十六度目の正直"事件発生"
魔物を倒してひと段落。ふとあることを思い出した。
「あのー……もう五限目始まってますよね……?どうするんですか?」
そう、学校を出たのは昼休みの13:05。だが、今はもう13:35。13:25から五限目が始まるのだ。私は成績が良い方ではない。いやむしろやばい方だ。授業に出てもヤバイのに出なかったらどうしよう……そう思っていると、如月くんが笑いながら
「大丈夫。出なかった分は放課後受けるから。」
さらっと言ってくれますね。でも、魔物が出ない限りは部活がないから、放課後の部活時間中に授業が出来るんだろう。授業をサボれるのは嬉しいけど、放課後みんなが部活中にやるのは集中力が続く自信がない。でも、若武先輩や向井先輩らは今までずっとそうして来たのかと思うと、凄いんだなと尊敬した。
「……であるからして……」
そして放課後。私たちは受けてない授業を受けている。両隣にいる如月くんと多岐くんは真面目に取り組んでいるが、当の私は集中力切れ。窓の外の空を眺めて時間を潰している次第です。
「何見てんだよ……」
多岐くんがこっちを見て、不愉快そうに眉を寄せた。さっきから、優しくしてくれたり冷たくしたり……私のことを好きなのか嫌いなのかわかんないよ。
「別に。空を見てただけだよ。」
私はニコッとして黒板に向かい直した。こういうタイプはニコニコしてる人が苦手なんだ。漫画やドラマの知識だけど……
その日の放課後は授業を受け終わった後、如月くんに誘われてクレープを食べに来ている。まあ、二人っきりじゃ誤解されるから多岐くんも一緒にだけどね。初めは嫌そうだったのに、クレープを目の前にしたとたん分かりやすいぐらいにテンションが上がっていた。
「そういえば甘党なんだっけ? 」
「悪いかよ。あ、おじちゃんチョコバナナクレープとイチゴクレープ一個ずつ。」
「え、奢ってくれるの!? 」
「んなわけあるか、自分で買え。」
「はいまいど!」っとおじちゃんは手際よく作ってくれる。こんな会話をしている間に如月くんはジュースを買ってきてくれた。クレープを受け取ると、近くの空いている席に座った。ちなみに、私が抹茶イチゴクレープで如月くんがチョコバナナクレープだ。ここのクレープは結構な量の生クリームが入っている。多岐くん二つも食べるなんて……甘党凄いな。
「んで? 」
一つ目のクレープを食べ終えた多岐くんが如月くんに視線を移した。
「俺らを誘ったのはクレープ食べるだけじゃねーだろ?」
「え、そうなの? 」
私は如月くんの方を見た。するといつもの明るい如月くんの顔とは程遠い悲しそうな顔をしていた。
「愛理沙が……愛理沙がいなくなったんだ! 」