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お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》Ⅱ
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第54話 妖精化と連結融合

「春人くん、カリバーを出してもらっていいかな?」


「はい」



 ラグさんからの指示を受け、右手に少し力を込めた。それから加わった重みをしっかりと感じながら、現れた「カリバー」の柄を握りしめる。最初のうちはかなりの集中力を使っていたこれも、慣れたおかげか瞬時に出来る様になっていた。

 すると、それを見たラグさんが自身のカリバーを出現させながら微笑んだ



「その様子だと、カリバーの扱いも慣れてきたみたいだね」


「えぇ。最初の頃は特に意識しないとダメでしたけど、今なら会話をしながらでも出せるようになってます」


「うんうん。成長できてる証拠だね」


「ところでラグさん、1つ聞いても良いですか?」


「うん、いいけど……どうかした?」



 笑顔を見せていたラグさんが不思議そうに首を傾げる。

 俺の聞きたい事。それはこのディレクトリ、正式名称「カリバーⅡ」を受け取ったあの時からずっと疑問に思っていたことだった



「ラグさんのディレクトリも「カリバー」って名前ですよね?俺の持ってるコイツは「カリバーⅡ」。これって、何か関係があるんでしょうか?」


「関係……?」


「前々から気になってたんです。名前も形状も似てるから何か関係があるのかなって。もちろん俺の勝手な推測なんですけど、聞いておきたいんです。どうなんでしょうか?」


「……あはは、春人くん。その推測、間違ってないよ。「カリバーⅡ」はね、僕の持ってる「カリバー」を元として、このファンタジアの資材で作られたディレクトリなんだ。だから名前には「Ⅱ」が付いてて形状も似ているんだよ」


「って事は、ラグさんの持ってるカリバーはファンタジアでは作られてないって事ですか?」


「うん。このカリバーはここじゃない別の場所で、僕が自分で生み出したんだ。とある修行中の『想像』でね」


「ここじゃない場所……?ラグさん、あなたは一体何者なんですか……?」



 新たな疑問を抱きながらラグさんに問う。すると彼は手に出したカリバーを地面に突き刺しながら、それに答えた



「僕はラグ。魔法国の手助けをしている「絆」ってチームのメンバーさ」



☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 俺とラグさんがいるのは第2バトルフィールドと呼ばれる場所だった。馴染のある第1フィールドは他の部活が使っているということで、この場所を貸してもらっている。

 地形的には第1フィールドとあまり変化はない。広さも恐らく同じぐらいだろう。学園には、それが全部で9つもあるのだから驚きだ


 ちなみに、あれから教えてもらえたのは「魔法国には警護面などで手助けをするチームがあり、「絆」はそのうちの1つ」という事だけだった。

 どうやら、それ以外に話せる事は無いらしいので、俺も気にしないことにしている



「今回、春人くん達には「フェアリー化」と「リンクコネクト」、「適合魔法」とあと……特別に僕の「とある技」を覚えてもらうね」



 目の前にいるラグさんがそう言った。俺の隣にはなぜか呼ばれた弥生がいる。ラグさんの言葉が「春人くん「達」」となっているのは、その影響だろう。

 すると、あまり聞きなれないワードだった為か弥生が首を傾げた



「フェアリー……?妖精ってことですか?」


「そうだよ。難しい説明がいるわけでもないし、早速だけどやってみようか。カリバー」



 ラグさんの呼び掛けに応じて、その手に握られたカリバーのコア部分が点滅する。すると弥生の足元に無数の線が現れ、瞬時に魔法陣が完成した



「な、なんですかこれ……?」



 周りで浮遊していく青い光の粒。それに見とれながら弥生が小さく呟いた。その時だった



「…………きゃっ!!」



 魔法陣は急に輝きを増し、彼女の全身を包み込んだ。俺は光の強さに耐え切れず、右腕を目の前に構え顔を背けながら目を瞑る。


 光が収まりをみせたのは、その2,3秒後の事だった。恐る恐る弥生に視線を向けようとしてみると、さっきまで描かれていた魔法陣が消えている。それからゆっくりと顔を上げ、彼女の姿を確認する。

 そして俺は、唖然とした



「妖……精……?」



 無意識にそんな言葉が出ていた。目の前にいるのは確かに「弥生」だった。しかし、その姿はつい数秒前と同様のものではない。

 手のひらサイズの身長。背中から生えた薄ピンクの4枚羽。主な変化はこの2点だが、それは俺の「妖精」のイメージに合致している。だから思わず呟いてしまったのだ



「ラグさんラグさん。もしかしてこれが「フェアリー化」ですか?私、妖精さんになっちゃったんですか?」


「そうだよ。キミ達「オバケ」には基本的に身体を縮小する能力がある。それを「フェアリー化」って呼んでるんだ。そして僕は今、弥生ちゃんに魔法を使って、その能力を覚醒させた。ちなみに弥生ちゃんが元の姿に戻りたいって思えば、すぐに戻れるはずだよ」


「そうなんですか?それじゃあ……」


「あっ、ちょっと待って。今はまだ、その状態でいてもらえないかな?」


「それは別にいいですけど……どうしたんですか?」


「今回、そのフェアリー状態になってもらったのには理由があるんだ。春人くん、弥生ちゃんの手に触れて。それから二人で「リンクコネクト」って言ってもらっていいかな?」


「あっ、はい」



 妖精の姿となった弥生に近づき、彼女の差し出した小さな手に触れた。二人でタイミングを合わせ呼吸を整える。

 そして



「「リンクコネクト」」



 言われた通りの単語をほぼ同時に口にした。すると俺と弥生の体が光を帯びてそれぞれ球体に包まれた。

 刹那、俺はハッとした。身体に変化を感じる。まるで、あの「リミットバースト」を使った時と同じ様な感覚。けれどそれとは、何かが違っていた。

 不思議な感覚に浸っていると、今度は目の前で光の壁が弾け飛んだ。見えるのはさっきと同じ景色。だけど、弥生の姿が無い。

 その代わりに―――



「『ハル……これってどういうことなんでしょう……?』」


「うおっ!!弥生の声……って頭の中で響いてる!?」



 聞き鳴れた少女の声が頭の中で響き渡った。何事かと辺りを見渡してみるが、しかし彼女の姿は変わらず見えない



「どういうことだ、これ。弥生が消えて頭の中で声がするって……。ラグさん、これがリンクコネクトなんですか……?」


「そう。リンクコネクトは融合能力の事なんだよ。今、春人くんと弥生ちゃんは融合しているんだ。だからほら、服装だって変わってるでしょ?」



 ラグさんに言われて自分の身体に視線を向ける。すると、確かに服装が変わっていた。

 制服とされているブレザーと同じ紺色である薄い生地のロングコート。インナーとボトムスは、それぞれブラウンと紺色だが、生地は同様で薄めになっている。さっきまで着用していた制服よりも動きやすそうだった



「これって……?」


「リンクコネクト状態……大体は「コネクト状態」って呼ばれてるそれは、主に戦闘の際に使用する能力でね。服装もそれに適したモノに変化するんだ。もちろん、戦闘用だから防御的な性能も普通の制服より良いはずだよ」


「なるほど……。ところでラグさん、さっきから不思議な感覚があるんですけど、これって何なんでしょうか?まるで「リミットバースト」を使った時みたいなモノなんですけど」


「それは簡単な話で、純粋にキミの魔力、霊力が底上げされているんだよ」


「強化されてるんですか?」


「うん。今のキミは春人くん自身と弥生ちゃん、二人分の魔力と霊力を持ち合わせているんだ。だから所持している魔力や霊力の量が増えて「リミットバースト」を使った時と同じように感覚になっているんだと思うよ」


「そういうことですか」



 そんな理由があるのであれば、納得が出来る。それは弥生も同じだった様で、脳内で「『そうなんですねぇ』」とのんきな声を響かせていた



「さて、前準備が整ったところで本題に入っていこうか。「適合魔法」と「技」の習得だよ。春人くん。弥生ちゃん。『想像イメージ』の準備はいいかな?」


「『はい。大丈夫です。ねっ、ハル?』」


「あぁ。ラグさん、よろしくお願いします」



 優しくも頼もしい表情の彼に、俺たちはコクりと頷いた




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