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お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》Ⅱ
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第42話 特待生の集結

 今回は特待生が全員登場です。学園長に何故呼ばれたのか……


 本編をどうぞっ!!



 その男性は微笑みながら近くのイスに腰を掛けた。彼に、俺を含めた8人の視線が向けられる。その内3つはお化けのモノだ。つまり俺、陽花さん、良太、ゆず、そしてもう1人の男子生徒、合わせて5人が特待生と言う事になる



「(4人は知り合い……。見た事無いのはあの男子生徒だけか)」



 少し横を見て見ると、そこには唯一知らない生徒がいた。紺色のブレザーに黒い眼鏡。大人びた顔立ちをしており、一見すると上級生にすら感じてしまう。そんな彼は眼鏡を指で調節すると鋭い眼を改めて学園長に向けた



「それで学園長。俺達は何故ここに呼ばれたのでしょうか?何も問題は起こしていないと思うのですが……」


「あぁ、ごめんね。お説教とかじゃないから安心してくれ」


「それじゃあ一体……」


「まぁまぁ、とりあえずはこれでも食べて落ち着こうじゃないか。≪レキュリ・レイション≫」



 学園長が指をパチンと鳴らした。するとテーブルの上に光が生まれて1,2秒で弾け飛び、さっきまで無かったはずの「和菓子」が出現した



「え、えっとこれは……和菓子……ですよね?」


「あぁ、空間転移魔法の1つさ。棚に入っていた和菓子ケースをここに移動させたんだ。キミ達は確か全員日本に在住経験があっただろう?全く同じ……と言う訳ではないが、懐かしい味を楽しんでくれ」


「ありがとうございますっ!!それじゃあ早速……私、お団子がいいです!!」


「あっ!!じゃあ、ぼくはおまんじゅうがいい!!」


「そうね、あたしは……ってちょっとアンタ達、いきなり遠慮なさすぎじゃない!?」


「ハッハッ、構わないさ。元気って言うのは良い事だからねぇ。キミもよかったらどうかな?」



 鈴の言葉は抑止力にならず、弥生とリクがそれぞれ好きな和菓子を手に取った。それを見て学園長が笑い、鈴にもお菓子を勧めている。雰囲気としては温かいものだった。しかし、それとは対照的な冷たい瞳が、ふと視界に入ってくる



「学園長、用件は一体なんですか?唯のお茶会なら俺は遠慮させてもらいます。やらなければならない事があるので」



 男子生徒は苛立ちを込めた声でそう言った。その眼はさっきと少し変わって、睨みつけている様にも見える。

 まるで敵視でもしているかのような態度。それは見ていて良いものではなかった。けれども学園長は、そんな彼に対しても笑顔を絶やさず笑っていた



「ハッハッ、まぁ落ち着いてくれ氷ちゃん。これからする話しはキミにも関係のある事だ。いや、むしろキミが興味を持ちそうな話題だと思うがね?」


「……それは、本当ですか?」


「あぁ、だから一旦話を聞いてくれるかい?」


「……とりあえず、その呼び名は止めてください。俺には「氷河」って名前があるんですから」


「ハハッ、分かったよ。氷河くん」



 学園長の言葉に「氷河」と呼ばれた少年が溜め息をついた。どうやら了承したらしいが、表情からして快くという訳ではないのだろう。

 それを察してか、苦笑いで納得した学園長が素早く話しを進め始めた



「さて、今回キミ達をここに呼んだのは「ディレクトリ」について話しがあるからだ。キミ達はあれを貰った後、ラグさんや京ちゃん、シルキさんに預けているね?」


「はい、確か京也さんは「調節するから」って言ってましたけど。もしかして……」


「そう。調整したディレクトリが私の元へ届いたんだ。だからこれをキミ達に渡そうと思ってね。どうだい、氷河くん。キミが興味を持っている話題じゃないか?」


「……えぇ、確かに。これからちょうど受け取りに行こうと思っていた所です。ありがとうございました」



 得意げな学園長が気に入らないのか、氷河は少しムッとした表情を見せた。しかしすぐに表情を切り替え、冷静に右手を差し出した 



「では、早速ディレクトリを……」


「おぉっと、今はまだ渡せない。なんせまだ、ちゃんとした説明をしていないからね」


「説明……?もしかしてあのシステムの説明ですか?」


「あぁ、その通り。キミは予備学園で、ゆずちゃんは個人事情で知っているだろうけど、これはディレクトリを渡す際に必ずやってくれって言われてる事だからね。悪いがきちんと聞いてもらうよ」


「…………」



 氷河が無言で目を瞑った。それを見た学園長は1度「コホン」と咳ばらいをし、今度はこちらに視線を向けてくる



「今回、キミ達に話すのはディレクトリの限定結晶破壊―「ゲージブレイク」というシステムについてだ」


「ゲージ……ブレイク……?」



 彼が右手を前に出すと小さな光が出現し、一瞬で杖へと変化した。先端には青い球体がついており、その周囲は銀色の金属で囲われている。それに対して柄部分は木製だ。

 様子からして学園長のディレクトリなのだろう。いかにも魔術師が持っていそうな、そんなイメージだった



「ディレクトリは自身で魔力を生成しているんだが、その魔力はこの「魔力ゲージ」部分に蓄積され、一定量以上になると「1ゲージ」として保存される。この「1ゲージ」を解放して、使用者の魔力を底上げするシステム、それを「ゲージブレイク」と呼ぶんだ」



 視線が球体と柄の結合部分に視線を向けた。そこにはメスシリンダーの様なメーターが備えられており、10段階に分かれている。よく見て見ると6段階目までが赤く光って、その残りの4段階は半透明だった



「あの学園長?メーターみたいなのが付いてるんですけど、それは何ですか?」


「これはハルちゃんが言った通りのメーターだよ。魔力ゲージはいくつかの段階に分かれているんだ。ゲージブレイクする時には最低1ゲージ消費するけど、一気に2ゲージ使う事だって出来る。つまり、段階が多ければ多いほど一気に使えるゲージ数が増えるってことさ」


「使うゲージ数が増えれば、解放出来る魔力も多くなるんスよね?」


「その通り。だから、全部のゲージを一気に使う「フル・ブレイク」なんてすれば、かなり強力な魔力が得られるはずだ。しかし、その分コントロールが難しくなってしまうし、ゲージを全部使ったら新しいゲージが溜まるまで、ゲージブレイクも出来なくなる」


「つまり、フル・ブレイクは最終手段ってことですか」


「そういうことだ」



 頷いた学園長が右手に力を込めると、ディレクトリは光の粒子へと変化し空中に消えた。そのまま目の前のカップを手に取り、温かさを確かめてから口に含む。それを終えると、彼は一度小さくうなずいた



「ふむ、少し長くなってしまったが説明は以上だ。もちろん、これで全てを知ってくれとは言わないが、「ゲージブレイク」の存在は頭の中に入れておいてくれ。これからディレクトリを使った戦闘があれば、ほぼ間違いなく使うであろうシステムだからね。少なくとも、知っておいて損はないはずだ」


「分かりました」


「うむ。それではディレクトリを渡していくとしようか」



 学園長が指をパチンと鳴らすと俺達の前に光の球体が現れた。それはさっき学園長がディレクトリを出現させた時と同じように形を変え、武器の形状へと変わっていく。

 俺の前で光は剣に変化していた。刃は無く、鍔や柄の部分のみという状態。俺はそれに手を伸ばし、持ち手部分を掴んでみる。すると光が弾け飛び、機械的なボディが姿を現した



「カリバー……Ⅱ(セカンド)……」



 握った感覚は以前と全く変わり無かった。しかし外見には少しばかり変化がある。

 刃の生成される部分と持ち手部分の結合部にはメーターの様なモノが取り付けられていた。中身はまだ何もなく半透明なままだが、そこが「魔力ゲージ」である事はすぐに分かった。段階は全部で5つに分かれている



「俺のゲージは5か」


「おっ、ハルも5段階なんだな。俺もだ」


「私もだよ。えっと、ゆずちゃんは……」


「はい。私も5段階です」


「今回は全員が5段階だ。この段階はこれからキミ達の実力に応じて増えていくからね。頑張ってくれ」



 その言葉に俺達4人が頷いた。氷河は視線を送るだけだったようが、それは了承を意味しているのだろう。それから彼は立ちあがり、出入り口へと歩いて行く



「学園長、ありがとうございました。俺はこれで失礼します」


「……氷河くん。そのディレクトリは使用者がちゃんと扱えると判断したからこそ渡している。あまり……無茶はしすぎるなよ」


「…………失礼します」



 愛想の無い返事を返し、氷河が部屋を後にした。それを見た学園長が「やれやれ」とため息をつき苦笑する。どうやら氷河の扱いに苦労している様だ



「さて、これで用件は終わりだが、もしよかったら食べて行ってくれ。コーヒーのおかわりも用意してあるからね」


「あっ……はい……」


「ありがとうございますっ!!あむっ!!…………んん~、これ美味しいですよ、リク!!」


「これもこれも!!すーーーーーっごく美味しい!!」



 俺の隣では弥生達がお菓子を食べ始め、リク達とそれに関してのトークを始めている。それを見た陽花さんやゆず達もお菓子を手に取っていた



「あの……学園長?氷河って……」


「彼に関しては、まぁその内分かると思うからさ。今は気にしないでくれ」


「は、はい……」



 顔の前で両手を合わせてそう言った彼に、俺は頷くしかなかった




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