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お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》Ⅱ
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第40話 観覧車ハプニング

今回で遊園地巡りが終了です。


最後はやっぱりあの遊具!!ハルの意外な弱点が明かされ、更にちょっとエッチな展開も……




「ん~、おいしいですねっ!!」



 弥生が満足そうに言った。手に持っているのは、数分前に屋台で買ったソフトクリーム。まだあまり溶けておらず、形を維持している。きっとまだ冷たさが残っているのだろう。一口食べるごとに、それらしい反応を見せていた



「そんなに美味いのか、それ」


「はい。と言うか「遊園地で食べる」っていうシチュエーションが良いんですよ。なんだか特別って感じがしませんか?」


「特別か。そりゃまぁこんな高い場所で食べる事はあまり無いだろうから特別と言えば特別だけど……」


「えーっと、そう言う事じゃないんですけどねぇ」



 弥生の力説には申し訳ないが、俺の解釈は間違っているらしい。そんな俺に苦笑いをして、弥生は再びソフトクリームを頬張った。



 ボートを乗り終えて、俺と弥生は色んなアトラクションを回った。その中にはパンフレットに載っていない比較的規模の小さなモノもあり、冒険感覚で楽しめていた。

 そして、今乗っているのは巨大観覧車。そろそろ帰らなくてはいけないと言う事で、弥生が最後に希望したアトラクションだ。人気の遊具と言う事で待ち時間が長いと思ったのが、閉園時間が近い事もあり案外すんなりと乗れた



「それにしても観覧車か。最後にコレに乗りたいなんて、なんだか弥生らしいな」


「だって観覧車ですよ?遊園地に来たら是非乗りたいじゃないですか。私でなくても、そう思う人は多いと思いますよ?」


「まぁ遊園地のアトラクションって言ったら真っ先に観覧車を思いつきそうだからな。実際俺も乗りたいとは思っていたし」


「でしょう?」



 その一言の後、弥生がコーンカップを口に入れソフトクリームを食べ終わる。ゴンドラから下を見て見ると、結構な高さになっていた。係員の人が小さく見える。流石は巨大観覧車。大きさに関しては言えば日本では見た事のないレベルだ。「魔法」という力で補助ができるからこそ、この規模での建設が実現できたのだろう



「ところで弥生、今日は楽しかったか?」


「はい、とっても楽しかったですよ。ハルはどうでしたか?」


「俺か?俺も楽しかったよ。特に、お化け屋敷で怖がる弥生を見れたからな」


「なっ!!あ、アレはしょうがないじゃないですか!!後ろから急に声を掛けられるんですよ!?怖がらない方が不思議です。それにハルだって、ジェットコースターが動いてる時ずっと固まってたじゃないですか。もしかして、怖かったんじゃないですかぁ?」


「は、はぁ?あ、アレは別に固まってたんじゃなくてだな……そう、空を飛ぶってこんな感じかなって考えてたんだ。これから飛ぶ機会があるかもしれないからな、その為の練習だ、練習!!」


「へぇー。その割には顔が真っ青でしたけど……?」


「うっ、そ、それは……」



 予想外の展開に自然と言葉が出てこなくなる。アトラクションに夢中で気付かれていないと思ったのが、思っていたよりも観察力があったらしい。この状態でこれ以上言い訳を出来る訳もなく、俺は両手を挙げ、ため息をついた



「……分かった、降参だ降参。認めるよ。俺はジェットコースターが苦手だ。まぁ恥ずかしい話しではあるけどな……」


「ふふっ。けどあの時のハル、とっても可愛かったですよ。いつもとは違っていて、なんだか新鮮でした」


「か、可愛いって言われてもなぁ……」



 弥生なりのフォローなのかもしれないが、女の子である彼女に言われると自然と複雑な気持ちになってくる。

 しかしそれは辛いものでは無かった。弥生が俺の新たな一面を知っても、それを素直に受け止めてくれる。もしかしたら、彼女の様な自分以外の人間に受け入れられる事が嬉しかったのかもしれない。すると



「あっ!!ハル、見て下さい!!夕日がすっごく綺麗ですよ」



 弥生が唐突に席を立った。どうやら外の景色に興奮しているらしく「わぁ~♪」と声を上げ、瞳をキラキラ輝かせている。一体どんな光景を見ているのだろうか。そう思った俺は微笑しつつ振り向こうと身体を動かした。その時だった



「きゃっ!?」


「……っ!?」



 ゴンドラが激しく揺れ、目の前にいる弥生がバランスを崩した。咄嗟に視線を彼女に向け身体を支えようと手を伸ばす。

 しかし揺れの影響で俺の身体は後ろに引き寄せられる様に移動した。そして



「「あっ…………」」



 俺と弥生、二人の声が綺麗に重なった。俺の上に弥生が乗っているこの状況。どうやら彼女はこちらに向かって倒れてきたらしい。だが、幸い俺がクッションになった事で怪我は無いはず。だとすれば、とりあえず安心だ。

  ……っと、頭の中で現状整理をすると、今度は両手に不思議な感覚があった。少し温かいそれに、何だろうかと思いながら、少し力を入れてみる。すると



「ひゃうっ!?」



 可愛らしい声が室内に響き渡った。それと共に柔らかい感触を感じ、頭を再び回転させる。「上に乗った弥生」、「動かすことで響き渡る可愛らしい声」。そして、「柔らかい感触」。

 その3つから導き出される答え。それは―



「(……ま、まさかっ!?)」



 俺は恐る恐る手元に視線を向けてみた。すると、弥生の胸部と俺の手がピッタリと接触している。絶句した。事故とは言え、弥生の胸にさわってしまったのだ。

 少し怯えながら今度は弥生の方を見てみる。恐らく叫ばれ叩かれるだろう。それが俺の予測だった。しかし



「…………」



 弥生を見て、言葉を失った。



 澄んだ瞳。


 

 紅く染まった頬。



 艶めく唇。



 夕陽に照らされた彼女はとても綺麗で、とても可愛らしくて。いつもとは違う彼女を見て、思わず息をのんだ。微妙にあたる吐息に緊張感が増していく


 彼女はどうなんだろうか。ずっと黙ったまま、赤くなったまま、俺を見つめている。


 そこには不思議な空間が生まれていた。まるで時が止まったかのように、この時間が永遠に続くようにすら思えてしまう。そんな雰囲気だった。

 しかしそれは思った時、急遽終わりを告げた。うっかり右手に力を入れ、心地よい感触を改めて味わってしまったのだ。その瞬間に現状が頭の中で再認識され、俺の身体が勝手に動いた



「あっ、え、えっと……ご、ごめん!!」



 慌てて離れ距離をとった。心臓がまだバクバクと鳴っている。うるさかった。だけどそれは俺の意に反して鳴りやまない。すると、ハッとした弥生が顔を伏せても、もじもじとし始める



「い、いえ。助けてくれたわけですから……」



 怒っている様子では無かった。だけど、なんだか妙に大人しい気がする。

よく考えてみると、いくら事故とは言え胸を触られたのだから恥ずかしいのは当たり前だ。助けるつもりがあったにしても、俺が謝るべきなのは明白だった



「本当にごめんな。助けようと思ったんだけど、その……今のは事故で……。なんて言っても言い訳にしかならないけど……ごめん」


「……大丈夫ですよ。ハルの気持ち、分かってますから。それに私は別に嫌気は感じてません」


「えっ……?」


「いつもより近くでハルを見れて、私は……その……嬉しかったですよ。もちろん、私の胸を触った事は忘れませんけど」


「いや、だからアレは……」


「……ハル」



 言い訳をしようとする俺を無視して弥生が距離を詰めてくる。そしてそのまま抱きつき上を見上げて、真っ直ぐな瞳を俺に向けた



「……ありがとうございました♪」


「―――ッ!!」



 そんな弥生に再びドキドキしてしまったのは、言うまでも無かった




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