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お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》Ⅱ
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第31話 到着!!ファンタジア学園


「おっきーい!!」



 リクが言った。俺達の目の前にあるのは巨大な一つの門。その横は塀に囲まれておりまるで屋敷のようになっていた。門の先には大きな建物がいくつかあり、とても賑わっている。

 ファンタジア学園。魔法を学ぶその場所はとても広大だった。ラグさんによると生徒数がとても多く、魔法の実習でもそれなりに広い場所が必要になる為この広さらしい



「ここがファンタジア学園……。ここが、魔法の学び舎……」


「うん。ここが私たちの新しい学校、なんだよね」



 陽花さんのその声は明らかに弾んでいた。それはもちろん俺だって変わらない。さっきからずっと体は熱いし、今すぐにでも飛び込んで行きたいくらいの衝動に駆られている。頭の中では色んな期待が巡りパンクしそうになっている。ハッキリ言ってしまえば、かなり胸の高鳴りを感じていた



「ハル、早く行きましょう。連絡はラグさんが入れてくれてるって話しでしたし、きっと先生達待ってますよ」


「あぁ、そうだな」



 ラグさんは用事があるとかで俺達をここに案内した後、どこかへ行ってしまった。残されているのは俺と弥生、陽花さんとリクの4人。良太と鈴はちょっとした用件で明日ここに来るらしい。詳しいことは教えてもらえなかったけど、アイツならきっと大丈夫だろう。そんな不思議な安心感があった



「ねぇーねぇー、ここってどーやって入るの?この門、しっかり閉じちゃってるよ?」


「そう言えばラグさんに聞いてなかったな。流石に自力で開けるのはムリそうだし、どうしようか」


「あっ、それならね。門を少し押してみればいいんだって」


「門を押す……?こんなに大きな門をですか?」


「うん、そうすれば開くってラグさんが言ってたよ」



 本当だろうか、と思わず疑ってしまった。門は俺達の数倍以上の大きさでそれなりに重いはずだ。それが少し力を加えたぐらいで開くとは、とても―



「……えいっ」


「って……えぇ!?」



 陽花さんが右手で軽く押すと門は大きな音を立てて開いて行った。唖然とする俺や弥生。そして門は完全に開かれ、通行可能状態になった



「うわぁ、ホントに押しただけで開いちゃった。すごいね」


「そ、そうですね。これもやっぱり魔法の力……なのか?」



 不思議に思ったが、思えばこの島は姿を消して周囲国から見えないように細工をしているくらいだ。よく考えればこれくらいは出来てもおかしくない。きっとこれも数日後には慣れて新しい「普通」へと変わるのだろう。それは嬉しくもあり、なんだか悲しい気もする



「けど、いきなりこのレベルって……この学園、かなりスゴイって事ですよね」


「少なくとも魔法の概念がない場所から来た私たちにとっては驚きの連続なんだろうね。まぁ今はそれをしっかりと楽しんで、感動しておこう?きっと貴重な体験だから」


「あはは、確かにそうですね」



 そう言って俺達は学園への一歩を踏み出した



☆     ☆     ☆     ☆     ☆




 学園に入ってすぐ、門は閉じた。左右には森林があり、目の前には真っ直ぐな道がある。その先は噴水になっており、それを中心として前後左右、更にはその間々に道が分かれていた。その数合計で8個。噴水の周りにはいくつかベンチがあり、座れるようになっている



「……やっぱり広いなぁ」



 それが最初の感想だった。噴水までの距離は短いものの校舎がいくつもあり、よく分からない建物も多い。恐らくこの範囲に家を建てればちょっとした住宅地が出来てしまうのではないだろうか。そんな冗談すら考えてしまう



「……いや、ここならそれすら冗談にならない気がする」


「ん、ハル?どうかしましたか?」


「いいや、何でもないさ。それよりほら、早速行ってみようぜ」



 そう言って俺達は歩き始めた。周囲では色んな生徒がこちらを珍しそうに見ている。見たところ、外見は俺達と変わり無いようだった。

 服に関しては言えば男子は殆どが紺色のブレザーだ。女子はそれ以外にも橙色のセーターなど様々。たまにその上にダッフルコートを着ている女子がいるといった感じだった



「わぁ、ハル見て下さい。どの制服も可愛いですよ」


「あぁ、そうだな」



 弥生が女子制服を見てはしゃいでいる。色んな制服の生徒がいるものの、確かどれも可愛い。きっと弥生や陽花さんが着ればかなり似合うだろう。弥生はどんな感じだろうか。陽花さんはどんな服が良いだろうか。そんな想像が俺の中を駆け巡っていく



「…………」


「あれ?ハールくん?」


「は、はいっ!!えっと、どうかしました?」


「どうかしましたか、じゃないよ。今、ボーっとしてたでしょ?だからどうしたのかなーって思ったの」


「いや、ちょっと考え事を……」


「もしかして、ここの制服を着た私や弥生ちゃんを想像してた……とか?」


「なっ!?なんでそれを……」


「あはは、図星みたいだね。安心して、制服姿はちゃーんと見せてあげるから。ね、弥生ちゃん?」


「はい。ハル、ちゃんと見て下さいね?適当じゃダメですよ?」



 弥生が「分かりました?」と念を押してくる。だが、弥生と陽花さんの制服姿なのだ。見たくないという男の方が少ない、というかいないだろう



「分かった。任せろ、絶対に適当じゃ見ないから、な?」


「ぼくもー。ぼくも見るー」


「うん、リクにもちゃーんと見せてあげるね」



 そんな事を言っているうちに噴水の前に付いていた。改めて見ると綺麗な水が太陽の光に当たってとても美しい。周囲の草木と合わさって、まさに癒しの空間を生み出している


 と、その時だった



「≪ストーン・ブレッド≫!!」



 野太い男の声が響いた瞬間、周りで爆発が発生した。燃え上がっているわけではない。地面に何かが勢いよく当たり、土が空中に投げだされている



「きゃ!!な、なんですか今のは」


「分からない。けど……歓迎のハッピーサプライズってわけじゃ、無さそうだな」



 危険だという事は確かだった。その証拠に周りの生徒がパニックになりながら逃げ惑っている。どうやら何かのイベントというわけは無いらしい



「ハルくん。アレを見て」


「アレ……?」



 怯えているリクを撫でながら陽花さんの視線を追う。すると校門前には1人の男が立っていた。ニヤリと笑いながら周りの景色を見ている。そして―



「≪ストーン・ブレッド≫!!」



 両手を前にかざすと、そこには泥の弾丸が生成され放たれた。それはそのまま飛んでいき、俺達の前の地面に被弾する



「くっ!!」



 咄嗟に弥生と陽花さん、リクの前に立ち腕で顔を覆った。体にはいくつかの飛んだ泥破片があたり痛みを与える



「ハル!?」


「ハルくん!?大丈夫!?」


「大丈夫ですよ。けどこれ、明らかに俺達の知ってる「普通」じゃないですよね……?」


「……うん、そうだね」



 少し驚いた様子を見せて陽花さんが答えた。いきなり地面を爆発させる?土の弾丸を飛ばす?この状況は、俺達の知っている「普通」ではありえない事なのだ。だとしたら、自然と答えは出てきてしまう



「これは……「魔法」ですよね」



 質問でありながら、だけど確信はしていた。きっとあの男は「魔法」を使ってこんな事態を起こしている。すると陽花さんも同意見だったらしく、頷いた



「うん、魔法だと思う」


「さっきの「ストーン・ブレッド」って言うのが魔法名……でしょうか?」


「多分ね。それが強力なモノなのかどうかまでは分からないけど……でも、今の私たちにとって厄介である事は間違いないね」



 陽花さんの言うとおりだった。もしかしたら魔法としては威力の低い魔法なのかも知れない。だが魔法があまり使えない俺達にとってはとても厄介だった



「(あれは恐らく戦闘用の魔法。俺の≪イマジネクト≫じゃ歯が立たないのは明らかだ。この状況……どうすればいい……?)」


「ぎゃはは、なんだ。魔法学園ってのも大した事ねぇな。魔法に我流の俺でも、簡単にぶっ壊せそうだぜ」



 男が言った。どうやら機嫌はかなり良いらしい。するとこちらに気付いたのか視線を向けて話しかけてきた



「そこにいるのは生徒かぁ?悪ぃがここは今からぶっ壊させてもらうぜ?なぁ、いいだろう?」


「いいわけ……ないだろ」


「はぁ?お前今、なんて言った?」


「だから……いいわけないだろって言ったんだよ。ここは今から、俺達が過ごす場所なんだ。お前みたいなおかしなヤツが壊していい場所じゃない」


「……ほほぅ、なるほど、クソガキ。どうやらお前……痛い目みたいと分からない、みたいだな」



 近づいていた男は足を止め両手を俺に向けた。分かってはいた。俺がここで正論を述べたって、男をイライラさせるだけだって事は十分に分かっていた。だけど、この場所を貶されるのはとても嫌だった。自分達が夢見ている場所をバカにされるのが、嫌だった。だから俺は言った



「安心しろ、外しはしない。一撃で……仕留めてやる」


「ハルくん、危ない!!」


「ダメです、避けて!!」


「ハルっ!!」


「それじゃ……あばよ」



 そう言って男が土の弾丸を飛ばした。≪ストーン・ブレッド≫は目で追える速さで俺に向かってくる。だけど、俺は避けようとは思っていなかった。避ければ弥生達に当たってしまうかも知れない。そう考えると、体は自然とそこに固定された。拍子に目を瞑る。そして1,2秒後、俺は―――異変を感じた



「……あれ?」



 目を開けて見る。写ったのは足元だった。体に痛みは無い。もちろん爆発の衝撃だって受けていない。いや、そもそもアレは爆発したのだろうか?そんな事を考えた瞬間、後方で大きな爆発音が聞こえた。どうやら「今」爆発したらしい



「どうなってるんだ……?」



 俺は視線を男に向けようと顔を上げる。すると俺の目の前には一人の少女が立っていた



「大丈夫ですか……?」



 そう言って少女は優しく、微笑んだ




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