十四度目の正直"部活"
「ごめん、遅くなっちゃった。」
あの後香穂ちゃんと少し話していたら、如月くんを待たせていることを思い出し、香穂ちゃんに言って別れてきたのだ。私が駆け足で教室に戻ると、如月くんと多岐くんが真剣な顔して頷きあっていた。私は何しているんだろうと二人を見ていると、如月くんが私に気づいてパッと手を取った。
「部活だよ!」
「は?」
多岐くんに説明を頼んでも、行けばわかると言われて。私は何が何だかわからないまま、如月くんに手を引かれて部室まで行った。行っている途中、道行く生徒の視線が気になって如月くんに離すよう頼んだが、何も聞いてくれなかった。
「正凪ちゃんも連れてきました!」
部室に行くともう他の部員たちは集まっていた。けれど何だろう?部活って放課後するものじゃないか?ミラクル部って人を助けるって聞いたけど……そう疑問で頭がいっぱいになっていると、鹿野先輩が少し真剣な顔つきで如月くんに頷いた。私はどういうことか鹿野先輩に聞くと、少し緊張がほぐれた顔で説明してくれた。
「野狐がでたんだよ。」
「野狐?」
聞くと、天狐たち妖狐の中で不幸をもたらす妖狐がいるらしい。それが野狐。野狐は人間に取り付いては不幸をもたらすと言われてきたが、私たちが妖狐と触れ合うようになってからは、魔物を操って世界征服を企み出したということだ。魔物は私たちの世にある植物や動物、人間の形をしているけどそれらは全て野狐が作り出したもの。それを私たちは止めないといけないらしい。
妖狐を憑いた私たちは自然と発生したことがわかり、鹿野先輩ぐらいになると発生した場所もわかるらしいが、私には全く分からなかった。これからわかると竜也先輩は言ってくれた。
「野々宮さん。妖狐生まれたよね?もう外に出られるんじゃない?何の妖狐か知りたいし。」
鹿野先輩に言われて私は教室へ帰ろうとすると、如月くんが強く思えば来ると教えてくれた。私は目を瞑りギュッと両手を合わせた。すると前に何か現れた気がし恐る恐る目を開けると、目の前に鞄の中で眠っていた妖狐が、まじまじと私の顔を見ていた。
「私の……主人?」
「えっと……正凪です。」
私がかしこまって挨拶をすると、私の妖狐はほわっと笑って私の手を小さな手で握ってきた。
「私……白狐。よろしく、正凪。」
そう言って微笑む白狐を見て私もつられて笑顔になってしまった。緩い感じの妖狐だなっと思って周りを見ると、驚いた顔をしていた。私は首を傾げながら問うと、龍哉先輩が掴めない笑顔で答えてくれた。
「白狐は善狐の中で代表とされる妖狐なんだよ。しかも九本の尻尾なんて本当に珍しいんだ。白狐が一番妖力があるって言われてるよ。」
「そうか。だから昨日の野々宮さんの能力から、感じたことのない妖力を感じたのか。」
そう言って竜也先輩はうんうんと頷いた。それを聞いて私は自分を指先を見つめた。私が一番妖力がある……そう思うと嬉しくなった。皆を助けることができるのだと。ふっと笑って私は白狐に向き合った。
「こちらこそ、よろしくね白狐。」
「うん。」
大人しそうな妖狐だが、仲良くなれるような気がした。
さて、と鹿野先輩が一回手を叩いた。そうだった。野狐を倒しに行かなくては。だが、どうやって学校を抜け出すのか。聞くと、鹿野先輩の権力で大丈夫なんだそうだ。鹿野先輩は理事長の息子で、ミラクル部の実態を知っている数少ない人の一人で協力的だそうだ。私は理事長の息子って凄いなと感心しながら、皆について学校を出た。他の生徒にバレないように作られたという、地面の下に作られた外への通路を使った。何から何まで凄いと私は感心してばかりだった。
外に出ると皆が走り出した。私も負けずと走り出すが、速度が違うため置いていかれてしまう。持ち前の持久力で速さは維持できているものの、目の前の皆がどんどん離れていった。それを見かねた鹿野先輩が多岐くんに何かを命じた。多岐くんが少し速度を落として私の横に並ぶと、私の足に向けて手をかざした。すると、
「え!?凄い!」
みるみるうちに皆に追い付いて、皆と同じ速度で走れていた。私が興奮しながら後ろの多岐くんを見ると、少し呆れた顔で私たちに追い付いた。
「仙狐での能力は異常回復&効果と能力アップ。つまり、補助役なんだ。多岐くんがいないと僕たち死んじゃうんだよ。」
如月くんが嬉しそうに説明してくれた。多岐くんがそっぽをプイッと向いたが私には頰が染まっているのが見えた。多岐くんも嬉しそうだった。
着くと、そこには巨大な向日葵が建物を壊していた。ここまでするんだと私はぼーっと見ていた。鹿野先輩の話によると、かなり格下の野狐の仕業なため私は戦わなくていいそうだ。私は私を守るためにいてくれた如月くんと一緒に見ていた。皆で協力して戦っていたが、圧倒的にこっちが押していた。私は凄いなっと見とれていた。そのとき。
「へ……?」
気づいたときにはもう地面はなく何かに掴まれて、体が宙に浮いていた。私は思考が追いつかずしどろもどろしていると、下から如月くんが叫んだ。
「正凪ちゃん!今助ける!」
どうやらもう一体いたらしく、巨大な犬が私を掴んでいた。私はハハハと乾いた笑いで自分を騙して落ち着かせながら、周りを見た。先輩たちは向日葵の方を片付けたらしくこっちをびっくりしたように見ていた。多岐くんは急いでこっちに向かっており、如月くんは見たことないぐらい真剣な顔で両手をこちらに向けていた。
「ファイヤーフィッシュ」