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お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》Ⅱ
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第36話 VSシルキ

「さぁ、始めようぜ」



 巨大なハンマーを構え、彼はニヤリと笑った。何か悪意ある企みがある訳ではないのは明らかだ。純粋にこれから始まる戦いを楽しみにしている。そんな彼に、俺は小さくため息をついた



「あの、シルキさん?ホントにやるんですか?俺、実際に戦った事って無いんですけど……」


「けど、ゲームはやったんだろ?だったら、その要領でやれば何とかなると思うぜ?」


「そっちでもバトル自体はしてません。前日にちょっと動いたくらいですよ」


「問題ねぇ。ある程度動き方を知ってるんだったら、後は「想像する事」が大事なわけだからな。まぁなんだ、考えるよりも慣れろって事でやってみようぜ」



 中断を期待した言葉も、今は彼を興奮させる材料にしかならないようだ。その証拠に所持したハンマーを振り回し、体を慣らしている。京也さんやキノさんは苦笑い、弥生は元気に応援してくれていた



「(出来れば応援よりも、シルキさんを止めて欲しいんだけどな)」



 内心でそう言いながら、手にした武器を見た。あるのは剣型のディレクトリ。名前はまだ聞いていないが「とりあえず使ってみろ」との事だった。特に目立った構造は無い。シンプルな剣。あえて言うならば、刀の様な細型ではなく、ある程度の大きさを持った大剣ということだろうか。重さは予想よりは軽く、ある程度なら扱えそうではある



「どうした?その剣が……気になるか?」


「当たり前じゃないですか。さっき渡されたばかりのディレクトリなんです。気にならない訳がありません」



 この剣との出会いはついさっき、このバトルフィールドを訪れる直前だった



☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 バトルフィールドへ向かうと言ったシルキさんが俺だけを別の部屋へと案内した。そこにはさっきとは比べ物にならない程大量の武器が保管されていた。1つ1つが四角形の魔法壁に包まれており、大切に置かれている。一体何故ここに連れてこられたのだろうか。一瞬そう思ったが、予測は案外早く出来た



「もしかして、俺のディレクトリですか?」


「おうよ。この中から選んでもらおうと思ってな。数も種類もかなりある。きっと自分好みのヤツが見つかるはずだ」


「なるほど……。けど俺、どんな武器が自分に合うかなんて知りませんよ?選ぶ基準なんかも全然分かりませんし」


「だろうな。だからそこは「勘」で良いと思うぜ」


「勘……ですか」



 正直、ちょっと呆れた。この状況で「勘」と言いだすなんて。そんな適当なやり方で良いのだろうか。そう思った俺は、自分でも分かるくらい怪しいモノを見る目でシルキさんを見た。するとそれに気付いた彼が得意げに「へへっ」と笑った



「そうだ、勘だ。もっと言えば感覚で良い。自分に合いそうっていう想像で良いんだ。そうすりゃ、その想像はお前に力をくれるだろうよ」


「は、はぁ……」



 よく分からない説明だった。するとシルキさんは痺れを切らしたのか、俺にもう1つのアドバイスをしてくれる



「そうだな……。だったら右手を出してみろ。力を込めて……な」


「力を込める……ですか」



 俺は右手を前に突き出し、力を込める。

 その時だった。その右手に何なのか分からない謎の力を感じ、反射的に拳を軽く握り締めてみる。

 そんな俺を見て、シルキさんが嬉しそうに笑った



「そんな感じだ。そのまま、力に意識を集中する。それが出来たら、そのままディレクトリ達を見渡してみろ」


「……」



 シルキさんに言われた通り、力を感じても握りしめず、それを維持させる事に集中する。

 そしてそれが意識を外しても出来るようになった頃、辺り一帯を見渡した



「ん…………っ!!」



 すると、不思議な事が起きた。

 見渡したディレクトリの中に、光り輝くモノが見えたのだ。ただ1本だけ、その剣は謎の光を放ちこちらに何かを訴えてくる。味わったことのない感覚だった



「あっ……」


「どうやら、見つけたみたいだな」



 俺の視線を読んだのか、シルキさんは見ていた剣を手に取り、俺に渡してくる



「……っておい、まさかコイツに選ばれるなんてな。春人、お前、ますます面白いヤツだな」


「えっ?俺、何もやって無いと思うんですけど……」


「へへっ、まぁその内分かるだろうよ」



 そう言って、シルキさんが俺の手に持たれた剣を突っついた



「そう言えばシルキさん、このディレクトリの名前って無いんですか?あるなら知っておきたいんだけど……」


「おっと。そいつは教えられねぇな。ディレクトリが主を認めた時、きっと分かるはずだ。だからそれまで……待ってな」


「は、はい……」



☆     ☆     ☆     ☆     ☆



「ってわけだけど、認めるって……コイツに意識なんてあるのか?」



 目の前の疑問は未だ尽きない。そんな俺を見てシルキさんがハンマーを構えた



「まぁなんだ。難しい事考えず、とりあえず戦おうぜ。そうすれば、その内分かってくるだろうからよ」


「……それもそうですね」



 彼の言うとおりだった。迷っていても仕方ない。それは直感的に分かった。

 だから俺はディレクトリを構え、シルキさんの瞳を見る



「よし、準備はいいな?キノ、頼むぜ」


「もう……それじゃあ、バトル、開始」



 呆れたキノさんが右手を掲げ、戦いが始まった。

 しかしシルキさんは動きを見せず、その場に立ってこちらの様子を窺っている



「さぁ、見せてくれよ。お前、全く魔法が使えないわけじゃないんだろ?」


「知ってるんですか。だったら……行きます。≪イマジネクト≫」



 魔法名の宣言と共に手のひらに輝きが集い、一つの魔法が発動する。しかし



「……あれ?」



 光は集っただけで、後に形を失ってしまった。魔法の失敗。やはり俺一人でこれを使うのは難しいらしい



「くそっ、やっぱり弥生のサポートが必要か……」


「なるほど、≪イマジネクト≫か。ラグのヤツ、面白い魔法を教えやがったな」


「シルキさん、知ってるんですか?」


「あぁ、ソイツは「創作魔法」ってんだ。ラグの使う≪クリエイト≫に比べると初期的な魔法だが、それでもいきなり自由に使える魔法じゃねぇな」



 どうやら、この≪イマジネクト≫は運用の難しい魔法らしい。

 ラグさんが最初に教えてくれた魔法だから初心者向けなのかと思ったのだが、あくまで「創作魔法という難易度の高い魔法の中では」初心者向けと言う事らしい



「それにしてもいきなり創作魔法とはな。ラグの野郎、かなり春人に期待してるじゃねぇか。となるとこのバトル、ますます楽しくなってきやがったな」


「えっ?」


「今度はこっちから……仕掛けるぜ!!」



 戦闘中の会話が途切れ、シルキさんが向かってくる。その速度から察するに逃げ切る事は出来ないようだ。ならば、俺の選ぶ選択肢は一つしかない。

 不安を出来るだけ振り払い、両手に力を込めた



「(……やってやる!!)」


「いくぜ!!≪プラッシュハンマー≫」



 鉄槌は輝きを放ち、俺の元に振り降ろされる。

 しかしそれは予測済みな動き。刃を盾にして攻撃を受け止めた。

 その瞬間、襲い掛かる衝撃が手足に大きな負荷を与え、直撃を免れたにも関わらず、自分がダメージを受けた事を実感させる



「お、重い!?」


「おっ、受け止めたな。やるじゃねぇか。だったら……コイツはどうだ?」



 嬉しそうに笑ったシルキさんが左手をハンマーから離し、拳を握りしめる



「≪ティベルト・バースト≫」



 それを迷い無く、刀身にぶつけた。

 単純にエネルギーを纏わせ、殴りつける技だったのだろう。接触の瞬間に小さな爆発を起こし、シルキさん諸共爆煙に包まれる。

 そして、耐えきれなかった俺の身体は飛ばされてしまった



「くっ!!」



 空中で何とか態勢を立て直し、上手く地面に着地する



「……すごいな」



 案外身体は動くものだった。普通こんな動きが出来るわけがない



「(あの爆発でダメージを負ったわけでもないし、身体も自分が想像した様に動ける。身体能力が上がってるのか……?)これなら……少しは戦えるかも」



 本心が漏れたその時だった。

 爆煙が風によって振り払われ、「彼」がその姿を現す。どうやら俺と同様、ダメージは一切負っていないらしい



「へへっ、何だかんだ動けてるじゃねぇか」


「えぇ、かなり疲れますけど。それでも、予想以上に動けますね」


「だろ?それじゃ……続行だな!!」



 いきおいのある言葉を放ちながら彼が満面の笑みを浮かべる。

 俺は、剣を剣を握りしめていた




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