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お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》Ⅱ
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第55話 再戦!! 春人VS氷河

 第1バトルフィールド。7日前に特待生同士の交流試合が行われたその場所に、春人はゆっくりと足を踏み入れた。彼が振り向くと後方にいた弥生が頷き、「フェアリー化」した状態でそのあとを飛んでいく。


 この飛行能力はつい最近身に付けた能力だった。修行に取り組む春人を見て弥生が努力した成果なのだが、結果的に飛翔時間は平均「1分」とあまり優れるものではなかった。おまけに今回、直接に戦うのは春人であり、傍から見れば無意味に見えるかもしれない。

 けれど、春人は頑張る弥生の姿に励まされたからこそ、修行に対してより強い気持ちを持つ事が出来ていた。だから、彼は優しく微笑み共に戦う「仲間」である彼女と共に更に先へと足を進めた



☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 ラグから「リンクコネクト」を教わったその日の夜、春人達の元に沼島から連絡が入った。内容は再戦の日時と場所についての報告であり、5日後の午後5時半。場所は第1フィールドとの事だった。残された日数は4日間。わずかであるその期間に春人は夢中で努力し続けた


 そして5日後の今日。周囲は、彼らの戦いを見届けようと集まった生徒や教師で賑わっていた。

 あの時とはどこか違った空気に、春人は不意に微笑した



「はは。場所的には何も変わってないのに、妙に緊張するな」


「それはきっとハルの気持ちの問題じゃないですか?何とっても、今回は負けられませんからね。きっとプレッシャーを感じてるんですよ」


「なるほどな……って、おい。弥生、だったら緊張してる時にそれを改めて自覚させないでもらえるか?そんな事されたら余計に……」


「大丈夫ですよ」


「……っ?」


「ハルはちゃんと頑張ってきたんです。勝てます。プレッシャーなんて押しのけて勝っちゃいます。それに私も一緒に戦うんですから。大丈夫ですよ、ね?」


「……そうだな。弥生がいるんだもんな。よし、いくぞ弥生。アイツに……氷河に、リベンジだ」


「はいっ!!」



 元気な彼女の声。それと共に数メートル先に人影が現れフィールドの中心に向かって歩いてくる。

 白銀氷河。彼は以前と同じように落ち着いた雰囲気で前に進む。そして指定された両者のスタート位置。その印である白線で彼は立ち止った



「氷河、再戦を受けてくれてありがとな」


「礼はいい。それより、本当に俺に勝つ気でそこに立っているのだろうな?」


「当たり前だ。お前に勝って一樹の話しを聞いてもらおう。俺の目的は変わってないさ」


「……なるほど。闘志はまだあるか。だったら、それがいつまで持つか試させてもらおう」



 氷河が右手を前に出すと彼のディレクトリ「ブリューナク」が姿を現し、その柄が握られる。すると彼自身の身体が魔力を纏い、瞬時に服装が変化した。

 胸や肩などには厚めの武装が装備されており、腰から下にかけては袴。それが全体的に青で統一してある



「ぬーちゃんの言った通り、氷河さんにも戦闘用の服があるみたいですね」


「あぁ。だが、こっちにだってそれはある。弥生」


「はいっ!!」


「「リンク……コネクトッ!!」」



 互いに頷き、右手と左手を繋いでキーとなる単語を口にする。そして1,2秒後、春人と弥生の「リンクコネクト」が終了し、その手にカリバーⅡが現れた。

 今までとは違うその姿に、氷河も少々驚きを隠せない



「……ほぅ。パートナーと融合したか。となれば、やはり今回は武装をしても問題は無いようだな」


「『むむぅ、ハル。やっぱり前回はまだ手加減されてたみたいですよ』」


「そうみたいだな。けど今は関係ないさ。今回の、この戦いでは―――手加減が出来ないぐらいの実力を見せてやればいい。だろ?」


「『ハル……。ふふっ、ハルのそういう無駄にカッコいいセリフを言おうと頑張るところ、嫌いじゃないですよ』」


「なっ……。まぁいい。今は目の前に集中だ、集中」



 弥生のからかいを受けて複雑な気持ちになった春人は頭を掻きながら困った表情を浮かべる。しかし彼の緊張は解け、しっかりとリラックス出来ていた。

 それが弥生の意図的なものだったのかは、春人には分からない。もちろん、聞くわけもない。だから彼はただ一言を心の中で呟いた



「(……ありがとうな)」


「おー、おー。二人とも戦う気満々だな。ダルいとは思わないのか?」


「先生……」



 刹那、沼島が春人と氷河の間に立った。右手には赤い審判用のホイッスルがあり、左手には記録用のバインダーがある。彼がこの戦いの審判である事は、この時誰もが理解した



「ったく、ホントは審判なんざダルくてやりたくないんだがな、仕方ない。水上、氷河。お前ら、俺の時間を取ってるんだ。欠伸が出るような戦いは見せるんじゃないぞ。いいな?」



 沼島の言葉に春人は頷いた。氷河は特に動作を見せず黙り込んでいる。そんな二人にため息をつきながら、沼島が笛を構える。そして―――



「んじゃ。水上VS氷河戦……スタートだ」


「―――ッ!!」


「―――ッ!!」



 鳴り響く軽快な音。それと共に両者は瞬時に動いた。カリバーの剣先を相手に向ける春人。ブリューナクの矛先を地面に突き刺す氷河。構えの終わった二人は、ほぼ同時に魔法を発動した



「≪ソニック・イレイザー≫」


「≪フリージング・ハイウォール≫」



 春人のカリバーから解き放たれた閃光は氷河に向かって直進した。しかしそれは、前回と同じように氷の壁に阻まれ、使用済みの魔力―「魔力粒子」―となって宙に消えた



「どうした、前回と違いが無いようだが?「やってみなければ分からない」のではなかったのか?」


「あぁ、安心しろ。この数日間、しっかりやって……きたからさっ!!」



 地面を蹴り上げ春人が接近戦を仕掛けていく。すると氷河は≪フリージング・ハイウォール≫を解除し、ブリューナクの矛先を春人に向けた



「≪アイスキューブ・キャノン≫」



 氷河の周囲に生成された氷の塊が春人に向かって飛んでいく。

 以前は4つだったそれは、ゲージが使われていない為2つになっていた。その分威力は下がってしまうが、コントロールの難易度も下がり精度が増す。氷河は左右に移動させ動きを読まれない様にしながら、塊を春人に近づけていく。

 そして接触しようとした。その時だった



「……≪迅雷の……風≫っ!!」


「ッ!?」



 春人の一振りに氷河は目を見開いた。その視線の先では合計4つとなった―――しかし、威力を失った≪アイスキューブ・キャノン≫が破片となって消えていっている。

 彼の一振りによって雷の薄い衝撃波が生まれ、2つの氷塊は切断されてしまったのだ。春人の速度は落ちることなく、彼の思惑通り両者の距離が「接近戦」の距離へと変わった。

 それから春人はカリバーを真上から降りおろし、氷河はブリューナクの柄の部分で受け止める



「≪アイスキューブ・キャノン≫を……破壊したか。その技……以前は見なかった技だな」


「≪迅雷の風≫。新しく覚えた俺の「適合魔法」の1つだ。電撃を衝撃波として放ち、攻撃する。シンプルだが、少しでも油断してたお前には十分なインパクトだっただろ?」


「……なるほど……ッ!!」



 一瞬力を込め、攻撃を弾いた氷河が後方へ飛んだ。春人も体制を立て直し、再びカリバーを構える



「俺は確かに、油断していた。初手で前回効果の薄かった技を使う辺り、やはり策は無かったのかと思っていた。だが、どうやら少しは戦えるようになっていたらしいな」


「あぁ。それなりに修行を積んできたからな。前の俺と同じだと思ったら……大間違いだぜ?」


「では見せてもらおうか。その修行の成果を」



 刹那、氷河の周囲に小さな氷の粒が生成される。その数は恐らく20を超えているだろうか。青く輝くそれに、春人はカリバーを握りしめて走り出した




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