8話 というわけで森の中
町を出てフルネイス王国からチェロード国へと向かう道の途中の森の中いつもの様に朝と夜の交代の間の休憩をして朝食の準備をしているとナジャが全員に向けて声を掛けていた
「今日は話があります、朝食の時に聞いてください」
ナジャが珍しい事を言ってきたので俺は
「わかった、なんかわからんが朝食の準備をさっさと終わらそうか」
俺がそこまで言うとリリーが小声で「ラヴォー様もついでに言っちゃおうよ」と言って来た何となくいつもより軽いノリだったのでなんか芝居掛かっていたが
ついでというのが決め手になっていて俺も言う事にした
「じゃあ俺もナジャのあとに告白があるから聞いて欲しい」
俺も覚悟を決めた、皆の狩りで魔力が増えてるんだからな皆に言うのが筋だろ
そんなこんなで朝食の準備が終わり皆で集まって食べ始めたところでナジャが話しだした
「私は皆に言わなきゃいけないことがあるんだ、普通の冒険者って言ってたけど普通じゃないんだ」
皆、ナジャの言葉に大してそもそも普通の冒険者ってなんだって顔をしているんだが、ナジャは気にしていないようだ
「私にはみんなにはない能力があってその能力のせいで仲間に裏切られて、今こうして奴隷をしている、私は依頼失敗の金が払えなくて売られた事になっていたが本当は依頼失敗もしてないし売る必要もないのに売られたんだ普通じゃない私と組みたくないから、売られたあと奴隷商が教えてくれたよ、
でも奴隷商も商売だから売ったあとに知らせたんだ仲間が売ったって、しかもそれを冒険者ギルドに告発して金をもらったりもしたそうだ、でも私が売られた事実は変わることなくそのままだ、チームの人間を勝手に売り買いするのは犯罪だけど、売られた人間は買い戻されない限り売られたままなんて現実があるんだ」
ここまで聞いて俺はびっくりして居た、仲間と思っていた奴が嘘をついて自分を売ったと知らされたら俺ならここまで強く生きていけるのだろうか、自分の特異な能力に怯えて普通と言ってしまうんだろうかこの世界が怖くなった
「なんで足を怪我してたんだ?」
「ちょっと恥ずかしいんだけどその、そのね、能力を使う動きをした時に間違えて発動しちゃった時に足を牢屋にぶつけたんだ」
売られた時に何かあったとかでは無かったならいいか、と思いながら少し呆れていた
「で、一体どんな能力なんだ?」
結局のどんな能力かわからないので聞いてみた
「相手の動きを記憶して、その動きを再現すると同じことが出来る能力?、例えば手に何も持ってないけど、この動きをすれば、あら不思議、急に石が手に出てきて、投げれます、こんな感じ?」
例えばとか言ってたが実際に動いて石が出てきて投げていた、皆びっくりしていた
「すごいな、それは石を出す能力なのか?」
「違うよ、動きを再現するとその時の状況と同じになる能力なのかなよくわからないけど、あの構えから石を投げるのを記憶してそのとおりになると発動できるんだ、こんな感じに」
今度は弓を持って引っ張る動きをしたら弓と矢が出てきてそのまま放った、なんだろう、過去にあった事象を記憶して再現する能力ってことかな
「凄いな、じゃあその場に武器が無くても再現さえ出来れば、武器を持った状態で攻撃できるって事だな」
「簡単に言えばそうね、気味悪くないの?」
「悪くないなむしろ面白い、その能力、特異過ぎて使いこなせてないだろ?」
「あまり使ってない、というか使えないし魔物の動きとか真似られないし」
「俺が思うに体全体をコピーするからだ、筋力に関係なく動きを再現すればその速さで投げられるんなら、オイ、ランドこの間のガーズリー倒した時の突きをやってみてくれ、ナジャはランドの右腕の動きだけを覚えろ、ランド頼む」
「わかった」
俺のムチャ振りにもランドは応えてくれて突きを繰り出す
「動きは覚えたか?」
ナジャは頷き、腕だけランドの構えをしてみるすると、体制は全然突きを出せるとは思えないのに剣がいきなり出現して凄い突きを放った
「やっぱりな、お前のは覚えた動きを出してる時反動がないんだだから実際持って居ない状態から持っていた時の物が出てきて、動きを再現しても体には繰り出した影響が無い、ナジャの仲間が怖くなったのも無理がないかもな、単純に言って常識外の動きが出来るんだよ、でも俺には面白いとしか見えないけど」
ナジャが暗くなってきたので、フォローしようと思ったが遅かったようだ
「ナジャ、今のが出来るなら魔物の動きも真似出来るぞ一部だけコピーすれば例えばガーズリーの攻撃をコピーしたらお前の手がガーズリーの手になって襲うんだろうな、例えば魔物の体全体の動きを真似したら体は魔物になるんだろう、それが本能でわかっているから出来ないと思い込んだんだろうと俺は判断するよ」
ナジャは自分の能力を分析したことがないのでビックリした表情で固まっていた
「皆はどう思う?ナジャはこれだけすごいんだ、魔物狩りが楽になると思うがなにか問題があるか」
全員が問題無いというかと思ったらランドが反論してきた
「問題大アリだろ、ガーズリーの攻撃なんて見てたら誰か一人は死ぬぞ、強い魔物と同じ攻撃が出来ればすごいけどそれを一回見るなんてのは勘弁してほしい、だから俺らの動きの真似だけで我慢してくれ」
ランドの言うことは尤もだった、ガーズリーの攻撃を受けられる仲間がここには居なかった、あんなもん受けたら死ぬだろうね
「わかった魔物の動きは保留だ、だけど、ナジャのこれからは問題なくなったわけだ、俺らと居るときはその能力気にしなくていいぞ、それと俺からの話だが俺も能力というか特異体質のようでな、ランドとリリーは目の前で見たから知ってるんだが」
どう言おうか考えて一旦言葉を切ってから話し始めた
「俺には、魔物の魔力を吸収出来るみたいなんだ、ついこの間まで魔力が全然なかったんだ、でもランド達がガービットを倒すと俺の体に魔力が流れてきた、リリーには魔力が見える魔法が出来るから気づいて俺自身も体が軽くなる感じからなんとなく気づいていたんだが、実際に魔道具を使って確かめたりしていたんだ、
結論から言うと一匹の魔物から吸収する魔力は微々たるものだったけどこれまでの道程で倒した魔物から吸収した魔力は、一般人以上にはなっている、このまま皆で魔物を狩っていくと一年後にはリリー並の魔力にはなりそうだし、何年も狩りをすれば俺はそれだけ魔力が高くなって行くと思う、今の段階では大したことないけど、長い目で見るとナジャよりも変な能力だと思う」
皆色々考えてるみたいだ、確かに全部俺の奴隷で構成して、今やってる巨人との戦争とかに繰り出したら一日で数千という魔物を狩り化物に一日で成れるそんな能力だ、俺が勇者として戦場に行ってたら、俺の部下が狩った魔物の魔力がきっと俺に流れていたんだろうな、そう考えた瞬間俺の体が震えた、勇者として戦場に行こうとしなくてよかった、
「まあそんなわけで、俺は皆が魔物を狩る度に強くなるんだ、魔力だけじゃなく体も前より丈夫になった、まあ普通に生活している一般人程度だ、俺は剣も触れないくらい貧弱だったから、たった一ヶ月そこらでこの筋肉は馬車で休んでるだけの俺からすれば異常な成長だと思う」
俺はナジャに、
「ナジャはその能力を鍛えていって面白い物をもっと見せてくれよ」
「見世物じゃない」
と反論してたが嬉しそうだ
「長い朝食になったけど、そろそろ出発しようか」
ランドが話しが終わったとばかりに出発って言葉を使ったので
「そうしよう、アイス、これから夜は少し楽になるぞ、なんせ弓使えるのがテンローとナジャで二人に増えるし一人は矢を無駄遣いしても平気なんだからな」
「かくしてた分頑張るよ」
ナジャも気合十分のようだ、アイスは頷いただけでそのまま馬車に入っていった、何か考え事していたのかアイスは感情がわかりにくいので困る
出発の準備も整い、また森の中の道を次の街へ向かって進むことにした
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