表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

123/138

真珠の真相1

雫視点です

 椎奈さんたちと別れたあと、私たちは路地裏の真珠店へと来ていた。

 まだ午前の早い時間だったので、空いているか不思議だったのだが、昨夜のうちにスラスターさんが話を通していたようだ。

 対応してくれたのは、昨日の店主の老人だ。


「今日も来ていただいて、ありがたいことで……」

「いえ、早い時間の指定に対応していただきました。さっそくですが、真珠を見せていただいても?」

「はい、もちろん、昨日よりいいものを用意しました。ところで今日は弟君は……?」

「弟は観光をしています。今日は彼女の願いを叶えに来ました」

「そっちの男性は?」

「護衛です」


 スラスターさんはそう言って、それぞれ私とアシュクロードさんを手で示す。

 店主は、なるほどと頷いた。


「で、お嬢さんの願いとはなんだい?」


 この台詞は想定済みだ。

 スラスターさんと話をして、どのように受け答えをするかは決めてきている。

 私がここで行うのは――


「この店で一番いい品をください」

「ほう! 一番の品かい!」


 ――どれだけ利のある人間か示すこと。


「そうかいそうかい、それならこれだね」


 うれしそうな表情をした店主は、カウンターの後ろの棚へと移動した。

 そして、鍵を使い、扉を開ける。

 展示してあるものよりも、厳重に管理されているようだ。


「真珠のネックレスだよ。きれいだろう? サイズの大きいものを集めたのさ」


 品物を手にした店主がカウンターの前へと戻り、ベルベット生地の上へそれを置く。

 それはとても大きな粒の真珠を中心とした、真珠が連なったネックレスだった。


「すごい……」


 日本でも真珠のネックレスはよく見るし、冠婚葬祭などで活躍している。

 でも、目の前にあるそれは日本でみるものより、明らかにサイズが大きい。

 真珠は白色というよりは銀色のようにも見えて、中心が濃くなり、より強く輝いていた。


「値段は……金貨二十だよ」


 輝きに魅入っていると、店主がスラスターさんに値段を伝える。

 お金を払うのがスラスターさんだとわかっているのだろう。


「お嬢ちゃんがこれをつけると、さぞ美しいだろうねぇ!」


 店主が揉み手でスラスターさんに笑いかける。

 スラスターさんは鼻のあたりをさわると、眼鏡をカチャッと直した。


「ええ。きっととてもよく似合うでしょう。これをつけて王都へ戻れば評判になりそうだ」

「……王都から来たのかい?」

「はい。どうです? 彼女がその石を身に着ける。そして王都の上層部と交流を深める。……いい商売になりませんか?」

「ちょっと、……ちょっと待っておくれ。わしにはそういう話は……」

「では、話をできる人に取次を。昨日もお願いをしています」

「あ、ああ……だが……」


 言いよどむ店主。

 スラスターさんはそれを気にすることなく、カウンターの上にドサッと革袋を置いた。


「金貨が二十五枚入っています」

「……二十五枚」


 ごくり、と店主が喉を動かす。


「品物と差し引きした額をどう使おうと私は構いません」

「……っ、わかった、ちょっと待ってくれ」


 店主が慌てたように、カウンターから革袋を取り上げる。

 そして、中身を確認したあと、店の奥へと入っていった。

 品物が出しっぱなしだがいいんだろうか……。

 すると、スラスターさんは真珠のネックレスを手に取り、私に差し出した。


「昨日は触れなかったでしょう? 昨日の言葉が気になります。触れてみてください」

「あ、椎奈さんが言っていたことですね……」


 椎奈さんは真珠を触ると「会いたい」と聞こえたと言っていた。

 顔色も悪くなっていたし、あまりいいものではないのかもしれない。

 なので、そっと触れてみるが――


「……なにも聞こえません」


 ――声は聞こえない。


「……椎奈さんにしか聞こえないみたいですね」


 椎奈さんが嘘をついているとは思えない。

 それならば、椎奈さんにのみ聞こえるということだ。

 真珠と椎奈さんには関係がある……?

 そう考えると、胸がざわざわとした。


「今は澄ましていることを徹底してください。不安を表情に出さないでいただきたい」

「……はい」


 スラスターさんに言われたことはその通りなので、大人しく頷く。

 そう。私には私の役目がある。

 しっかりしなくては……。


「ネックレスをつけます。気分不良などあれば、伝えてください」

「はい」


 スラスターさんはそういうと真珠のネックレスを私の首につけた。

 首の後ろで留め金をつけられ、そのまま手を離される。

 かなりの大きさがあったが、真珠は思ったより重くはなかった。


「とてもよく似合っています。……やはり、あなたの美しさは武器になる」


 スラスターさんがふふっと笑う。

 その笑いは……冷めている。

 言葉の表面では褒めているが、私に対してなにも感じていないのがよくわかった。


「気分不良はないです」


 なので、気分についてだけ伝え、まっすぐと前を見る。

 一瞬だけチラリと見えた、金茶の髪の騎士……アシュクロードさんはなんとも言えない顔をしていた。


「おいっ、オレと話をしたいってのはどいつだ?」


 ほどなくして、ドタドタと足音が聞こえ、奥からヌッと人が出てきた。

 大きな男性だ。スキンヘッドで、目つきは鋭い。

 これまでの私であれば、絶対に近づかない雰囲気を持っていた。

 その人は私を見ると、ヒューっと口笛を吹いた。


「あ? きれいな嬢ちゃんじゃねえか、この辺では見ないぐらい色が白いな。白い魔石が似合ってるじゃねぇか」

「ええ。彼女は美しいでしょう? いい広告塔になります」

「広告塔、だと?」

「はい。私は彼女を使って、王都にこの魔石を売りたいのです」

「なるほど……」


 スラスターさんの言葉に、男性が私を上から下まで舐めるように見る。

 あまり気持ちのいい視線ではなかったが、表情を崩さずに、前を見続けた。


「……いいぜ。気に入った。こっちへこい」

「はい。いい商売をしましょう」


 スラスターさんはそう言うと、鼻を少し抑えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】魔物をペット化する能力が目覚めたので、騎士団でスローライフします

【11/10】カドカワBOOKS様より小説4巻発売
【書き下ろし】事なかれ令嬢のおいしい契約事情【コミカライズ無料配信中】
台所召喚    事なかれ令嬢のおいしい契約事情

B's-LOG COMICS様よりコミック全2巻発売中
台所召喚コミックス2巻
― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ?店員が真珠って言葉使ってる
[一言] 匂いが…キツイのでしょうね。どんなのだろう、気になります!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ