十五度目の正直"仲間"
「ファイヤーフィッシュ」
如月くんがそう言った瞬間、炎の何かが巨大な犬に向かって飛んできた。あれは……魚!?炎を帯びた小さな魚が巨大な犬に突き刺さった。その途端、犬に炎が燃え移り犬がもがき始めた。犬は熱さに耐えきれなくなりどんどん光になっていっていた。が、私は未だ宙で捕まったまま。もしかして……?
予想通り私は犬が消えたと同時に下に落ちていった。悲鳴さえもあげられない恐怖。私はぎゅっと目を瞑った。ああ、私死んじゃうのかな……そう思いながら落ちていくがいつになっても地面に当たる感覚がしなかった。そっと目を開けると、目の前に多岐くんの顔があった。横を見ると遠くに学校の屋上が見えた。
「へ?え?多岐くん……?」
「なんだ。」
私が名前を呼ぶと返事をする多岐くん。でも、待って。今宙にいるよね!?
私が驚いている間に多岐くんは私を抱いたまま、如月くんのいる地面まで降りていった。降りるときも振動はなかった。多岐くんは地面に着くとすぐに私を離した。私はぼーっと多岐くんを見ていると、近くに来ていた先輩たちの中にいた竜也先輩が説明してくれた。
「多岐くんは、飛躍アップしたんだよ。多岐くんの能力は能力アップでもあるっていったでしょ?」
「確かに……ありがとう多岐くん!」
竜也先輩の言うとおりだ。能力アップって凄いなと少し感心した後、多岐くんに礼を言った。が、多岐くんは厳しい顔で如月くんを見たままだった。如月くんも下を向いたまま。私がはてなと首を傾げて見ていると、突然多岐くんが如月くんに重い暗い声で話しかけた。
「何やってんだよ。考えればわかることだろ。仲間の安全第一じゃねえのか。」
そう言いながら多岐くんは如月くんを見ていたが、如月くんは黙ったままだった。多岐くんはもっと力強く大きな声で
「野々原が怪我したらどうしてたんだ!冷静さを失うなって言ってるだろ!」
多岐くんは如月くんの肩を掴んで揺らした。指が食い込んでいて、私の肩を掴んだときと同じぐらいの力、いやもっと力強く掴んでいたと思う。きっと如月くんは人思いの人だからいつもしてしまうんだと思う。いつも誰かが傷つけられたら、冷静さを失ってしまうんだと思う。
如月くんは黙ったまま少しずつ顔をあげた。その目の力強さからは後悔や悔しさ、いろんなものが混じっていた。
「わかってるよ……わかってるよ!冷静さを保たなきゃいけないことはわかってるよ!だけど、だけど……」
如月くんは唇を噛み締めていた。乾いた音がしたあと、多岐くんが如月くんの頬を叩いたことに気がついた。多岐くんも如月くんもそれでも表情を変えなかった。
「これで目、覚めたかよ。次は無いからな。」
「ああ。」
そう言った二人の顔はもういつものような顔に戻っていた。
最後のところいつも以上に上手く書けませんでした(ー ー;)すいません。