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お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》Ⅱ
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第73話 霊技

 良太と未羽。両者の戦いは全体的に見れば、そう長いものでなかった。

 時間にして約二十分。その間、俺達がフィールドから目を離す事は殆ど無かった。だからこそ、良太が十分な実力を発揮した事を知っている。

 だが、結果的に戦いは良太の敗北に終わった。もちろん、未羽の魔法は強力で剣技も高いレベルだったので、それらが勝因の一つだったとは思う。

 しかし勝利の理由はきっとそれだけではない。

 そう思わせるのが、彼女の使った未知の能力―――「霊技」だ




☆     ☆     ☆     ☆     ☆



「はい。これ、お茶です。薬草も入ってますから、少しは効くかと思いますよ」


「おぉ……ありがとよ、弥生ちゃん」


「ありがとう弥生。助かるわ」



 弥生の用意したお茶を良太と鈴が受け取った。彼らはそれを一気に飲み干し、「ふぅ」と落ち着いた声を漏らす。

 微かに漂うのはハーブの様な香り。弥生が入れたという薬草の香りだ。消費した魔力の回復速度を上げてくれるというそれは効果的には微妙なものの、精神的に疲れを癒してくれる


 戦いを終えた後、俺達は学園の食堂に集まっていた。お互いの攻撃は激しかったが、良太にも未羽にも怪我はなく、良太と鈴が疲労しているだけで済んでいる。それも一時期なモノだから問題もないだろう



「しかしまぁ、随分と派手にやられたな。まだ肩に氷塊の一部が付いているぞ」


「う、うるせぇ!! それだけ未羽に使われた魔法がすごかったって事なんだよ」



 バツが悪そうに目を逸らす良太。


 実はあの戦いで、未羽は良太の魔法を反射した後、鳥を模した氷塊を出現させ良太に攻撃を行ったのだ。それによって良太はダウンし、未羽が勝利した。きっと彼はその時の攻撃を思い出しているのだろう。


 そんな彼を見て、未羽が苦笑いを浮かべた。



「≪コールド・フェニクシア≫はボクの大技の一つだからね。けど、ちょっとやり過ぎ……だったかな。ごめんね、良太くん、鈴ちゃん」


「いいや、未羽が謝る事じゃない。むしろ今の自分がどんくらいの実力か、清々しいほと痛感したんだ。感謝してるくらいだぜ」


「感謝……?」


「そうよ。それに手加減なんてされたら、それこそ、このバカは怒るわよ。まぁそれに関してはあたしも一緒だけどね。だから、謝らなくていいのよ」


「良太くん……鈴ちゃん……。ふふ、やっぱりキミ達「特待生」は面白い子たちばっかりだね」



 二人の反応が意外だったのか、未羽が驚きと共に優しい笑みを浮かべた。その表情には先輩らしさがって、なんだかホッとした気持ちになる。

 しかし、そんな気持ちのままでいるわけにもいかない。そう、「あの能力」について聞かなければならないからだ。

 話すなら、きっとこのタイミングだろう。そう思いながら、俺は話しを切り出した



「……なぁ、未羽」


「ん、どうしたのハルくん?」


「未羽がさっきの戦いで使ってた能力があったよな。確か「霊技」とかいう能力。あれって一体何なんだ? 普通の魔法ってわけじゃないよな?」


「霊技……か。それに関してはあとから説明しようかなって思ってたんだけど……。そうだね、今話すとしようか」



 そう言って未羽が一度咳払いをした。それが真面目な話しだと全員が察し、それぞれの視線が彼女に向けられる



「ハルくんの言った通り霊技は普通の魔法じゃない、特殊な魔法だ。例えば普段魔法を使うとすれば、空気中であれ体内であれ「魔力」のみを使うだろう? だけど霊技はそうじゃない。霊技の場合は魔力と一緒に「霊力」も使う事になるんだよ」


「えっ、ちょっと待ってくれ未羽。霊力ってもしかして……」


「そう。聞き覚え、あるよね?」


「春人、陽花、良太。アナタ達が持っている力の事よ」



 「霊力」。その単語には確かに聞き覚えがあった。このファンタジアの事をラグさんから聞いた時、彼が言っていた単語だ。それがあるから俺はここに来ているわけで、それを忘れるはずが無い



「霊技で発動できる能力は、一応、魔法でも再現する事は出来る。けど、そのどれもが通常の魔法で再現しようとすると難しいか、もしくは不可能のレベルだから優秀であることは間違いないね」


「……けど、ちょっと待てよ。あれってオバケと契約した俺らだから持ってる力なんだろ? なんで未羽がそれを持ってんだ? もしかして契約してんのか?」


「そうじゃないよ。ボクたちは契約者じゃない。ボクたちの持ってるディレクトリが霊力を操る能力を持っているんだよ」


「ディレクトリが霊力を使うのか?」


「そうだよ。だから理論上の話しで言えば、ボクのディレクトリ「マーティ」の霊力と波長の合う人であればボク以外でも【No.11 氷結反射アイス・リフレクション】を使う事が出来るんだ。まぁあくまで理論上は、だけどね」



 未羽が不敵な笑みを浮かべた。「理論上」という言葉を重ねて使ったのは、あえてそれ意識させるため。つまり実際は、そう簡単な話しではないという事なのだろう



「って、もしかしてだけどさ未羽。今の話しの通りなら、俺達もその「霊技」を使えるって事……なのか?」


「もちろん、その通りだよ。しかもキミ達はオバケと契約して直接霊力を扱う力を得ている。つまり、正真正銘「キミ達の霊技」が使えるって事なんだよ」


「俺達の……霊技……」



 未羽に言われて、俺は右手に視線を向けた。

 今までは魔力だけを使ってきたので、霊力の操り方は分からない。けれど、自分の中にそういう可能性が眠っていると思うと、それはなぜか俺をワクワクさせてくれる。

 未知への好奇心、というのだろうか。何とも言えない、不思議な感覚が湧きあがってきた



「あの未羽さん。私の中に眠ってる移動系魔法の可能性ってもしかして……」


「教えるのが遅れちゃってごめんね、陽花ちゃん。けど、その通りだよ。キミの霊技は恐らく移動系だ。むろん、確定と言うわけではないけど、でも可能性はかなり高い」


「なぁなぁ未羽!! 俺は!? 俺の霊技はどんなのなんだ!?」


「残念ながら、良太くんとハルくんの霊技はまだ分からないんだよ。これからの開花に期待、ってところかな」


「これからか……。へっ、だったら絶対使える様になってやるぜ!!」


「ふふ、その意気だよ。頑張ってね」



 そう言った未羽が少し動き、今度は氷河とゆずに視線を向けた



「……それで、氷河くんとゆずちゃんなんだけど、実はキミ達にもちょっと話があるんだ」


「お話し……ですか?」


「あぁ。愛琉、お願い」


「えぇ。えーっと……はい、これ」



 未羽に頼まれた愛琉がポケットから何かを取出した。それから氷河とゆず、それぞれの手のひらにそれを渡す。

 彼らの手のひらにあるモノ。それは―――



「これは、カードと……申請書……だと?」


「そうよ。それはディレクトリ改造の申請書。ほら、下にゲージ増加改造って書いてあるでしょ? ディレクトリのゲージを増やしてもらうのよ」


「二人はそれに相応しい技術と知識、経験を持ってるからね。その申請書をシルキさんの所に持って行けば改造してもらえるはずだから、近いうちに行っておいてよ。それと、そのカードにはボクたちの魔法が入ってるからね。時間がある時に使って訓練してみて。それなりに役に立つはずだからさ」


「おぉ!! ありがとうございます。未羽さん、愛琉さん」


「感謝する」



 氷河とゆずが軽くお辞儀をした。それに未羽が「どういたしまして」と答え、全員の顔を眺める



「……さて、みんな。明日からからそれぞれに忙しくなると思うけど、頑張ろうね」



 彼女の一言に全員がコクリと頷いた。


 解決への第一歩。それがここから、始まったのだ




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