2話 勇者の実力を測定
ラブ男はこの何とも言えない空気の中発した第一声は
「服をくれませんか?」
状況に驚いて混乱するわけでもなく、裸の男は服を要求してきた、この男ただものでは無いと思わせたかった、それだけのために頑張ったラブ男の演技
「聞いたであろう、服をもって参れ」
目の前の漫画に出てきそうな姫様は混乱しているのか可愛らしいお姫様口調ではなく貴族のしかも男のような口調で魔法使いみたいな男に声を掛けた、そこで言葉がちゃんと通じていることに気づくがそんなのは些細なことなので気にしないことにした
「俺はここに「呼ばれた」と考えていいですか?」
俺は勝手に次元の狭間に巻き込まれ異世界ではないことを確認するために言葉を選んだ
「はい、異世界に勇者を求めて召喚させていただきました」
うわ、厄介だ、勇者を求めてってことはこの世界ピンチじゃん俺何かすごい力とか授かってないと死ぬんじゃね
「この世界は異世界から勇者を呼ぶのは当たり前なんですか?」
「いえ、この国では初めてのことでこれからの功績次第で当たり前になるかもしれません」
あ~嫌な予感がするわ~
「もしかし初めて呼んだってことは返す方法も無いとかですか?」
「良くわかりましたね、はいまだ返す為の研究はしていません」
俺は誰でもわかるような感じで肩を落とした
マジかよ、あれ?
「研究してないってことは研究したら出来るのか?」
「こうして召喚出来ましたので返す事も可能かもしれませんが、召喚するのにも3年の研究と半年の魔力供給が必要でしたので、必要な魔力次第では研究と魔力供給で5年~10年を見て頂かないといけないと思います、それにもう一つ、この国が平和にならないとその研究ができないんです」
帰れる可能性はあってもだいぶ先だな~しかも平和にならないと研究できないのか
「それは研究費が高いから平和にならないとお金が出せないって事でいいですか?」
「それもありますが、王族が戦争より研究に力を入れていたら民が離れてしまいますし、勇者様への支援で使うお金が研究費の大半になりますので研究期間は戦争終結に力を入れるというアピールのためにも研究は今行えないのです
今回の研究も戦争が終わらないこの現状を変えるために異世界から勇者を召喚するという名目でやっとの事研究を進めてきたんです」
「本当の目的が別にあると?」
「この国には英雄エイジャーという魔王を倒した者がおりまして、史実では国の優秀な兵士であり魔王を倒し英雄となって安泰な老後の末なくなったとありますが、異伝ではエイジャーは異世界から来て魔王を倒し異世界に帰ったとあります」
「異伝って物語かなにかじゃないか、史実を認めなさい」
「でも結果、異世界からあなた様をお連れすることが出来ました、そういえば勇者様のお名前は?」
名乗っていなかったな本名名乗って真名を縛るとか言う小説をどっかで見た気がするな
「俺はラブ男だ、あなたの名前を聞いても大丈夫ですか?」
「私は現フルネイス王国国王フルネイス45世の正妃の6番目の子で次女シャルナータ・フルネイスと申しますシャルでも姫でもなんでも呼び方はなんでも構いませんよ、ラヴォー様」
ラブ男と言ったのだがラヴォーってなんかカッコイイので訂正するのをやめた
俺たちが名乗り終わったあとに魔法使いが服を持ってやってきた
「これを来てください、ぜぇぜぇ」
かなり急いでくれたみたいだ、少し着にくいがまあなんとか着れた
「やっと裸じゃなくなったか」
「でもどうして裸で召喚されたのでしょう?」
姫様は裸で召喚さてた理由を知りたがっていた、それは俺が裸だったからですとは言えないので
「見たところ、俺の世界とは文化が違うように見える、異文化を受け入れる事の出来ない人がいると聞いたことがあるので裸で送られたのかもしれない」
もっともらしく聞こえるように、誤魔化してみた
「きっとそうですわね例えば敵軍と同じような服装だったら受け入れられないわ」
この話は受け入れられたようだったが、後ろの魔法使いは少し疑った顔をしていたが気にしないで話を変えよう
「これからどうするんですか?」
「これからラヴォー様の能力を確かめたいと思います、まず体力や技術を調べようと思いますので、今新兵の訓練をしているので其処に行きましょう」
俺も気になっていたのでありがたい、初めての異世界召喚を実行したこの国では召喚勇者の基準がない、物語では結構特殊能力とか持ってそうだが俺の世界の異世界トリップ物のラノベと同じみたいだがこの世界ではどうなっているのだろうか?
「ここが訓練場になります、まず基礎体力を見たいので新兵と一緒に走ってもらいます」
新兵は50人ほどいた、俺はそこで走り出した、俺はもともと10キロは走れる体力がある、小中高とずっと学校にマラソン大会がありそこで毎年一キロずつ伸びていって1キロから始まり高校は二年生までなので計11年高校二年生では11キロ走らされたし、そのマラソンで1位になると成績がいくら悪くても体育で1は絶対につけないという特殊ルールを高校の時に発令されて死ぬほど頑張って高校では一年でも二年でも1位を取ったが高校3年の時に気づいたのだ、マラソンで一位になる奴が体育で1を取る成績なわけがない、テストが出来なくても3はつく
走りながらこんなことを考えていたが1時間位たったのにまだ走り終わらない、まだまだ終わらない、いつまで走り続けるんだ、必死に食らいついて2時間走ったところで俺は力尽きた、しかも新兵は兵装をしているので見た目では10キロくらいの重さのハンデがありながら俺はぜんぜんついていけなかったことになる
俺は耳は良くなったのか、遠くにいる魔法使いの言葉が聞こえてしまった
「体力、新兵以下」
魔法使いがそう言っていたが俺はもう力尽きていたのでただただ悔しいだけだった
「ラヴォー様休憩を挟んで、剣術や槍術などの戦闘技術を見させていただきます」
姫様に言われて、出来ませんとは言えないので
「わかりました」
と言うしかなかった、まあわかりきっていたが剣術槍術馬術弓術、全てダメだった
「ら、ラヴォー様、次は魔法でございます」
姫様もあまりの酷さに動揺しているようだ、魔法もダメだったら追い出されるんじゃなかろうか
「魔力を感じませんね」
魔力測定が出来る魔法使いさんが辛辣な言葉を発した、俺はどうしたらいいんだ
「ラヴォー様、一体何ができるんですか!」
姫様がキレた、俺なんで怒られなきゃいけないの?俺のせいなの?
「出来ることなんてないですよ、俺の都合も考えずに呼んでおいてその言い草はなんですか?現実と物語の区別もつかずに召喚なんてするのが悪い」
と言ったつもりで心の中にしまいこんで、俺は「戦術分析を少し」と言ってその場限りの嘘をついて、その場を誤魔化した、この国は戦争をしているのだから戦術分析と言っておけばなんとかしのげるはずだ
「そうですか、じゃあ将軍と宰相の下にお連れいたします」
姫様はとても残念そうだった、まあ英雄エイジャーがどんなものか知らないがそれと違うのだろうが俺に敵を倒して欲しいと思う方が間違っている
将軍はとても威圧感があるのかと思ったら鎧とかも来ていなくて貴族といった感じの服を来ていた、宰相も将軍より細身ではあるけど貴族って感じの服装であまり差は無かった
「宰相、将軍こちらは異世界から召喚したラヴォー様でごさいます、今何がお出来になるのか測定している最中でして、剣術は体力は新兵以下で魔法は魔力すら感じられないとのことですが、戦術に心得があるとのことでお連れしました」
「わかりました、今こちらが行っていることは機密事項ですのであまりお教えできませんが、開戦時は10万の歩兵を盾に1万の魔法使いや魔術師で遠距離攻撃をしておりました」
それを聞いた俺は考えたが俺はそもそも何と戦っているのかを知らない
「すみません、それは何と戦っているんですか?」
「そこからですか、相手は巨人です、大きさは3m級が数千です」
「巨人は何か装備をしていますか?」
「装備は木の枝や木等を振り回してきますね、鎧などは来ていないです」
「そうですね、まず平地で正面から先ほどの戦術で戦うと言うのであれば俺は撤退します」
「なぜかね?」
「敵は3mで数千と言うことで魔法の規模などはわかりませんが例えば1mくらいの岩を投げ当てても死なないような感じで大丈夫ですかね、多分木を振り回されるだけで魔法も防がれてしまったんじゃないですか?もしくは100か200は死んだかもしれませんがそれでも止まらずに盾をしていた10万の兵は無残に蹴散らされたんじゃないですかね」
あ~だいぶ言い当ててしまったようだ、俺は普通に現代人なら考えられる事を言っただけなんだが困ったな
「もし平地で戦う場合どうしたらいいと?」
「俺なら森か林に縄を付けて進めないようにして小さい魔法ではなく大きな魔法を使える人だけで纏めて叩き潰しますそして取りこぼしを歩兵と小さい魔法で叩き潰します、そして攻勢に出ずに引きます、引いて森の中で敵が1人になるのを待って10人ほどで確実に倒して即移動を繰り返します」
「それで勝てますか?」
「勝つには戦略が出来る人が必要ですね、俺はあくまで戦術ですので一部の戦場で勝つ程度です、今の方法はその場では勝てると思いますよ、戦争で勝てるかどうかは俺にはわかりません」
10年間平地で戦ってこの国は民を無駄に殺してきたのか、頭を抱えたくなったが確認したいことがある
「ずみません聞きたいことがあります、冒険者とかって居ますか?魔物を討伐して生活している人たちなんですが」
「はい居ますがそれが何か?」
「もし、俺の言った事を実行するなら、冒険者を雇うか冒険者から教えてもらってください、森での魔物との集団戦闘は兵士の方より知っていると思いますのでこれはとても大事です」
「なるほど、しかし冒険者に」
将軍は少し嫌なようだ
「そういうプライドと魔物の勢力を食い止めるのとどっちが大事なのか考えたらわかると思いますが」
苦虫を噛み潰したような顔をして居た
「あと俺の戦術はかじった程度ですのでこれが限界ですのでこの提案で今回戦場が改善することがあれば俺はお役御免でお願いします、戦場に駆り出されても体力も魔力もない俺は死ぬでしょうし、俺はほぼ自分の世界に変えることができないのでこの国で生きていけるだけのお金をください、もちろん戦場を好転させた場合の功績としてお願いします」
「分かりました、仕方ありませんね過度の期待は出来ませんし、戦場で戦術が成功すれば研究費から生活出来るだけのお金を出させていただきます」
姫様は俺が戦闘で活躍出来ない事を認めて諦めたのか、俺に興味を無くしたようだった
俺は金をもらったらこの国を出ていこうとこの時決意した
それから2ヶ月、体を鍛え魔法の対抗策を魔術師に教えてもらい、字を勉強し書物も色々読んでこの世界を勉強した、やはりこの世界で冒険者をするしかなさそうだ
相変わらず魔力は無く魔法も使えないし剣術も新兵に1分粘れる程度になっていた、走るのは兵装して最後までついていけるようにはなった、大体5時間走る感じだ兵装として水袋は持っているので5時間水分補給無しということはない
そして今日漸く戦場での結果が出たとのことで将軍達のいる部屋に案内された
「よく来てくださったラヴォー殿」
「おはようございます、結果はどうなりましたか?」
「今回3万人と雇った冒険者500人でラヴォー殿の戦術をした結果、敵を3000程殺す事に成功しました、そしてこちらの被害が兵士と冒険者合わせて6000ほどの被害で済みました」
いやいや敵の倍じゃないですか、失敗だったのかな?
「平原で戦っていた時はこっちの被害は一回の戦闘で2万以上で倒せるのは1000といったところでした、なので今回の戦果はだいぶいい結果です、ラヴォー殿の功績は大きいです」
「そうですかそれはよかったです、このまま同じ戦術が使えるかわかりませんがもしダメでになったときは岩場や崖で落石を利用して戦ってくださいでも逆に岩を投げられた時は気をつけてください、逃げる時はドンドン山を登るように逃げてください落石を落としながらそして頂上まで行かないで魔法で牽制しながら逃げ場を確保して一点突破で逃げてください、俺の出来る最後のアドバイスです」
最後と言われて将軍は残念って顔をしていたが
「分かりました、森の策がダメになったとき試させていただきます、一応戦地にはそれに近い小さめの山もありますので、功績の報酬については宰相からお聞きください、次の戦のために作戦を伝えに行きますので先に失礼します」
「それでは報酬の件ですが研究費から出す形になりますので、そんなに多く出せませんが今年の研究費の残りと来年に当てる予定の研究費を全てお渡しすることになりました、135pになります、これだけあれば100年は生活しても大丈夫だと思います、無理な召喚をしてしまったお詫びも兼ねております、ありがとうございました、そして申し訳ございませんでした」
お金の袋を受け取った 袋は3個あった一個は134p入っていて一個は99g入っていた一個は9sと100c入っていた、かなりの重さだったがこれは仕方がないので諦めた
「こちらこそ有難うございます、それにこのご配慮痛み入ります、召喚はお互い不運な出来事としましょう、俺は運がなく姫様達の理想の英雄が来なかったという不運ですし」
「いえいえ私としては下手な力を持った個人より戦況を変えてくれる方つまりラヴォー様のような方で良かったと思います」
宰相からしたらそうかもな王家に気に入られて姫の婿とかになるわけでもなく力で英雄になって世論を味方につけるわけでもないからな
「ご武運をお祈りしております、ではこれでお別れですね、ありがとうございました」
部屋を出て外にいる兵士の方に城の出口まで案内してもらい、俺は城を後にした
読んでいただきまして誠に有難うございます