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お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》Ⅱ
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第74話 霊技修行

 未羽と愛琉から霊技の説明を受けた数日後、俺たちは「霊技」を使える様になる為の修行を始めていた。

 時間帯は午後から夕方まで。本来であれば午後は授業のある時間なのだが、未羽たちが先生たちに説明をして変更してもらったらしい。

 そして今、第一バトルフィールドで修行をしているのは俺と陽花さん、良太の三人。ゆずと氷河はディレクトリを改造してもらう為、シルキさんの所に行っている



「それじゃあ、今度はフェニクシアでいくよ? 準備はいいかい?」


「おう、いいぜ。かかってこい!!」


「……≪コールド・フェニクシア≫」



 良太の威勢の良い声に微笑し、未羽が力強く剣を振った。

 飛び散った氷粒が集まり、一つの鳥―――不死鳥―――へと変化する。

 氷で作られたそれこそ、以前の戦いで良太を負かした≪コールド・フェニクシア≫だ。残氷を宙に撒きながら、氷の不死鳥は良太の元へと向かっていく。

 すると彼はアロンダイトを頭上に構え攻撃の体勢に入った。しかし、魔法の発動もしなければゲージのブレイクしない。

 迫るくる不死鳥。

 そして―――



「【No.3】……えーっと……あぁっ、ムリっぽい!!」



 「霊技」を発動しようとした良太が慌てながらアロンダイトを振り下ろす。

 しかし霊技は発動することなく、純粋な打撃となってしまった。

 当然、フェニクシアが破壊されることはなく、そのまま良太に直撃。彼を数メートル後方まで吹き飛ばした



「イテテ……。ゲージを使ってない状態でこの威力、やっぱフェニクシアは効くな。さすが、未羽の切り札だぜ」


「『もう、そんな事言ってる場合じゃないでしょ。どうしたの? 発動が途中で止まっちゃったみたいだけど』」


「いや、未だに霊技の名前が分からなくてさ。頭の中に浮かぶ気がしねぇんだ。なぁ、これってホントに自然と分かるもんなのか?」


「自然と分かるもんなんだよ。魔法の名前だってそうでしょ? それに何より、良い例がすぐそばにあるじゃないか」


「まぁ……それを言われちゃ、俺の努力不足って言うしかなくなっちまうな」



 未羽と良太の視線がこのフィールドの南側へと向けられる。その数十メートル先では、数回の爆発が発生し、その轟音を鳴り響かせていた。

 そこにいるのは、陽花さんと愛琉の二人。

 愛琉の両脇には大きめなガトリング砲の様なモノが備えられ、そこから光線や砲弾が放たれている。

 轟音の原因は言うまでも無い



「陽花はもう名前を把握して、実践に投入出来るまでに仕上げてる。ホント、ビックリな速度だよ。……あっ、もちろん能力の開花速度には個人差があるからね。悪い様に受け取る必要は無……」


「オッシャ!! だったら俺も早く使える様に努力あるのみだぜ!! 鈴、コネクトの維持ってまだ出来るよな?」


「『当たり前でしょ。このまま終われるわけないじゃない』」


「だよな。ってなワケで未羽。また対戦、頼むぜ」


「……そうだったね。キミなら、悪い考え方をするはずもないか」


「『というか、出来ないのよ。基本的に前しか見えないバカだから』」


「おい鈴。誰がバカだって、このヤロウ」


「ほらほら、いいから。四回戦目、始めるよ」



 未羽が再びマーティクルソードを構えると、良太もアロンダイトを構える。

 両者は小さく微笑みあい、そして、地面を強く蹴り上げた



☆     ☆     ☆     ☆     ☆



「それじゃあ陽花。次、行くわよ!! ≪バレッドレイン≫」



 一方、南側では愛琉が再び光線を放った。


 両手にあるのは彼女の魔法武器「ガラティクルバスター」。通称「ガラティ」。その外見は手に持つタイプのガトリング砲で、見た目の通り射撃系のディレクトリだ。

 本来であればその大きさの関係上、愛琉の小柄な体格に合っているとはあまり言えないのだが、彼女はそれを慣れた手付きで器用に操っている。

 

 二つの砲から放たれる無数の細い光線。それは少々ジグザグな軌道を描きながら、陽花さんの元へと向かって行った。

 そしてそれが彼女に迫った瞬間―――



「……【No.2≪空間転移ディメンジョン≫】!!」



 彼女の瞳が銀色に輝き、足元に「Ⅱ」の文字を中心とした魔法陣が現れた。刹那、その姿が消え、誰もいない空間を光線たちが通り過ぎて爆発する。

 すると愛琉が「フフッ」っと笑みを浮かべ、振り向き後方に視線を向けた



「うん、かなり使いこなせてるじゃない。転移位置はどう? ちゃんと想像した場所に転移出来てる?」


「慣れてきたからコントロールはだいぶ楽に出来るようになったよ。でも細かい位置はまだまだかな。空中に移動するのもまだ出来ないし……」


「まぁ、それに関してはもっと慣れてもらうしかないわね。でも、ちゃんと成長してるんだから、そこに関してはしっかり自信にしなさいよ?」


「ふふ、りょーかい」



 腕を組んだ愛琉の言葉に、陽花さんが小さく微笑む。

 彼女が初めて霊技を使える様になったのは、つい数日前の事だ。修行を初めて三日目、今みたいな実戦形式を行っている時に、初めて成功した。

 それから感覚を掴んだのか、彼女は連続で成功させて見せた。慌てて使うと転移位置を間違えたり、転移のタイミングを誤ったりすることがある様で、彼女曰く「完全な出来ではない」らしいが、その精度は非常に高く、今では霊技以外の「ある技」の習得も始めているという。



 そして、俺はというと―――



「…………」



 良太や陽花さんの戦いを地面に座ってみていた。状態としてはコネクト状態であり、体調や調子が悪いわけではない。もちろんそれは、フェアリー化している弥生も同様だ。

 けれども俺は一歩たりとも動いていない。時計を見てみると、この態勢のままもうすぐ一時間が経とうとしている。

 幸い、正座ではないから足の痺れは無いが、ずっとこのままというのは流石に飽きてきてしまう



「『ハル、どうですか? 見えましたか?』」


「いや、見えないな」


「『「うぅ、そうですか……」』」



 残念そうな声を漏らす弥生。そんな彼女の声を気にしながら、俺はもう一度、目の前の光景に意識を集中させる。しかし、目に見えるのは対戦する良太たちの姿だけだった。未羽たちに言われた「あるモノ」は、微かにすら見える事は無い。

 俺の霊技を得るための修行。それは「空中にある使用済みの魔力を見る事」というものだ。

 基本的に空中に散らばっている魔力の物理的な大きさはとても小さく、目に見える事はない。それは使った後の魔力も同様であり、魔力を集めて弾丸にするなどしてある程度の量を集結させない限り、視界に捉えることは出来ない。

 しかし俺は、集めた魔力ではなく魔法の使用によって飛び散った極小の魔力を見つける様に言われた。つまり、とても難しい難題を与えられたのだ。正直、少しでも楽しみながら出来る対戦の方が羨ましい



「(これってもしかして、魔力を見る魔法を創り出せって事なのか? けどそれはなんか違う気がする。……っていうか、ちょっと眠くなって……きた……な……)」


「『……ハル? ハル? ちょっと、しっかりして下さいよ!!』」


「ごめん……弥生。俺、ちょっと……眠くなって……」


「はーい、そこ!!」


「うげっ!?」



 いつの間にか眠気に誘われていた俺を未羽の声と愛琉の魔法が現実世界に呼び戻した。

 目の前には少し大きめの穴が開いており、鉄球が埋まっている。弾丸、というべき代物だ。それはすぐに粒子となって宙に消え、衝撃によって作られた穴だけが残る



「(あ、危なかった……)」



 胸に手を当て安堵すると、目の前には未羽と愛琉の姿が見えた。その向こうでは良太と陽花さんが水を飲んだりして、休憩を取っている



「まったく、ハルくん。眠っちゃったらダメだよ? それじゃあ、修行にならないじゃないか」


「あぁ、ごめん。つい意識を持っていかれてたよ。一応さっきまでは目を凝らしてたんだけどな。ホント、ごめん」


「……まぁその様子だと反省はしてるみたいだし、ここ数日間で初めての居眠りだったから許してあげようかしら」


「とまぁ、それは置いといて。ハルくん、その様子だとまだ見えていないみたいだね」



 少し間を置いた未羽の言葉に小さく頷いた



「未羽、愛琉。俺の修行って本当にこれでいいのか? これを続けて数日で未だに成長してる感覚が無いんだけど……」


「修行方法は人それぞれだからね。よくやる修行は実戦だけど、今キミがやっているそれだって一つの立派な修行だよ」


「そうよ。それにそれはラグさんから提案された修行なんだもん。疑う必要は無いわ」


「ラグさんが?」


「えぇ。ラグさんは春人の能力がどんなモノかある程度見抜いてるみたいね。だからそれに合わせた修行を考えてくれたの」


「えっ、あの人、俺の能力を知ってるのか!? だったらどんな能力か……」


「残念ながらボクたちもそれは教えてもらっていないんだ。だからあの人が考えた修行をキミにやってもらうしかない。だからキミの質問である「この修業で本当にいいのか」っていうのには、正直答えられない。けど……」



 未羽が小さく微笑み、少し遅れて愛琉も似た表情を見せる。

 それは先輩らしく頼もしい、優しさに溢れたモノで―――



「信じてみて、いいんじゃないかな。一生懸命ならきっとキミの「想像」は裏切ったりしないはずだからさ」


「ほら、また対戦するからしっかり見てなさい。さっきより魔力が飛び散るすっごいバトル、見せてあげるんだから」


「あぁ―――ありがとう」



 そんな二人の言葉を聞いて俺は、自然と力強く頷いていた




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