表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二度ある事は三度あってたまるかー!  作者: 音無歌音
出会い編
13/17

十二度目の正直"多岐の過去"

更新遅くなりすいません!続きです!

「俺さ、兄がいたんだ。」



いた?いたってことは……私は黙って多岐くんの話を聞くことにした。屋上から見える空は、どんよりと曇っていた。

































「広大!」


そうやってニカっと笑う兄の顔が、俺多岐広大は大好きだった。



12歳の頃、兄は中学2年生だった。俺はピカピカの制服を着た後、家の中でそわそわしていた。もうすぐ中学生!俺がスキップしながらリビングを歩いていると、兄が入ってきた。



「おお、広大。なんだ!制服じゃねえか!様になってるな!」

「だろだろ!?これで俺も兄ちゃんみたいに大人っぽくなっただろ?」



俺は兄と同じように中学生になれるのがとても嬉しかった。憧れの兄と同じ学校に通って、部活して……俺はもうすぐの中学校生活に夢を膨らませていた。



「じゃあ、俺部活行ってくる!じゃあな!」

「行ってらっしゃい!」



俺はいつも通り兄を見送った。この時の俺は今の俺と同じ人間とは思えないほど、元気だった。如月みたいなキャラだったんだ。そして、その日の夜……



「兄ちゃん、遅いなー……」



雨がポツポツと降り始めていた。俺はリビングでゲームをしながら兄を待った。いつも帰る時間より二時間以上経っていた。部活が長くなる時があったり、自主練してくる時があるが、ここまで遅くなったことはなかった。俺がそう呟いた後だった。



〈プルルルル〉



電話が鳴った。「はいはーい。」と母が出ると、一時して母の顔が青冷めていった。何事かと母の方を見ていると、母は受話器を置いて俺の方を見た。



「龍大が……龍大が……!」



龍大とは兄の名だった。母はそのままその場に崩れ落ちた。俺は急いで母の元に駆け寄り肩を支えた。



「び、病院に……」



俺の顔を見た母の顔は、涙でぐしゃぐしゃになっていた。俺はコクリと深く頷き、病院に駆け出した。



(兄ちゃん……!兄ちゃん……!)



俺は心の中で、大事に至っていないよう祈りながら走った。ざあざあと激しくなった雨なんて気にせずに。

































「病院に行ったら兄は……医者が言ってたんだけど、携帯電話を離さなかったんだって。新品の携帯電話を。親が言ってたんだけど、中学になる俺のためにお金を貯めて貯めて、その日に買ったらしい。兄は酔っ払った男が乗った車に轢かれたんだって。」



私はその話を聞いて知らずのうちに涙を流していた。頬を流れる涙をそのままに多岐くんを見ていると、多岐くんは少し慌てたように私の涙を拭いてくれた。



「そっか。じゃあ、その携帯は大切な物だったんだね。」

「ああ。だから、事情を知らないから仕方ないけど……腹が立った。弁償してもらっても、もうそれは兄から貰った物じゃないから。」



多岐くんは少し寂しそうに俯いた。だが、すぐにパッと顔を上げていつもの顔になっていた。曇っていた空にはもう雲は無くなっていた。



「ありがと……な。話、聞いてくれて……」



照れ屋さんなのかな?最後の方はもごもごとしていた。頬を少し染めながら、でも多岐くんらしく礼を述べた。私もにっこり笑った。



「うん。こちらこそ、言ってくれてありがとう。よし!如月くんに会いに行こう!このままじゃ喧嘩したままだし!」



私がそういうと、多岐くんは首を振った。私は戸惑いながら多岐くんを見ると、清々しい笑顔だった。



「俺たちは言わなくても分かってるんだ。怒ったことには理由があるって。友達って、そういうもんだろ?」



そう言った多岐くんの瞳は輝いていた。ああ。多岐くんと如月くんの関係っていいな。私は多岐くんを見ながら、少しモヤっとした。でも、私にはその正体がわからなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ