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お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》Ⅱ
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第45話 自分のレベル

 初めての魔法学の授業から一週間が経過した。あの時倒れてしまった俺の身体は、今ではもうすっかり回復し日常生活を送っている。

 検査の結果、特別に異常があった訳でもなく、急に膨大な魔力をコントロールしようとした影響で負荷が限度を超えてしまったらしい。魔力コントロールに慣れていれば多少無理をしても「キツい」くらいで済むそうだが、俺の場合本格的に魔力を操った経験が少ない。それ故に意識まで失ってしまったそうだ。


 だけど今は、そんな事もなくて―――



「はぁっ!!」


「くっ……甘いぜ、水上!!≪アヴィル・トール≫」


「おっと!!」



 俺の振りかざしたカリバーを男子生徒が魔法で受け止めた。どうやら土で盾を作ったらしく、再び地面に手を付け、攻撃魔法を発動させる。

 しかしそのアクションは目に見て分かるものであり、気づく事が出来た。バックステップで後方へ移動し、攻撃を回避する。すると、元いた場所では小規模な爆発が発生した



「あのタイミングで避けられた!?」


「……≪ソニック・イレイザー≫」



 カリバーを相手に向けると、光り輝いた刃部分から細い光線が打ち出される。判断としてはなかなか早かったはずだ。俺はそう思いながら、柄を持った右手に力を込める。しかし光線は相手に当たらず、後方の壁に直撃した。

 小さな噴煙と共に壁が崩れ落ち、破片が地面に転がって行く。それはつまり、攻撃が外れたと言う事だった



「くそぅ!!今のは当たったと思ったんだけどなぁ。やっぱり判断速度が遅かったのか……?」


「いや、そんな事ないだろ。直前で俺の攻撃も避けてる訳だし。避けたって言ってもかなりギリギリだったんだぜ?もっと自分に自信持てよ」


「はは、ありがと。そう言ってもらえると助かる」



 俺と男子生徒は拳と拳をぶつけ、お互いに笑みを浮かべる。その時だった



「よーし、今日はここまでだ。お前ら、さっさと教室に戻れー」



 気合いの入っていない沼島先生の声が第1バトルフィールドに響き渡り、生徒達が教室へと戻って行く。さっきまで話していた男子生徒も「じゃあ、また教室でな」という言葉と共に走って行った。すると



「おーいハル!!」



 よく知る声が俺を呼び止めた。良太だ。彼はすぐ俺に追いつき、勢いよく肩を組んでくる。俺はその衝撃に少々身構え、苦笑した



「なぁなぁハル。さっきのバトルはどうだったんだよ?壁が壊されてたみたいだけどよ」


「アレか?アレは攻撃が外れたんだよ。結構良いタイミングだと思ったんだけどな。あっさりと避けられた」


「まぁ連続攻撃無しのターン制だもんな。相手の攻撃後の隙をいかに狙うかって授業らしいけど、警戒心マックスにしてりゃ、そりゃ攻撃も当たんねぇよな」


「お前も当たらなかったのか?」


「おうよ。その代わり後ろにあった壁は木っ端微塵に粉砕した!!」


「粉砕って……あの魔力壁がなかったら、ちょっとした大事じゃないか」


「だな!!まったく、魔法壁様々だぜ」



 普段は何も無いこの第1バトルフィールドだが、今回は魔法学の実習と言う事で、簡易的な魔法製の壁が用意されていた。ちなみに授業は「ランダムで2人組を作り、攻撃を仕掛け合う」というものだ。ルールとして


「相手の攻撃を避けたり防いだりした直後から、攻撃の権限が得られる」

「相手と自分が攻撃を1回ずつ仕掛けるとそれを「1ターン」として扱う」

「ターンは最大5ターンまで。5ターンが終了したら、1分の休憩を取り、もう1度最初から始める」


 というモノがあり、それに従って行っていた。その結果、俺は1度も攻撃に当たらず、当てられずといった感じだった。様子や話しを聞く限り、良太も同じだったらしい。

 すると隣から、不服そうな声が聞こえてきた。鈴だ



「ったくもう。「壊したー」って自慢する様な事じゃないでしょ?アンタあれの影響で、確実に先生に目を付けられてるわよ?」


「おっ!!それってアレか?俺の超パワーに注目してるって事か?」


「……アー、ハイハイソウデスネ。スゴイパワーデスネ」


「おい、棒読みで言うなよ!!」



 良太が俺から離れ、気づけばいつも通りのやりとりが行われていた。それが面白くて思わず「ぷっ」と噴き出してしまう。そしてそのまま「相変わらずだな」と言おうとしたその時、服の裾が引っ張られ自然と後方に振り向いた



「ん?どうした、弥生?」


「ハル。ハルだって笑える立場じゃないんですよ?」


「えっ?」


「さっきの≪ソニック・イレイザー≫って技、私初めて見ました。そんな技があるってお話も聞いた事ありません」


「あっ。そ、それはだな……その……」


「もしかして……また、新しい魔法でも作ったんですか?」


「…………」



 弥生の一言に俺の口が固まった。図星なのだ。≪ソニック・イレイザー≫は確かに、あの時俺が考え生みだした技だった。


 もちろん例外はあるものの、基本的に自分の所持魔法を他人に公開する事は無い為、いきなり新魔法を使っても気づかれる事はまず無い。それは今回も同様だ。教師という立場上、沼島先生なら気付かれるかも知れないが、彼の性格を考えるとその心配は無いと思った。だから、あの技を使った。

 しかし、弥生には気づかれているようだった。彼女は横に並んでため息をつき、ジト目をこちらに向けてくる



「もう、「魔力操作に慣れてない内は新しい魔法の発想、使用はなるべく控えるように」って、先生に言われたばかりじゃないですか。この前みたいに倒れちゃったらどうするつもりですか?」


「それは大丈夫だって。ゲージブレイクだって使ってないし、あの技自体魔力を多く使うようなものじゃない。それに、この一週間で魔法の使い方にだって大分慣れてきたんだ。倒れるような事は滅多に無いさ」


「むぅ、私はその滅多が心配なんですよ……」


「あぁ。分かってるって。ちゃんとその辺の事も考えるさ。ありがとな」


「ふにゅ……えへへ♪」



 お礼の意味を込めて弥生の頭を撫でると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。弥生が心配をしてくれている事はしっかりと実感している。もちろん、また倒れたいなんて思っているわけじゃない。

 しかしそんなリスクもある事を承知の上で、俺は「魔法」が好きだった。この時間が楽しかったのだ。だから必然的に自分の実力も試してみたくなるわけで―――



「けど、今の俺ってどれくらいの強さなんだろうな……」


「自分のレベル……気になるか?」


「えっ?」



 再び後方を振りかえるとそこには沼島先生がいた。いつも通り頭を掻き、面倒事に出会った様な表情をしている



「自分が果たしてどのレベルなのか。お前、気になるんだろ?」


「そりゃあ気になりますよ。どうせならもっともっと魔法をマスターしたいって思うじゃないですか」


「だったら、そんなお前にオススメにした事がある」


「オススメ……ですか?」


「あぁ。実は明後日の魔法学を他のクラスと合同でする事になってな。何をやろうか考えていたんだ。そこで、お前の願いを聞きいれて交流戦をしようと思う。だからお前、その時に全力で戦え」


「えっ?いや、全力で戦えって言われても……ゲージブレイクなんかはどうするんですか?一般生徒とのバトルでは基本的に使うなって事でしたけど……」


「バカ。それはあくまで「一般生徒との対戦時」の話しだろうが。つまり、相手が一般生徒で無ければ、使っても構わないと言う事だ」


「一般生徒じゃない……って事は、もしかして……」



 自然と出来あがった予測の答えを恐る恐る聞いてみる。するとそれを察したのだろうか。沼島先生は軽く頷き、不敵な笑みを浮かべた



「そうだ。他のクラスの特待生……「白銀氷河」との対戦だ。これなら思う存分戦えるだろう。けどまぁ、明日はしっかり休養を取っておけよ?ぶっちゃけアイツ、予備学園の頃から結構優秀だったらしいからな」



 右手を俺の肩に乗せ、彼がゆっくりと去って行く。そんな彼の姿を、俺は静かに見送った




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