第41話 学園への初登校
今回は初登校!!いよいよ学園生活のスタートです。
更に弥生の衣装にも大きな変化が……。だってほら、学園ですからね!!つまり制服!!想像(妄想)たっぷりしてもらえると嬉しいです。
その日の朝はいつもより少し早めの起床で、眠気がまだ残っていた。瞼が重く、瞬きをする度に睡眠の快楽が押し寄せてくる。もう少し寝ていたい。布団の誘惑がそんな事を思わせてくる。しかし、枕元に置いていた紙を見て意識が自然と覚めてきた
「……仕方ない。準備するかな」
自分に向けたその言葉をきっかけに、ベットから降りてクローゼットの扉を開く。そう、寝ているわけにはいかないのだ。
何故なら今日は俺の、俺達の新しい「学校生活のスタート」なのだから―――
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取り出した服をベットに置き俺は着替えを始めた。小さな木製のドアからは、すでにテレビの音がする。どうやら弥生は起きているようだった
「今日は起きるのが早いな。まぁ俺としては寝坊する事が無くなるから助かるんだけど」
「ハルー、ハルー。起きてますかー?入っちゃっても大丈夫ですかー?」
「あぁ、もう起きてるし、入っても大丈夫だぞ」
着替え終わったタイミングで弥生が部屋に入ってきた。既に指定された制服に着替えており、身なりもしっかり整えてある。恐らく今日が楽しみすぎて、予定よりも早起きしてしまったのだろう。それが実に彼女らしかった
「おはようございます、ハル。眠気はもう覚めましたか?」
「おはよう。眠気に関してはまだだな。あと数時間は布団に潜っていたいって言うのが本音だ」
「あはは、残念ですけどそれはダメですよ。決められた時間に間に合わなくなっちゃいますからね」
弥生が口元を押さえ苦笑した。割りと本心だったのだが、それが叶わないことは俺自身承知している。きっとそれを考慮した上で、弥生も苦笑いをしたのだろう
「……あっ、ハル。襟元がおかしくなっちゃってますよ?」
「えっ、そうか?」
「はい。ちょっと待ってて下さいね」
正面から近づいて来た弥生が背伸びをして、俺の首に手を回した。シャンプーの良い匂いが鼻腔をくすぐり、少しドキドキしてしまう。そして襟を整え終えると、背伸びを止め俺の前に立った弥生が首を傾げた
「よし、出来ました。ハル、違和感はありませんか?」
「あぁ、バッチリだ。ありがとな、弥生」
「どういたしまして。さて、ご飯は作ってありますから、早く食べちゃいましょう」
「確かに。せっかく作ってくれたんだ。暖かいうちに食べるのがベストだよな」
弥生がコクンと頷き、テーブルに向かって歩いて行く。そんな彼女の服装は昨日見たモノと違っていた。
純白のブラウスを着用ており、その上からポケット付きの黄色いカーディガンを羽織ってた。胸元のリボンとスカートはピンクと白のチェック柄になっていて、女の子らしい印象を受ける。そんな彼女の姿に思わず
「……可愛いな」
「えっ……?」
「その制服だよ。今までのワンピースも良いと思うけど、それもよく似合ってる。だから可愛いなって言ったんだよ」
「そ、そうですか?……えへへ、ありとうございます♪今日はサービスで私の分のタコさんウインナー、ハルに1つあげちゃいますね」
「サービスって……どうした。誉められたから機嫌でもよくなったのか?」
「はい、とってもよくなりましたよ♪」
少しからかってみたつもりだったが、弥生はあっさりと認めて楽しそうに歩いて行く。それはちょっと意外な反応だった
「(まぁ、本当の事だし。良い……のかな)」
妙な恥ずかしさを感じながら、俺は自分の部屋を後にした
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あー、終わったー!!」
両手を空に向けて伸ばして言った。隣にあるのは地面に刺さった鉄製のシャベル。それは日本にあるモノと変わらず、使い勝手にはさほど苦労しなかった。
しかし、疲れていないわけではない。何故なら―
「お疲れ様ですよ、ハル。はい、お茶です」
「おぉ、ありがとな弥生」
彼女から受け取った水筒に口をつけ中の麦茶を体に流し込む。今日が特別暑いわけではないが、それはいつも以上に美味く感じた。恐らく運動をした後だからだろう。頬を伝う汗を感じながらそんな事を思っていた
「でもまさかだったよな。初登校日の初授業が「荒らされたグランドの整備」になるなんて」
「確かに意外でしたよね。けど、いいじゃないですか。警戒の為授業は午前中のみ。言ってみればハルの大好きなおサボりと同じ状況ですよ?嬉しくないんですか?」
首を傾げる弥生に思わず「やれやれ」と言ってしまいそうになった。どうやら「サボり」についてまだしっかりと理解が出来ていないようだ。となれば、俺が説明して分かってもらうしかないだろう。そんな妙な使命感が生まれた
「午後からは学園長に挨拶しないといけないから帰れないだろ?それに授業が午前中だけなのは皆一緒だ。サボりはサボっているヤツらだけが自由を得ることに意味が生まれてくる。だから、今回のケースはサボりなんて呼べないのさ」
「……へぇ、意外な所でこだわりがあるんですね。流石、おサボりのプロさんは一味違いますねぇ」
「こ、こら。プロなんて言うなよ。その言い方だと、いつもサボってるみたいに聞こえるだろ?」
「けど、おサボりの機会はかなり多いですね?実はプロって名乗っちゃっても問題ないくらい手馴れてますよね?」
「えっ、そ、それは……あっ!!じ、時間だ!!もう学園長の所に行かなきゃだな!!」
「もう、そうやってすぐに誤魔化すんですから」
弥生に溜め息をつかれながら、俺はシャベルを片付ける。すると近くにいた男子生徒が台車を引いて駆け寄ってきた
「春人。それ乗っけろよ。全部まとめて持ってくからさ」
「あぁ、ありがと。助かるよ」
「いいっていいって。それより学園長の所に行くんだろ?急げよ。良太とゆずはもう行ったぞ?」
「げっ、ホントだ!!それじゃあすまん!!あとはよろしく頼む」
「おうよ」
シャベルを男子生徒に任せ、弥生と共に更衣室へと走って行った
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ハァ……ハァ……す、すいません。遅れました!!」
「遅れましたー!!ごめんなさい!!」
息を切らして俺と弥生は学園長室に向けて叫んだ。それに反応し、中にいた数人の視線が向けられる。その中には陽花さんや良太、ゆずやオバケ達の姿があった。良太に関してはこちらを見て「ニヒヒ……」と笑っている
「(くそっ。良太のヤツ、これが分かってて俺だけ置いて行きやがったな……)」
「おぉ、よく来たねぇ。遅れちゃったけど、まぁ問題無いよ。ハルちゃんに弥生ちゃん」
「えっ?は、ハルちゃん……?」
呼び慣れない名前に驚きながら見てみるとそこに居たのは1人の男性だった。
茶色のスーツを着たやせ形の体系。上着のボタンは留めておらず、中にはYシャツを着ており青いネクタイを付けている。明らかに生徒の制服では無い。となれば、彼が俺達を呼びだした張本人「学園長」なのだろう。
そんな彼は俺の言葉に反応し「うんうん」と頷いていた
「だってキミ、特待生の水上春人でしょ?だからハルちゃん。オーケイ?」
「いや、理解は出来てますけど……にしてもハルちゃんって……」
「まぁいいからいいから。ほら、他の子達みたくそこに座って」
「は、はい……」
半ば強引に話しを進められ、良太の隣に座った
「へへっ、ナイスだったぜハル。多分ウケはバッチリだ」
「ウケとかそういう問題じゃない。ったく、お前あとで覚えてろよ」
小声の会話が終了し、視線を改めて学園長に向けて見る。すると彼は俺達の前に立ち、自己紹介を始めた
「それじゃあ特待生のみんな、初めまして。僕がこの学園長「一之瀬武信 」だ。まぁそう堅くならず、よろしく頼むよ」
彼は柔らかい笑みを浮かべながら、そう言った