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今日から学校と仕事、始まります。①莞

剃刀、2170円

作者: 孤独

剃刀、2170円


「なんか高くないか?」

「なにがよ?」

「剃刀。シェービングクリームも付けたら3000円は超える。そのくせ、刃も取り替えなきゃいけない」



ふね 虎太郎とらたろうと、相場あいば 竜彦たつひこは握っている剃刀について、トイレの洗面台の鏡に面を合わせながら話し合っていた。

高校生ともなれば不肖な髭も現れるもの。身嗜みを考えていると、財布が危なくなってきた。


「髭なんて生えるなよ!全ての髭は消えろ!」

「舟、サンタクロースを前にして言えるのか?」

「すまん。子供の夢は消せないな。剃ったら変人じゃねぇか」


サンタにでも頼みたいものだ。

ゲームや漫画なんかよりも実用性が高い剃刀を欲するとは大人になった証。


「バイト代のほとんどが身嗜みで消し飛ぶ。社会人はこーなるのかな?」

「どうだろうな。禿げたら散髪代は減りそうだが……」

「相場。お前はハゲを舐めてる。全国のハゲに謝ってこい」



昼にもなると植物が日光を浴びたみたいに髭も伸びてくる。どうして髭なのか?どうせならイカス長髪になってほしいものだ。いちいち生えてくるものを刈り取らないといけないのは人間としておかしな成長だろう。


「あー、たるい。生えてくんじゃねぇよ」

「女や、身嗜みを見る奴はよく言うな。こー言った細かいところにも目が行くと」

「顔面に髭が生えるもんな。嫌でも見えるからな。細かくはない」

「身嗜みに気を遣える奴は金持ちの可能性があるしな」

「剃刀買って嫌でも感じたよ。毎日使うとはいえ、高すぎだぜ」



流行の服、お化粧、香水。確かにそれらは可愛いやカッコイイを生み出すが。最終的にそれをやっているのは技術力と、金銭力がものを言う。

イケメンが良いという理想の裏にはそういった影も見える。


「その理論だと金持ちはイケメンだよな?」

「違うな。金をいっぱい使ってくれる奴だ。金持ちは色々いる。貯める奴と、使いまくる奴」

「女はどっちを見る?」

「将来を見据えた女は前者を、財布代わりにしたい女は後者を選ぶ」

「なるほどなー。結局、男は財布じゃんかよ」



バシャアァッ


顔をちゃんと洗って細かい髭も落とした二人。



「しかしさ。俺って、髭を剃ってもイケメンじゃないな。サッパリしたがよ」

「俺もだ。例えるなら石ころを洗って磨いた程度。俺達は石ころなのさ」

「……え?俺も?」



剃刀を閉まってトイレを後にした二人。5時間目の授業がそろそろ始まる。

リフレッシュしたこの面で授業と部活を乗り切る。眠りたくなる英語も堪えながら、ノートに落書き漫画を手掛けたり。クラス内を盛り立ててお喋り空間を作り出した。



「勉強をしろ!テメェ等!」



先生に怒鳴られながらも生徒を誰一人寝させないことをした。授業の進行を少し妨害し、期末テストの範囲を狭めた。

英語の次は数学。最初から諦めてるから舟と相場は眠った……。

最後のホームルーム。


「誰か気付いた奴はいたのかな?」

「なにを」

「俺達の髭が剃られてたことに気付いた奴」



身嗜みは色々ある。それぞれの個性、感度、好み。それらがバラバラだからこそ、発想が生まれていく。


「いないだろ。気にもしないさ。毎日、剃ってその面なんだぜ」

「3000円以上も掛かってこれか。女って誰も見てくれないな」


舟と相場は少し残念そうに思いながら部活に向かっていく。男の身嗜み。それはやはりとても大切なものであり、カッコつけるためにあるんじゃなく。男らしく決めるためにある。勘違いしちゃいけない。髭はキチンと毎日剃ろう。

2人が部活に行った後、舟の机からこぼれ落ちたレシートを拾った女子生徒がいた。



「薬局のレシートだ」


川中さんは気になって広げると、そこにあったのは男性用化粧品の値段とその数。川中はそれを見てなんとも言えない表情を作っていた。それを見かねた友達、


「何を拾ったのよ、川中」

「御子柴さん」

「薬局のレシート?この机からだと舟のかしら……」



川中からレシートを取り上げて拝見させてもらう。

その中身があまりにも……



「安っ!!男のお洒落って安っ!男と証明するくらいのお洒落しかできないわけよ!」

「そ、そこまで言っちゃダメだよ。私も……数と値段を見て思ったけどね!」



女の身嗜みの方がはるか上を行き、金が足りないばかりだった……。



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