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二度ある事は三度あってたまるかー!  作者: 音無歌音
出会い編
14/17

十三度目の正直"友達"

「お、おはよー。」



あの多岐くんの話を聞いた次の日。多岐くんの話が聞けて嬉しかったのだが、そういえば、私友達まだ作ってないじゃん!ということに気がついたのだ。転校してきてあまり経っていないとはいえ、もう正輝は友達と放課後遊んだりしていた。だけど、私はあの後一人で帰宅。多岐くんは私と反対方向みたいで、一緒に帰ることはできなかった。


返事がないまましょんぼりして席に行くと、多岐くんが小さく「はよ……」と挨拶してくれた。昨日より仲良くなれた気がして嬉しかった。私は笑顔で挨拶を返すと、カバンを横にかけて席に着いた。すると、ドアが勢いよく開き、いつも通りの元気で如月くんが挨拶しながら入ってきた。如月くんの元にはすぐに女子が集まったが、如月くんは笑顔で返しながら、ふとこちらに気がついたようでかけてきた。



「おっはよー!正凪ちゃん!っと多岐くん!」

「お、おはよー。」

「俺はついでかよ。」



そんな多岐くんの返しにも如月くんは、「そんなことないよ〜。」と笑顔で対応していた。なんだ。昨日の多岐くんの言う通り、二人は大丈夫なんだ。そう落ち着いたと共に、私はまた昨日と同じようにモヤっとした。なんだろ?私は胸に右手を当てて首を傾げた。



「ん?野々原、調子悪いのか?」

「へ?ああ、なんでもないよ!」



私は笑顔で誤魔化した。いや、誤魔化した訳ではなく本当になんでもないのだが、多岐くんには誤魔化したように聞こえたかもしれない。


























「よし!」



私は弁当片手にある決意をしていた。友達を作る!

私はまず近くにいる女子グループに声をかけた。そこのグループはオシャレグループっぽい感じだった。私が一人に声をかけると、そこの子たちはシーンっと黙った。あれ?っと思いながら、「一緒にお弁当食べていいかな?」と尋ねると、女子たちは不機嫌な嫌な笑みを浮かべながら私を見た。



「はあ?何言ってんの。転校早々、うちらの王子様たちに媚び売って王子様たちの部活に入ったお前を?」



そう言って彼女は他の女子たちに「そうだよね?」っと周りに同意を求めた。もちろん、周りの女子たちも「そうよ!」と同意した。そうか。もう私はこのクラスから浮いているのか。


私はしょんぼりしながら自分の席に戻った。だが、すぐに頬を叩いた。うん、友達は諦めよう。元々私は諦めが早い方でしっかり割り切れる。正輝にはもう少し粘ってみるとかしないの?といろんなことで言われる。諦めが早いっていいことであり悪いことだ。それに比べて正輝は諦めず、粘り強い。諦めず粘り強い正輝からはいつも怒られてたっけ?私は席に着いたまま、さてどうしようか?正輝は友達いたから迷惑になるし……そう考えていると、突然バッと如月くんの顔が目の前にあった。



「う、うわぁあ!?」

「そんなにびっくりしないでよ〜。さ、一緒にお昼食べよ!」



如月くんは「よいしょっ。」と自分の机を私の机の前に移動させてきた。そして席に座ると、ニコッと笑っていた。う、うわぁ……女子の視線が……女子の視線が気になったが、まあいいや。どうせ女子の友達作りはもう無理だし。



「多岐くん、売店行くの?一緒に食べない?」



私は立ち上がった多岐くんに声をかけた。如月くんと二人で食べるより、多岐くんもいた方が食べやすい。二人きりで食べてクラスメイトに誤解されたくないし。これはこれで何か言われそうだが。如月くんは「えー。二人で食べたい!」と言っていたが無視をして笑顔で待っていると、多岐くんはじっと私を見た後に頷いた。



「分かった。売店行ってくる。」

「うん、待ってる。」



そう言って多岐くんは小走りで売店の方に言った。如月くんは少し不満気だったが「多岐くんならいいっか。」と言って、多岐くんの椅子をこちらに移動させていた。



「あ、ごめん。ちょっとトイレ行ってくる。」

「え?あ、うん。行ってらっしゃい。」



いきなり無性にトイレが行きたくなり、如月くんを一人にさせてしまうのにすこし気がかりだったが、どうしようもないため多岐くんが帰ってくる前にと急いでトイレに向かった。


トイレで手を洗っていると、鏡に私の後ろに女子がいるのが映っていた。



「うわぁあ!?」



今日二回目の驚きの声をあげ、後ろを向くとそこには一人の女子がいた。黒髪ロングで垂れ目の女子だった。この子は確か、学級委員長の……ほっと息をつきながら、如月くんか多岐くんの追っかけだろうかと様子を伺っていると、突然手を掴まれた。



「へ!?あ、手濡れてる……」

「友達になってください!」



私が言いかけているのに被さる形で言われた。え、私と友達に……?喜んだのも束の間、私は表情を暗くした。多分如月くんか多岐くんの追っかけで、近寄るために私を利用するのだろう。漫画やドラマでよくあるシチュエーションに私は「あの……」と低い声で言おうとすると、その子はニコッと笑った。



「私、腐女子なんです。」



いきなりのカミングアウトに私は驚きを隠せなかった。ふ、ふじょし?私があわあわとしていると、その子は続けて言った。



「如月くんと多岐くんの絡みが大好きで……このこと誰にも言えず……でも野々原さんに言って、近くで見ていたいなー……と。やっぱりこんな理由じゃ嫌……ですよね?」



私は首を振った。そんな理由でも友達ができるのは嬉しかった。一緒にいれば心からの友達になるかもしれない。腐女子だからという偏見も正凪は持っていなかった。私は顔を上げた。



「これから仲良くなろう!野々原正凪!正凪って呼んでいいよ。」

「ありがとうございます!私、有村香穂って言います。あ、敬語なのは癖なのでお気になさらず。」



有村香穂、学級委員長で成績優秀。クラスの人気者だ。こんな子が私と友達になってくれるのが嬉しかった。私は笑顔で礼を言った。窓から見える空は雲一つ無い青空だった。

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