六度目の正直"正凪の能力"
「どお?正凪!うち可愛い!?」
天狐が私に近づいてにかっと笑った。
私が動揺していると鹿野先輩が天狐の腕を引っ張った。
天狐が頬を膨らませながら狐に戻った。
「あの…」
「何かと大変かと思うけどこれからよろしくね」
そう言って鹿野先輩が手を差し出した。
私は躊躇しながらも手を握り返した。
その後みんなで部室に用意された料理を食べながら話を続けた。
「誠は接触感応能力が使えるんだぜ!」
「接触感応能力!?何、それ!」
「これはな…」
「ベラベラと喋るな」
私たちはその二人のやりとりに笑いながらパーティは進んで行った。
終わりに近づいた時、いきなり仙狐が暴れ出した。
「えっ!?どうしたの!?」
私が慌てて聞くと如月くんが仙狐を抑えながら答えた。
「お酒入りのチョコを食べたんだ!」
「チョコ!?チョコって食べていいの!?」
叫んでいると突然仙狐の口から火が飛び出した。
その火が竜也先輩の服に移った。
「うわぁ!熱っ、熱っ」
「火!?」
私が驚いていると魅夜火が急いで答えた。
「妖狐は鬼火が使えるんだ!」
「はぁ!?」
私たちは仙狐を抑えようとするが鬼火が飛んでくるのでうまく抑えられなかった。
その時、空狐に向かって今までで一番大きな鬼火が飛んで行った。
「空狐!」
多岐が空狐を助けに行った。
多岐と空狐に向かって鬼火が飛んで行った。
目をつぶった時、私のカバンの中が光だした。
「えっ!?」
中から見たことない狐が飛び出してきた。
「正凪!空狐たちに向かって指を突き出すのよ!」
「えっ!?」
「早く!力を指先に込めて!」
私はいきなりで戸惑ったが言われた通りにやった。
すると、私の指先から水が飛び出した。
〈ビュビュビュー〉
鬼火はすっかり消え、仙狐も気を失っていた。
「多岐くん!」
「多岐!」
私と如月くんが近寄ると多岐くんはじとーっとした目で睨んできた。
見ると多岐くんも空狐もびしょ濡れだった。
空狐が毛についた雫をブルブルと飛ばしたため、私と如月くんもびしょ濡れになった。
「うわぁ…」
「空狐〜」
その時多岐くんがニヤリと笑ったのはスルーしておこう。
「そういえば!」
私はそう言ってカバンの中を見た。
そこには一匹の狐がスヤスヤと寝ていた。
「生まれたんだな」
鹿野先輩が後ろから覗き込みにっこり笑った。
「はい!」
私は静かにカバンを閉め振り返った。
「これから、よろしくお願いします」
「さて、どうするか?」
部室の片付けは終わったものの、私と如月くん、多岐くんの「一年生トリオ(竜也先輩命名)」は全身びしょ濡れだった。濡れているのは気持ちが悪かった。今は11月。完全に冷えてしまい私たちはブルブル震えていた。
「クチュン!」
私は多岐くんの可愛いくしゃみに笑いを堪えていた。
「笑うな」
「笑ってないよ…プッ…」
私と多岐くんがこんなやりとりをしていると竜也先輩がニヤニヤしながら飛んだことを言った。
「あちらの二人はおあついですよ〜」
「なっ!」
私が言い返そうとすると如月くんがいきなり後ろから抱きついて私を多岐くんから遠ざけた。
「きゃあ!?」
「多岐くん!抜け駆けはダメ!」
「抜け駆けなんてしていない」
私は暴れて逃げようとするが男子の力には敵わなかった。
「青春だね〜」
「見てないで助けてくださいよ〜…」
先輩たちや妖狐たちが私たちを見てニヤニヤと笑っていた。
でも、女が嫌いだという若武先輩だけは笑っていなかった。