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お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》Ⅱ
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第48話 相談

「なるほど、そんな事があったんだね」


「はい。もう俺、何が何だか分からなくなっちゃって……」


「あはは、確かにちょっと困った展開だもんねぇ」  



 白いマグカップを置きながら陽花さんが苦笑した。漂ってくるコーヒーの香り。それに影響されて自分のカップに入ったココアを一口飲み込む。

 美味い。けれども、心のモヤモヤはもちろん晴れない。だから机に倒れ込みため息をついた




 氷河と対戦から数時間後、俺は喫茶店を訪れていた。この店は学園内に建てられたもので名前は「ブラウン」。

 昼休みや放課後はもちろん、早朝からお客のいる3階建ての人気店だ。今も周囲には何人もの生徒が来店しており、会話と軽食を楽しんでいる。

 一方の俺はというと、氷河に関して相談を陽花さんにしていた。後々、弥生が良太達と一緒に来る予定となっている



「すいません、こういう相談しちゃって。せっかくの放課後っていうのは分かってるんですけど……」


「そんなの気にしない気にしない。ハルくんが困ってるなら、ちゃんと相談して欲しいしね。今度ここのスペシャルパフェを奢ってくれればそれでオッケーだよ」


「ス、スペシャルパフェ!?それってかなり高いヤツじゃないですか!!ちょっと、それだけは……」


「ふふっ、冗談だよ。安心して♪」



 イタズラが成功したからか陽花さんが子供の様に小さく舌を出してウインクした。スペシャルパフェの価格は「ブラウン」商品の中でもトップクラスに高く、安易に頼めるモノではない。少し本気にしていた俺は「ホッ」と安堵した



「けど、氷河くんか……」


「陽花さん、何か知ってます?」


「うーん、頭が良くて成績優秀。今回の「特待生」の中で、唯一小さい頃からファンタジアに住んでて、氷結魔法が得意……って事ぐらいかな。といっても、これだって同じクラスの子なら大体知ってる事だもんねぇ。あとは先生達に聞いてみるかだけど……」


「流石に個人情報になりますし、教えてはくれないですよね」


「うん。それにそこまでしちゃったら、ストーカーに間違われちゃうかも」



 もちろん、俺はストーカー目的でアイツの事が知りたいのではない。

 けれども、それまであまり関わりの無かった俺達がいきなり氷河の事を調べるとなると、不審に思われても仕方ないだろう。だから、教師達に聞くのは無理のある策なのだ。良案だけどボツ。それが分かっているから、陽花さんは苦笑した。

 


「けど、どうしてそんなに氷河くんの事気にするの?実は前に会った事があったとか?」


「いや、そんなんじゃないですよ。ただ、知りたいんです」


「知りたい……?」


「アイツ、最後にすごく辛そうな顔をしてたんです。だから、何がアイツを悩ませているのか知りたい。出来れば、それを解決して友達になりたいなぁなんて、思ったんです」


「……そっか。ふふ」


「あれ?もしかして俺、変な事言っちゃってました?」



 陽花さんは首を横に振った



「ううん、そうじゃないの。なんていうか、ハルくんはやっぱりハルくんなんだなぁって思っただけだよ」


「……えーっと、それって喜んでいいんですか?」


「もちろん。誉めてるんだから喜んでいいんです。それよりほら、そのココア早く飲まないと冷たくなっちゃうよ?」


「おぉっと、そうだった」



 少し慌てながらコップを手に取り、中身を口に流し込む。残された僅かな熱。お世辞にも温かいとは言えずヌルくなってしまったものの、美味いという事に変わりない。

 そう言えば、ここの飲み物には魔法関連の材料が使ってあると聞いた事がある。それの影響なのだろうか。そんな事を思いながら、俺は残りのココアを飲み干した。

 その時だった。木製の扉が開き、取り付けられた来客を知らせるベルが室内に鳴り響いた



「あっ、ハル。お待たせしました、みんなを連れて来ましたよ」



 遅れて聞こえるのは弥生の声。彼女の後ろにはリク、良太、鈴、ゆずが立っており、続々と入店してくる。そして俺達の座っていた席に腰を掛けた



「よっ。教室に顔出さなかったけど、身体は大丈夫か?」


「あぁ、念のために保健室に行ってただけだからな。問題無い。それより、お前の方は大丈夫か?あの後対戦したらしいけど……」


「へへっ、心配すんなって。ちゃんと勝っておいたからよ。楽勝だぜ、楽勝」


「ってアナタ、序盤は苦戦してたじゃない。攻略方法が分かってようやく勝てたって感じじゃなかったかしら?」


「う、うるせぇ!!あれはほら、手加減してただけなんだよ。だから実際は楽勝だったんだ、分かるか?」


「……色々ツッコめそうだけど面倒だからそういう事にしておいてあげるわ」



 ため息と共に鈴が苦笑を浮かべた



「さて、茶番はここまでよ。そろそろ本題に入りましょ。ハル」


「あぁ、そうだな」



 向けられた視線に合図的な意図を感じ頷いた。こういう時、仕切ってくれる彼女の存在はありがたい。普段、良太を相手にしているからこそ身につけられた能力だろうか。口には出せない事を思いながら、俺は説明を始めた



☆     ☆     ☆     ☆     ☆



「……それで氷河について知りたいんだけど、ゆず。お前は何かアイツについて知ってる事ってないか?」


「そうですねぇ。私もずっと日本に居ましたから、氷河さんについては分からない事だらけでして……すいません、力になれそうになくて」


「いや、知ってるかどうか知れただけでも収穫だったさ。ありがとな」



 その一言を最後に、沈黙が俺達を包み込む。

 結果を言ってしまえば、ゆずも特に知っている事は無かった。考えて見れば彼女がここに住んだ時間は俺達と極端な差はないのだ。当然と言えば当然かもしれない



「けど、どうするんだ?アイツに直接聞いてみるか?」


「それはないな。聞いたって何も教えてくれない事は目に見えてる」


「じゃあ、どうするんだよ?」



 良太の質問に唸りながら考え込んだ。すると



「おっ、集まってるなお前ら。ちょうど良い、探す手間が省けたな」



 聞き覚えのある声。振り返ってみると、そこには沼島先生が立っていた



「沼島先生……」


「お前らに話しがある。内容は当然、氷河についてだ」



 彼は頭を掻きながら、面倒くさそうにそう言った



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