【詩】春雷
115.4.17 15連目に句点追加。
眠たげに
電線が
電信柱を
渡って行く。
何もない
真っ直ぐな道。
欠伸しながら
たくさんの電線が
鉄塔を
渡って行く。
春の空の下、
山を越えて。
電線は
家々を
川を
野を
渡って行く。
海を
眺めながら。
こんなにも
すっかりと
萌えている
全てを、
彼らは
羨ましがる
だろうか。
それとも
何も
感じないの
だろうか。
どちらでも、
鉄と
コンクリートの
一群は、
じっと
電気の音を
聴いている。
声は、
饒舌に
続いて続いて続いて……
電気は
嘘を隠している。
もしも
ぷっつり
声が途切れたら――
電気は
蒼ざめてしまう。
夜の本当と
暗やみの真実が
晒されてしまうから。
鉄塔と
電信柱と
電線たちは、
もう夢に
落ちてしまって、
ふらりふらりと
舟を漕ぐ。
春は、
思いがけない
柔らかい
懐かしさに、
全身を震わせて、
漆黒の闇の中、
若草茂る山の上や、
きらっと光る川の上や、
花々の華やかな野の上や、
はしゃぎすぎて眠っている街の上や、
ゆったりとうねっている海の上に、
紫色の
春雷を、
幾筋も
同時に
閃かすだろう。