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BBQ

 下ごしらえを終わらせて、なんだかんだと準備も完了。

 さぁ、みんなでお肉パーティー!


「みなさん! お待たせしました!」


 真っ青な空! 風に揺れる草原! 騎士団の敷地内に簡易で作ったかまどと燃える薪! 乗せられた網! そして並べられた机と椅子!


 ――今日はバーベキューです!


「食べましょう!」

『おー!』


 私の声を合図に、みんなが一斉にお肉を網に乗せる。

 あー、この煙とお肉の匂い! 外で食べる醍醐味!


「バーベキューのいいところは、自分で選んで、食べ放題っていうところだよね」


 隣にいる雫ちゃんに声をかけて、はい、とお皿を渡す。

 一応、塩で食べる感じになっていて、自分で焼いて自分で食べる形式。

 シンプルにね!


「椎奈さん、まだ食べないんですか?」

「うーん、食べたいんだけど、このお肉たちを火にかけてからにしようかなって」

「じゃあ私、お肉焼いて、持ってきます」

「あ、それ、うれしいかも」


 調理中に食べてもいいんだけど、そっちに集中すると、食べ損ねちゃうんだよね……。

 なので、雫ちゃんの提案に、それは助かる、と答える。

 すると、雫ちゃんは、任されます! と言って、みんながお肉を焼いているところに加わっていった。


「よし。じゃあ私はこっちを」


 ダッチオーブンに、仕込んだ和牛のモモ肉を入れていく。

 すると、ハストさんが隣にきて、そっと手伝ってくれた。


「シーナ様、肉をここに入れればいいですか?」

「ありがとうございます!」

「これはこの塊のままなのですね」

「はい。これは時間がかかるので、みなさんがお肉を焼いているうちに、これもできあがるっていう作戦です」

「なるほど。……これは王宮のものですか?」

「そうなんです。借りてきちゃいました」


 そう。このダッチオーブンは、王宮の料理長に貸してもらったのだ。

 王宮から騎士団へは、ギャブッシュで来たので、重いものが増えて申し訳なかった。

 でも、ギャブッシュはそれぐらいどうってことないよ、と微笑んでくれた。……たぶん。


「王宮でローストチキンを作ったときのように、これも炭でじっくり焼きますか?」

「はい。蓋を閉めて、その上に炭を乗せるのも一緒です」

「わかりました。では、こちらは私が持って行きましょう」

「お願いします」


 ハストさんがローストビーフ担当を買って出てくれたので、そのままお任せする。

 一度、炭に入れておけば放っておくだけなので、すぐにハストさんもバーベキューに参加できるしね。

 そんなわけで、次は――


「焼豚!」


 仕込んだ黒豚のバラ肉を持って、みんなが焼いている場所へと向かう。

 そこにはレリィ君がいて、火力調整などをしているようだった。


「あ、レリィ君、お願いがあるんだけど」

「シーナさん! なに?」

「この豚の表面をね、こんがり焼きたいからちょっと強火にしてくれる?」

「うん任せて!」


 レリィ君は、私の言葉にすぐに応えてくれて、火力を上げてくれる。

 そこに仕込んだ豚バラ肉を乗せれば――


「んー! いい音……!」

「本当だ! それにすっごくいい匂いだね…!」


 網に乗せた途端にジュジュッと音が鳴り、広がる香ばしい香り!

 タレに漬けた肉は、この瞬間がいいよね……。


「これで表面を全部焼いちゃうから、そのあと弱火にしてもらっていい?」

「うん!」


 音と香りを感じながら、豚肉の表面を焼いていく。

 そして、弱火にして、中までじっくり火を通すのだ。


「この続きはレリィ君にお願いしていいかな?」

「任せて!」


 レリィ君の元気な声に、ありがとう、と私も笑って返す。

 すると、そこに雫ちゃんがやってきた。


「椎奈さん、お肉です」


 そう言って、見せてくれたのは、とってもおいしそうな焼き具合のお肉で――


「和牛のカルビ!」

「ちょっと熱いかもしれないんですけど……」

「大丈夫!」


 雫ちゃんが差し出してくれたので、それをぱくり、と口に入れる。

 要はあーん、なんだけど、女同士だし、今はちょうどお肉をひっくり返すために右手が塞がっているから仕方がない。

 そうして、口に入れたお肉は、本当にもう、最高!


「んー! おいしい……」


 ジューシー&ジューシー。

 噛んだ瞬間に広がる肉汁がすごい。じゅわっとあふれる脂がすごい。しかも嫌な感じじゃなく、どこかさらりとしたこの脂……! 和牛! これぞ、和牛……!


「幸せ……」


 お肉って幸せ。


「良かったです」


 そんな私を見て、雫ちゃんが本当にうれしそうに笑う。

 すると、ボソリと声が聞こえて――


「……ありだな」

「ん、あり、とは?」


 お肉をごくりと飲みこんで、声のしたほうを向けば、そこにいるのはゼズグラッドさん。

 ゼズグラッドさんは、なぜか胸を押さえていた。……なんで?


「俺、気づいたんだ……シズクとシーナが仲良くしてると、胸がなんかふわっとするって」

「ふわっと」

「ああ。なんていうんだろうな、この気持ち……。前からちょくちょく感じてはいたけどな……。今のも良かった……」

「……へぇ」


 ちょっとよくわからないな。


「よし、ゼズグラッドさんもレリィ君と一緒に豚肉をお願いしていいですか」

「ああ」

「雫ちゃん。私は最後の一品を作るので、またお肉をお願いしてもいい?」

「はい!」


 わからなくてこわいから、作業に戻ろう。そうしよう。

 ゼズグラッドさんはこういう任務を与えると、しっかりふふんラッシュとしての使命を果たしてくれるので、助かるし。

 というわけで、なんだか不思議な目で私と雫ちゃんを見る、ゼズグラッドさんから離れ、地鶏へ!

 これも焼くので、豚肉の場所とはちがうバーベキューコンロで焼くことに。


「おお! イサライ・シーナ! またなにか作るのか!」

「はい」


 ははっ! と高笑いしながら迎えてくれたのはアッシュさん。

 そばにはK Biheiブラザーズもいる。

 みんなは結界が壊れたときに来てくれて、まだここにいてくれているのだ。


「これはアッシュさんの大好きな草がたくさん入っていますよ」


 そう言いながら、網の上に鶏肉を乗せる。

 さっきの豚肉のときと同じように、ジュジュッと音を立て、一気に匂いが広がった。

 でも、豚肉とは違い、今度はもっとスパイシーな香り!


「別に私は草が好きというわけではないっ」


 そのスパイシーな香りを胸いっぱいに吸っていると、アッシュさんは声を荒げた。

 その頬は赤くて、なんだか、口元をもごもごとしていて――


「……ただ、そうだな、お前が草を好きなのならば、私も好きというか、同じものが好きということは、趣味が合うということで、つまり、私とお前は――」

「無関係です」


 ザシュッ。

 わぁ。今日もいい風の音。そして、猛吹雪。

 

「危ないだろ! 火のそばで物を振り回すな!」

「では一刻も早く遠い場所へお連れしましょう」

「やめろ! 木の棒を投げるな! 髪も襟もないのに、これ以上どうするつもりだ!」


 きぃ! とアッシュさんが怒鳴りながら、ダッシュで離れていく。

 ハストさんは吹雪を出しながら、それを追いかけていった。

 きっと、ローストビーフはあとは待つだけになって、こちらに来てくれたのだろう。

 二人は仲が良いからこうしてじゃれてる。うん。そう。そういうことにしよ。


「イサライ様ー! そうしたら俺が鶏をやっとくっすよ!」

「俺たちも!」


 去っていくハストさんとアッシュさんを見ていると、ガレーズさんとK Biheiブラザーズのみんなが鶏を焼いてくれると言ってくれた。

 なので、それは任せることに。

 そうして、雫ちゃんと一緒にお肉を食べて、みんなの中をぐるぐる回っているうちに、ついにごはんが完成して――


「みなさん、行き渡りましたかー!」

『おー!』


 私の言葉に、みんなから一斉に返事がくる。

 しっかりと焼き上がったローストビーフと焼豚とジャークチキン。

 焼き上がったそれらを、ナイフでカットして、みんなに配れば、ついに実食!

 大きな机の上にはお肉がたくさん並んでいて、椅子に座った私はにんまりと笑った。

 どれもおいしそう。

 その中で、まずはローストビーフをフォークに取った。

 それを口に運べば――


「おいしい!」


 もうそれ以外ない!

 外はしっかり焼き目が付き、中央部はまだうっすらピンク色。

 噛むと柔らかくて、このしっかりとした味の赤身!

 焼豚の漬けダレにワインを入れて、肉汁も入れたソースが最高に合う……!

 そして、私の隣ではハストさんが、ローストビーフを口に入れた。


「……うまい」


 ――いつもの、おいしいのしるし。


「下味のついた牛肉に、この甘味のあるソースが効いていますね。じっくりと火を通したから、肉も固くならず、とてもしっとりしている」

「うん! さっき網で焼いたお肉はもっと脂がいっぱいだったけど、これはさっぱりしてるね!」

「くっ……今日もうまい……。ギャブッシュ、ギャブッシュはどうだ?」

「ンガーァアー!」

「イサライ・シーナ! この肉はすごいな!」

『めっちゃうまいっす!!』

「椎奈さん、すごく、おいしいです」


 ――みんなの、おいしいの言葉。


「……良かったです」


 それがうれしい。

 だから、心に楽しさがあふれて、笑っちゃう。


「焼豚もジャークチキンもおいしいので、どんどん食べてください」


 そう勧めれば、みんな、次のお肉を食べて、また、おいしい! って言ってくれる。

 その言葉通り、焼豚は香ばしい外側とジューシーな内側が最高で、ジャークチキンはスパイシーな辛さがクセになる味だった。

 楽しい時間。

 そこにスラスターさんがやってきて――


「すこし話があります」

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