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【書籍&コミック4巻発売中】世界で一番『可愛い』雨宮さん、二番目は俺。  作者: 編乃肌
四章

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33 会長様と急展開

「男子組だけになっちゃったね」

「ですね」


 薄井先輩と俺はお冷を飲んで、ますます寂しくなった空間で一息つく。

 だがキンキンに冷えた水は、先輩の胃には優しくなかったらしい。


「うっ……ごめん、冷たすぎてお腹痛くなってきたかも」

「えっ⁉ 大丈夫ですか⁉」

「僕、普段からお腹壊しやすくて……胃弱なんだそもそも……ちょっと薬飲んでトイレ行って来るね」


 腹部をさすりながら、先輩もそそくさといなくなった。


 失礼ながら胃が弱そうな印象はあったが、常備薬もお持ちとは本格的に案じてしまう。そんな先輩に万が一俺=hikariだとバレでもしたら、精神的な負荷も掛かって即入院案件じゃなかろうか。


 そして、ついに俺だけになってしまった。


「――あら、晴間くんだけ? 好都合ね」


 満を持して颯爽と現れた会長は、登場から不穏な台詞を吐いて俺と対面になる席に腰掛ける。手には赤いアイスキャンディーが握られていた。


「待たせていたならごめんなさい」

「いや、わざわざ食べ放題のリストバンドまでくれて……みんな感謝していましたよ。会長のお昼は……?」

「このアイスキャンディー一本でいいわ。これからの戦いに備えて、私も気が張っているから」


 ペロリと、会長はアイスキャンディーをひと舐め。


 あのゲーセンの帰り道以来、お嬢様は庶民のアイスがいたく気に入ったそうだ。


「戦いって……雨宮さんとも話していたんですが、hayate案件でなにかありました?」

「そうといえばそうかしら。私にも予想外の緊急事態であって、同時に最高の好機でもあるの」


 いったいなにがあったのだろうか。


「実はね……」


 会長は身を乗り出して声を潜める。テーブルに大きな胸までどんと乗ってこちらの視界は迷子になるが、内容は深刻だった。


 会長の親父さん……一番の彼女の宿敵が、このプール施設の運営にも一枚噛んでいるということで、今から視察に来るらしいのだ。


「お父様は私がここにいることは知らないわ。お父様の目的のひとつは、夜の部のステージでやるプロモーションタイムのようなの」

「そんなのあるんですか?」


 要は新商品発表会を、ステージイベントの合間に事前予告ナシで行うらしい。


『神風リゾート』の社長である会長の親父さんは、多角経営の一環で飲料業界にも進出している。その新商品である冷たく甘い抹茶ドリンクを、まず無料でお客に配る。

 それからステージ上でスタッフがドリンクのコンセプトや魅力を伝え、今後の販売促進を図る企業戦略。


 ターゲット層の若者が多く集まる場で、売り込むにはなるほど絶好の機会だ。


 プロモーションの企画運営はすべて部下に一任しているそうだが、社長自ら成果だけ確認する……と。


「私の最終目標は覚えている?」

「ええっと、hayateをお父さんの目に留まらせて、『神風リゾート』のアンバサダーになること……でしたよね」


 その上で引退表明と正体明かしをして、頭の固い親父さんの度肝を抜いてやるのが、会長の悪戯心に溢れた復讐計画だったはずだ。


「そう。今回のプロモーションタイムは、目に留まらせるには最高の好機……。裏でコネと圧力で手を回しまくって、ステージにはhayateが立つことになったわ」

「マジすか」


 消えている間にそんなことをしていたのか。いくつもの闇取引が成立していそうで、社会の恐ろしさを垣間見る。


「……ここからが晴間くんにとっての本題よ。hayateと一緒に、hikariにもステージに出てもらいたいの」

「はあ……はあっ⁉」


 不意打ちで気の抜けた返事を一回してしまったが、渾身の「はあっ⁉」を決める。

 俺の驚愕の声で、お冷のグラスに残る氷がカランと音を立てた。


「前提として、プロモーションタイムは大成功で終わらせないといけないわ。そのためには私ひとりより、hikariとセットの方が威力は百倍でしょう」

「そりゃ俺が出たら会場を揺るがす自信はありますけども!」

「ナイス自信過剰ね。今まさにhikariとhayateのコラボは世間の関心も高いし、利用しない手はないわ。アメアメの社長さんになら話はついているし、仕事を取って来てくれてありがとうと感謝されたわよ」


 美空姉さん! 貴方って仕事の鬼は!


 俺は抵抗しようとするも、脳内にポンッと天使の羽を生やしたミニ雨宮さんが出現する。もう俺たちは生徒会メンバーなんだから、会長の手伝いがしたいと憂いていたな……。


「……わかりました、やります」


 俺はカノジョの天使な心を見習い、諦めて一肌脱ぐことにした。

 脱いで女装します。


「嬉しいわ。今から打ち合わせと行きましょうか」


 隙のない会長の笑みを前に力なく頷き、俺は臨時でhikariに変身することが決定したのだった。

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GCN文庫様より、2025年1/20に第3巻発売決定、詳細は活動報告に☘
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書き下ろしシーンも盛り沢山!なによりイラストが素晴らしい(◍>◡<◍)
なにとぞよろしくお願い致します!
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