく腕を振り上げた。俺は無我夢中で、雨宮さんの前に立って全身で庇う。


「晴間くんっ⁉」


 背後から雨宮さんの悲痛な叫びが耳を突く。


 モデルなので、顔面を殴られたら非常にマズい。美空姉さんに怒られるどころじゃ済まない。


 それでもここは、光輝の俺として自分のカノジョを守りたかった。

 雨宮さんには傷ひとつ絶対につけさせないからな!


 覚悟を決めて、来たるべき痛みに備える。

 すべてがスローモーションに感じた。


 ……が。


「待て待て待てえええええ!」


 ダダダダダッ!


 間一髪のところで、凄まじい勢いで誰かが走って来た。

 まさかの雷架だ。


 どうしてビーチサンダルでそのスピードが出るのか、勢い殺さず踏み込んだ雷架は、茶髪野郎の真横からタックルを決める。


「うぐっ!」


 腹部に強烈な衝撃を食らった茶髪野郎は、盛大によろめいた。

 その腕をガシッと巻き取り、一気に雷架は身を屈めて、奴の体をよいしょっと己の背に乗せる。


「大事なお友達を傷付ける奴は……」


 ドォン!

 轟音と共に、どこからか聞こえたのは「一本!」という判定。


「……雷架ちゃんが許さないんだからねっ!」


 鮮やかな一本背負いを決めた雷架は、腰に手を当ててふんっ!と鼻を鳴らす。

 俺と雨宮さんはパチパチ拍手した。


 そうだ、雷架はかつて隣のクラスの女子が痴漢被害にあった際、犯人を投げ飛ばした武勇伝の持ち主だった。テレビの武術講座で学んだだけで。


「いってぇ……」


 茶髪野郎は完全に伸びたかと思ったが、意外とタフなようで起き上がろうとした。だがそれを阻むように、いつの間にかそこにいた雲雀が絶対零度の眼差しで見下す。


「薄っすら聞こえていましたが……付き合ってやるとかキープとか、いったい何様なんでしょう? こちらが恥ずかしくなる勘違い男ですね。ご実家に鏡はございますか? ないのでしたら、購入して己を鑑みることをオススメしますよ。心の醜さを含めて、御自分がたいした人間ではないと理解出来るでしょうから」

「グハッ」


 久々に降臨した毒舌の暗雲姫に、言葉の刃でトドメを刺される茶髪野郎。項垂れてもう自力では立てなくなっている。

 なんかちょっと可哀相になって来た。


 雲雀の本気の毒舌って容赦ないよな、わかる。


「あらあら、うちの生徒会が施設の治安維持に協力しているわ」

「会長……」


 最後に悠々と歩いて登場したのは、hayate仕様からお嬢様モードになった会長だ。赤い水着の上に白のロングカーディガンを羽織っている。


 警備員らしき人たちを数名従わせており、彼等に茶髪野郎とその仲間たちを連れて行くよう指示を出した。


「もともと他のお客様からも、このグループは態度が悪過ぎるってクレームが来ていたのよね。警察沙汰にしないだけ幸運だと思って、運営側に引き渡すわ」


 やれやれと溜息をつく会長。  


 ファンデーション落としやむくみ取り体操で去っていた女性陣も、ただいま警備室で反省中だという。


 場が片付いたところで、どうして雷架たちが来てくれたのか尋ねると、助けを呼びに行った虹色がたまたま声を掛けたそうだ。


「会長さんと合流したところでツーサイドちゃんが来て、『悪者とhikariが対峙している』って聞いたから! それは助太刀しなきゃって!」

「雷架先輩がいの一番に走り出すから、追い付くのに苦労しましたよ……」

「ツーサイドちゃん、hikariに『助けてくれてありがとう』ですって」 


 虹色もこういうところは捻くれていないんだな……なにはともあれ、無事でよかったと思う。

 一件落着、なのか?


「あの、晴間くん……私……」


 後ろから雨宮さんが、そっと俺の手を握った。

 俯いていて表情はわからないが、先ほど彼女の想いの丈を聞いたばかりのため、思い出して一気に顔が熱くなる。


「あー……えっと、雨宮さんも怪我がなくてなにより、だよ」

「そ、それは晴間くんが守ってくれたから……」


 もじもじもだもだする俺たちに対し、会長は業を煮やしたのか「さて! そろそろ花火が始まるわね!」と手を叩く。


「よく見える穴場を知っているんだけど、今回は晴間くんと雨宮ちゃんのふたりに譲ってあげようと思うの。どう?」

「いいと思うー! ふたりきりで見てきなよ!」

「私は混まないところで見られるならどこでも……」


 気遣いに戸惑う俺の横で、雨宮さんがペコッと頭を下げた。


「会長さん、小夏ちゃんも雲雀さんも、助けてくれてありがとうございます。今も花火の穴場まで……」


 雨宮さんは下手に恐縮せず、会長たちの心遣いを受け取ることにしたらしい。トラウマに立ち迎えたことで、これもまた良い心境の変化なのかもしれない。

 俺の顔を見上げて、雨宮さんは「花火、楽しみだね」と頬を緩める。


 彼女がもう泣かずに、笑っていてくれるならなんでもいい気がした。


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GCN文庫様より、2025年1/20に第3巻発売決定、詳細は活動報告に☘
コミカライズも連載中☘

書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
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