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お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》Ⅱ
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第56話 『電撃』と『冷気』

「≪ソニック・イレイザー ヴァリアブル≫!!」



 カリバーから黄色い閃光が放たれた。しかし、つい数秒前に放たれた≪ソニック・イレイザー≫とはその数が違う。合計で4つ。全てのそれが外回りに飛び、1度の屈折を経て一つの対象に向かっていく。


 ≪ソニック・イレイザー ヴァリアブル≫、その名の通り派生技だった。

 単体で放たれる≪ソニック・イレイザー≫に対して、この技は複数の光線を放ち、様々な角度から対象に攻撃を仕掛ける事が出来る。



 対象―――氷河は上下左右から向かってくるそれらを見て、ブリューナクを地面に突き刺した。動作としては≪フリージング・ハイウォール≫と同じ。だが、彼が使うのはそれではない。「ヴァリアブル」同様、春人との戦いで初めて見せる技。それは



「≪アイス・スピアレス≫」



 刹那、地面が小さく揺れ動き氷の槍が突き出した。そのまま閃光を貫き、破壊する。その数は4つ。全ての槍が、全ての閃光を消滅させた



「『「ヴァリアブル」が全部壊されちゃいましたよ!?それにあの魔法、前回は無かったですよね……?』」


「あぁ。あの時使わなかったのか、新しく覚えたのか。どっちかは分からない。けど」


「この戦いで新たな技を見せるのは、お前だけではない」


「ま、そういう事だよな……」



 苦笑しながら春人はカリバーを頭上に構えた。ゲージが1つ破壊され、その刀身にエネルギーを纏う。一方の氷河もゲージを1つ使い、矛先を輝かせていた。

 そして―――



「≪スパークルスマッシャー≫!!」


「≪コールドディパニッシャー≫!!」



 双方から「電撃」と「冷気」が放たれた



☆     ☆     ☆     ☆     ☆



「おぉーっ!!また大技じゃねぇか!!あれもお前が教えたのか、ラグ?」



 一人の青年―――「シルキ」が興奮気味に言い放った。拳は強く握られ、よっぽど楽しんでいるのが一目でわかる。一方質問を受けた青年――「ラグ」は首を横に振った



「ううん、違うよ。春人くんが今まで使った技は、あの子自身が生み出した技たちだよ」


「そうなのか。この短期間で結構な数、覚えたんだな」


「二日目は筋肉痛に苦しんでたけどね。それでも一緒の頑張ってる弥生ちゃんを見て、頑張ってたよ」


「対抗心……か。モチベーション維持には適格な要素だな」



 ニヤリと笑うシルキにラグも「だよね」と微笑み返した。その瞬間、電撃が迸り氷が展開されるフィールドでは再び、技と技の激突が行われていた


 シルキがこの戦いの詳細を知ったのは3日前だった。店を訪れた京也から聞いたらしく、その直後に訪れたラグを問い詰め、事情を知って「俺も行く!!」と観戦を即決したのだ。

 それからシルキはキノを説得し、ここに来る事が出来た。まず第1の達成感からか、ここに来た時の彼はかなりハイテンションだった。

 そして、現在に至る――



「しっかし、春人も無茶するよな。つい最近負けた相手にすぐ挑戦……しかも条件付きときた」


「あはは、確かにね。でもシルキ、そんな性格って嫌いじゃないでしょ?」


「おう!!俺も同じ様な性格だからな。突っ走るのは良いと思うぜ。んでもって実際これだ。ここまで、氷河相手にかなりいい勝負をしてる。ここまでなら、勝敗は五分五分って感じだな」



 拳を掌にぶつけ楽しそうなシルキ。しかし、そこから彼の表情は真面目なものに変わっていく



「……けど、それはあくまで「ここまで」の話しだ。氷河がこのまま互角の勝負をしてくれればいいが、アイツは今回、本格的な装備まで付けてる。本気だ。つまり、「切り札」を使ってくる可能性は十分にある。それに対抗する春人に同じ様な「切り札」は……あるのか?」


「ん……どうかな。元になりそうな技なら教えたけど、あくまで「元になる」ってだけだからね。それを「切り札」に出来るかどうかは―――


春人くん次第、じゃないかな?」



☆     ☆     ☆     ☆     ☆



「≪迅雷の……風≫!!」


「―――ッ!!」



 勢いよく振られたカリバーの刃から、電撃が三日月の形をして放たれた。黄色く光るそれを見て、氷河は左手をかざし、軽く力を込める。すると電撃は瞬時に凍り、その場で砕け散ってしまった



「なっ……」


「≪アイス・スピアレス≫」



 驚く春人に隙を与えず、氷河が次の魔法を発動した。春人の足元が小さく揺れ、周囲に氷の槍が飛び出してくる



「(マズイ!!)」



 歯を食いしばった春人は咄嗟に右側へと飛び込んだ。地面に転がり、態勢を立て直す。目を向けてみるとさっきまで彼がいた場所は氷槍で囲まれていた。あのまま動かなければ行動を封じられていただろう。

 荒い息を正しながら、春人は苦々しく笑った



「≪迅雷の風≫は真正面からじゃ効かないか……だったら!!」


「『ゲージブレイク!!』」


「≪プラズマ・ショックウェーブ≫!!」



 弥生の掛け声とともにゲージが一つ消費され、カリバーの刀身に電撃が集中した。春人はそれを力一杯振りおろし、衝撃波として氷河に放った。土を抉りながら、それはどんどん標的に向かっていく。

 すると氷河が正面に手をかざした。それに合わせて、ブリューナクのゲージが破壊される



「≪フリージング・ハイシールド≫」



 刹那、彼の前に水色の丸い盾が現れた。それは春人の放った大きな電撃波と激突し、辺りに強い風を起こす。しかし、電撃波は氷河本人には届いていなかった。盾によって防がれ、徐々に徐々に電撃が消えていく。

 そして完全に消えた瞬間、氷河は一度盾の維持を止めて周囲を睨み付けた。微妙に見える光。それを確認すると彼は再びゲージを使い、今度は左右にそれを展開した。その一秒後、展開した盾に四つの閃光が衝突し、光の粒となって消滅する



「(だが、これで終わりでは無いだろう。連続した遠距離攻撃。その最後に狙うのは大方、最後の―――直接攻撃!!)」



 氷河が上を見上げると、空中には春人がいた。降下しながら、ゲージが二つ破壊される。対する氷河も同様だった。エネルギーをため込んだ互いのディレクトリを手に、両者はそれを思いっきり叩き付け合う。

 まるでつば迫り合いの様に二人は数秒間激突していた。しかしそれは、エネルギー同士のぶつかり合いによる爆発によって、両者の身体を後方へと吹き飛ばし中断させられる。



「『今のもダメだったみたいですね』」


「あぁ。イケると思ったんだがな……っ!?」


「≪コールドディパニッシャー≫!!」


「『ハ、ハルッ!!』」


「分かってるっ!!≪ソールシールド≫!!」



 春人が身体を左側にずらしながら小さなシールドを発生させた。一方の≪コールドディパニッシャー≫は進路を変えずシールドに直撃するものの、微妙に方向がズレ、彼らの後方で爆発する。

 しかしその威力の影響で、春人はバランスを崩し片膝を地面に付けた



「くっ、やっぱ小型のシールドじゃズラすのが精一杯だな……」


「『ハル、もっと大きなシールドって無いんですか?』」


「今回の修行じゃ、防御技はこれしか覚えられなかったんだよ。ラグさんに出された「課題」にかなり時間掛ったからさ」



 春人は額に汗を流しながら呼吸を整え、苦笑いした。

 彼はこの修業期間で防御技に殆ど時間を使えなかったのだ。だから簡易的な≪ソールシールド≫しか習得できなかった。

 だがその分、ラグの「課題」に時間を費やしてきた。そして彼から「とある技」も教わった。だから彼は―――ニヤリと笑った。それから立ち上がり、真っ直ぐ氷河に視線を向ける



「……弥生、「アレ」いくぞ」


「『「アレ」……ですか?』」


「あぁ。ホントはもう少し有利な展開になってから使いたかったけど、このままじゃ防御の薄い俺の方が先にやられる。だから」


「『ここで終わらせるって事ですか……?』」



 春人が深く頷いた。それから数秒の沈黙を置き、弥生の声が彼の頭の中に響いた



「『……分かりました。いってみましょう』」


「ありがとう。それじゃ……リミットバーストッ!!」


「『ゲージ……ブレイクッ!!』」



 カリバーのゲージが三つ連続して破壊された。刀身がいつも以上に光を纏い、周囲に風が吹き荒れる。それに反応した氷河がブリューナクを手前に身構えた。

 一方の春人はカリバーをしっかりと握り、「突く」態勢に変わっていく



「(リミットバーストにゲージブレイク……なるほど。ここで勝負に出てきたか)」


「いくぞ!!≪パトリオットブレイバー≫ッッッッ!!!!」



 地を力強く蹴り上げ、春人の身体が一気に氷河の元に飛んでいく。



 巻き上がる風。


 輝く刃。


 それは、轟音と共に氷結の魔術師に激突した




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