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お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》
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第17話 対決!!ゲーム部 初戦

今回から後書きを入れていきます。頻度は適度にですが楽しんで頂けたら嬉しいです。


ちなみに何を書くかと言うと本編秘話とか……その他もろもろの予定です。



「ふふふ、お待ちしていましたよ。紫乃原副会長」


「うん。こんにちわ、田嶋くん」



 第一科学研究室の扉が開き、一人の男が現れた。その男のあいさつに少し固まった表情の陽花さんが返事をする。

 今日はゲーム部との対戦当日ということで俺達は「ゲーム部」の部室に来ていた。外から見れば普通の研究室だ。この学校には第四科学研究室まであるが、どれも殆ど変わらない。だがこの部屋だけは、中に入った瞬間に分かる程変わっている



「ん……?」


「えっと、どうかした、田嶋くん?」


「……いえ、何でも。さぁ、どうぞ。こちらです」


「うん」



 男は明らかに俺達の事を気にしていたが、何事もなかったような顔をして陽花さんを招き入れる。もちろん、俺達も一緒に入った行った。そして気付いたのだ。ここは、変わっている、と



「(噂には聞いたことあったけど……こりゃスゴイな……)」



 俺が周囲を見渡と壁には大量のケーブルが張り巡らされ、あちこちで謎の機械が動いている。独特の機械音、廊下では聞こえなかったそれが俺達の耳に聞こえ「ゲーム部の部室は何かの実験研究室」という噂が本当だったことを実感させた



「こちらですよ」


「うん」



 そう言った「田嶋」と呼ばれた男に俺達はついていく。胸ポケットに付いているマークの色が「青」なのを見ると、彼は陽花さんと同級生。つまり俺達にとっては「田嶋先輩」になるのだろう。

 そんなことを考えながら、まるで迷路のようになった教室を歩く。本来であれば数歩で行ける場所も遠回りしなければいけないから少々時間がかかってしまうようだ



「(これ全部ゲームのケーブルなのか?いや、なんかパソコンのものもあるみたいだけど……。PCゲームも扱ってるのかな)」


「な、なぁハル」


「ん、どうした良太?」


「この部屋暑くないか」


「暑い……?あ、言われてみれば……」



 確かに少し熱い気がした。扇風機があったりうちわがあればちょうど良いくらいではあるけど、さっきの廊下と比べると分かる程のレベル。窓にはしっかりと鍵がかけられており、開けた痕跡がない。恐らく換気をあまりしていないのだろう




「多分ゲームやらパソコンやら機械の熱だろ」


「そうだよなぁ、こんだけ機械があるんだもんな。おかしくはないか」



 「はぁ」と良太がため息をついている。仕方ないと分かってはいるものの、やはり暑さは苦手のようだ。手をうちわ代わりにして少しでも風を体に当てようとしている



「あ、ところで……そちらのお2人はどなたなんですか?見た所まるでアナタの助っ人と言ったような人たちですが」


「みたいじゃなくてそのまんま、助っ人だよ。私がお願いしたの。勝負は最大3回戦あるんだもん。1戦が1人するって計算すると何も問題は無いよね?」


「えぇ、まぁ、ルール的に問題はありません。ですが良いのですか?私にはどうも、アナタ1人で戦った方が勝率が上がりそうな気がするのですが……」


「1人で勝つ可能性には限界がある。けどね、仲間がいればその可能性はきっと無限に広がる。この2人は私の仲間だよ。そういう言い方は冗談でも止めてもらえるかな?」


「おっと、これは失礼。ですが、忘れないでくださいね。私達は警告をしました。あとで負けた時の言い訳にして頂きたい」


「安心して。負けた理由にするなんてカッコ悪いことするわけないし。それに第一、私達は負けないから」



 嫌みたっぷりだった田嶋先輩が「チッ」と舌打ちをして前を向く。どうやら陽花さんの真っ直ぐな言葉に負けたらしい。それから彼は「コホン」と咳払いをしてもう1度こちらを振り向いた



「それでは、これを使って下さい」



 そう言って渡されたのはメガネヘッドホン。そんな彼の前にはイスや机の置かれたスペースがあり、他と比べて少し広い。よく見るとイスには2人の人間が座っていた



「こちらに座ってそれを装着、あとの詳しい説明はバーチャル世界で行います」


「うん」



 陽花さんが返事をするとイスに座ってメガネヘッドホンを装着する。それに続いて俺達も着席、装着を終え、あとはスイッチを押すだけとなった



「それでは皆さん、またバーチャル世界で会いましょう」



 そんな田嶋先輩の言葉を合図に全員がスイッチを押した。襲ってくる眠気。そして俺はそれに逆らわず、身を委ね、夢の世界へと意識を飛ばした




☆     ☆     ☆     ☆     ☆




 最初に目の前に広がったのは岩の壁だった。少し驚いて左右を見てみものの、あまり変わらない。しかし後ろを見ると一変する。とても広い、とまでは言えないものの結構広いバトルフィールド。周囲には岩の壁が張り巡らされている。周りが周りだからか、なんとなくだが圧迫感がある



「ここは……コロッセオ?」



 昔、ネットで見た事があった気がする。詳しくは分からないが、確か剣闘士達が戦う場所だ。だから岩の壁の上には階段の様な座る場所が用意されている。あのバトルフィールドだってそうだ。あの位置なら観客用席からでもしっかりと見ることが出来る



「バトルフィールドにも色々あるんだな……」


「その通り。と言っても、このコロッセオ自体は我々が戦いやすいように、広さが縮小されていますがね」


「……えっ?」


「こちらの世界でもこんにちわ、紫乃原副会長の助っ人君」



 背後から聞こえる声に振り向くとそこには田嶋先輩がいた。彼だけではない。良太や陽花さん、それにイスに座っていた2人もいた。全員が制服の状態。どうやらまだバトルはしないらしい



「これで全員揃いましたね。それでは、話しを始めましょうか。まずは自己紹介。私はこのゲーム部の部長をしています、田嶋です。級的には紫乃原副会長と同じです。さぁ、2人も簡単な自己紹介をどうぞ」



 田嶋先輩に促され、横に居た謎の2人が少し動いた。その2人の第一印象は巨体な男性と小柄な女性。先に話すのはどちらかと伺っていると、巨体な男性が俺達をギロリと睨み、話しを始めた



「俺は平塚、平塚剛史郎だ。学年は紫乃原、田嶋と同じく2年。ゲーム部の副部長をやっている。俺からはそれだけだ」



 そう言って一歩後ろに下がった。その目は未だに俺達を見ており、思わず警戒してしまう。そして彼の紹介が終わると、今度はその隣に居た小柄な女性が一歩俺達に近づいてきた



「私は広崎薺。アナタ達と同じ1年。ゲーム部には今年から入ってる。以上」



 素っ気ない説明が終わり、彼女もまた元の位置に戻っていく。これから対戦するからだろうか、平塚先輩も広崎も自分の紹介にしてはあまりにシンプルすぎる気がした



「こちらからは以上です。それではどちらも紹介をお願いできますか?あぁ、ちなみに紫乃原副会長はもう存じておりますので、そちらの2人の紹介をお願いします」


「分かった。えっと、ハルくん?良太くん?」


「あ、はい。……水上春人です。学年は広崎さんと同じ1年。部活は入っていません」


「ハルと同じく1年の猿渡良太です。部活は剣道部所属ッス」


「水上くんと猿渡くんですか。分かりました。しっかりと覚えておきましょう。それでは一通り紹介も終わった所で今回の対戦について説明します。まず今回の対戦が最大3回戦ある……というのはご存知ですね」


「うん。それに関しては説明してあるよ」


「では細かいルールについて説明します。このバトルでは通常使用される『クラス』の『スキル』が使用可能です」



 『クラス』、それは対戦時に適応される自分の分類の事だ。有名所で言えば「剣士」「魔術師」などがそれに当てはまる。その数は特定されておらず、一部では「無限に存在する」なんて話もある。

 そして『スキル』はクラスごとに使用できる特殊能力の事。「剣士」であれば相手の守りを貫き攻撃する≪ストライク≫、「魔術師」ならば魔力エネルギーを使って障壁を作り出す≪バリアー≫などがあり、通常は1人で5つまで所持することが出来る。ただし、スキル毎に消費ポイントがあるらしく、無限に使えるわけではない



「またスキルに関してはもちろん、オリジナルスキルも使用可能ですので心得て置いて下さい」



 『オリジナルスキル』は先ほどの『スキル』を自己流に改良したものだ。例を使えば≪ストライク≫に炎属性を加えて≪フレア・ストライク≫、≪バリアー≫に爆発機能を持たせて≪エクスプロージョン・バリアー≫にするなど、まさに多種多様。その数は現在把握されておらず、これもまた「無限にある」と言われているらしい



「更に、先日新しく追加された要素『武器』の使用もありとします。もちろん攻撃用でも防御用でも構いません」


「武器……?武器ってあれッスよね。俺が最初に持ってた剣の事ッスよね?」


「うん。あれが良太くんの武器だよ」



 『武器』はついこの間追加された要素らしく、その名の通りバトルで使用する道具の事だ。今話していた「剣」はもちろん、防御用の「盾」なんかもありそれまでのバトルを劇的に変えているらしい。この武器は使用しても消費するポイントがない為当たり前と言えば当たり前か。今では『クラス』『スキル・オリジナルスキル』と並んで「マジック・バトル・コロシアム」の見所となっているようだ



「えー、戦闘面に関してはこのぐらいですね。その他は何もありませんので早速、対戦に入りましょうか」


「……私、行ってくる」



 田嶋先輩がそう言うと、広崎がスッとバトルフィールドに向かって歩きだす。その時俺達は気付いた。このバトルは1対1、となれば順番に戦う必要がある。だけど俺達は誰が何番目に戦うなどの順番を決めていない



「よ、陽花さん。そう言えば俺達って順番とか決めてないですよね……?」


「うーん、まぁそうだね」


「ど、どうするんスか?初戦って結構大事ッスよ?」


「ここでペースを取っておきたいって気はするけど……」


「うん。それじゃあ、私がいこっかな」


「「えっ?」」



 その一言は良太と殆ど同じタイミングだった。すると陽花さんはフィールドに向かって歩き出し始めた



「ちょ、ちょっと待って下さいよ。そんな急に決めちゃって良いんですか!?」


「良いんじゃないかな?たまには勢いに任せるっていうのも大切な事だと思うけど?」


「そりゃそうかも知れないですけど。でも初戦でいきなり陽花さんって……」


「だって初戦は大切でしょ?」


「まぁそうですけど。でも……」


「それとも何かな。2人共私が負けると思ってる?平塚くんや田嶋くんと戦うのが怖い……とか?」


「負けるなんて思ってませんよ。それに先輩達が怖いってわけでも……」


「そうッスよ!!先輩だろうと必ず倒します!!それに陽花さんは絶対負けないってこともよく分かってるッスよ!!」


「だったら……私が行っても問題、ないよね?」



 可愛らしくウインクしてこちらに聞いてきた。そうなれば、俺達の選択肢は「はい、大丈夫です」か「問題ありません」しかない。別に陽花さんが威圧してきているわけではない。ただ、そんな彼女を見ていると「大丈夫」と思えてくるのだ。だから俺は頷いた



「はい、大丈夫です」


「うん、ありがと。その代わり、この後の対戦はキミ達に任せるから。その時はよろしくね」



 そう言った陽花さんが再びフィールドに歩き出す。そしてフィールドに入った瞬間、彼女の服が昨日見た黒い魔法使い服に変わる。どうやらあそこに入ったら変化する仕組みらしい



「それでは始めましょう。1回戦目です。両者、構えて」



 田嶋先輩の言葉に従って陽花さんは杖を、広崎は拳の大きめのナックルダスターを装備する。訪れる静寂。そして



「バトル、スタートッ!!」



 田嶋先輩の合図と共に広崎は地面を強く蹴りあげ、陽花さんとの距離を縮めていく。対する陽花さんは杖を構えたまま動かない



「……先輩に申し訳ないとは思いますが、速効で終わらせてもらいます」



 警戒しつつも、拳を1度後ろに引き、殴りかかる体制を整えた広崎。手に装備されたナックルダスターは見たことがあるものよりも少し大きく、その威力の大きさをその見た目から示している。しかしそんな彼女や武器を見ても、やはり陽花さんは動かない。じっとその姿を見つめ、固まっている



「先手、一撃、必勝……ですっ!!!!」



 勢い止まらぬ広崎と陽花さんの距離は僅か9,10メートル程となり分類でいえば「接近戦」となる。「魔術師」は本来、接近戦が苦手なクラスだ。それでも陽花さんは顔色一つ変えず、ただその場に立っている



「これは、何かがおかしいですね」



 陽花さんの様子に田嶋先輩が疑問を感じていた。無理もない。俺達だって昨日、もしあの人と戦っていなければ「動かない」意味がきっと分からなかっただろう。そう考えているうちに距離はもっと縮まり、広崎は陽花さんの5メートル前まで来ていた



「≪クラッシュ……≫」



 広崎がスキルを発動させ、攻撃を仕掛けようとする。光り輝き始めたナックルダスター。そして彼女は勢いを付けて陽花さんに飛びかかった。その時だった



「……≪グラビティ≫」


「なっ……っ!?」



 急に彼女の体が地面に叩きつけられた。まるで「重力を強くかけられた」かのように。もちろん、ケガをする程の威力はない。だが、その拘束力は強いようで、彼女の拳のナックルダスターは通常状態に戻ってしまい、スキルの発動が中断されている。それに気づいた彼女は「くっ」と歯を食いしばり、前を見た。しかしそこに陽花さんの姿は無い



「い、いない!?」



 彼女の攻撃が阻止されてから時間にして僅か2,3秒。その間に陽花さんは彼女の前から姿を消している。いや、この時彼女以外の外野は分かっていた。陽花さんがどこにいるのか、そして何をしたのか



「ッ!?」



 気配に反応した広崎は重力の強さに抵抗しながら慌てて後ろを振り見た。そこにいたのは陽花さん。杖を彼女の向けて構えている



「は、速……」


「≪フラッシュ・インパクト≫」



 陽花さんの一言で、杖の先端は光を放ち小規模ながら爆発を起こした。その威力で重力が解除されると共に広崎の体は数メートル吹き飛ばされる



「くっ……こんのぉ……」


「≪グラビティ≫」


「うっ!?」



 着地した一瞬の時間もつかの間、すぐに≪グラビティ≫を受けてしまいさっきと同じように身動きが取れなくなってしまう広崎。そんな彼女の前に、先ほどまで少し離れた位置にいた陽花さんが現れる



「これで行動不能のはず。決着はついたよね?」


「…………」



 陽花さんの言葉に広崎は頷きもしなけえば、首を横に振ることもない。だが現状、陽花さんの≪グラビティ≫によって発生した重力に逆らえる様子はまるでない。そして



「……負けました」



 彼女のか細い、認めたくなさそうな声が、その場一帯に響き渡った




今回から少しずつ後書きを入れていくことになりました。


というわけでこんばんわ、コアラです。


「こんばんわ、弥生です。ところで作者さん、今回はバトルでしたけど……あんなに張り切っていたわりに結構躓いてしましたよね?」


うぅ、それを言わないで。実際17話自体は1度9割程書けた時があったんだよ。25日くらいかなぁ


「ならなんで今日までかかっちゃったんですか?」


今回、バトルの要素として『クラス』『スキル・オリジナルスキル』『武器』って出てきたでしょ?あれの説明部分をどうやったら良いかとか、剛史郎や薺の自己紹介シーンが違和感たっぷりだったりとか……色々あったわけですよ


「なるほど……。でもそのスキル達も結局は昨日決まってって情報が入ってますよ?」


ぶっちゃけその辺りは結構前から考えてたんだけどね。でも考えれば考えるほど「アレ?色々な能力持ちすぎてて、これ陽花さん相当チートになるんじゃ……」ってなっていったの


「今回でもかなりおかしいと思いますけど……。だって≪グラビティ≫って最強なんじゃないですか?動きを封じるって」


あれは薺が一直線型だったから成功しただけ。もっと速く動いたり、あまり遠くにいる人が相手だと意味が無くなっちゃうだよね


「あと≪フラッシュ・インパクト≫が攻撃技で……。そう言えば陽花、すごく速く動いてましたよね?あれもスキルですか?」


アレに関しては別に秘密ってわけじゃないんだけどね。陽花さんが魔法的なの使うならどんなのかなって考えた時に≪グラビティ≫と共に出てきたスキルです。スキル名とかはそのうち出るんじゃないかなぁ


「なるほど。それじゃあ作者さん、最後に今話最大の謎です」


はい、なんなりとどうぞ


「なんで私達オバケが出てきてないんですか?」


……はい?


「いや、だから、なんで私達が出てきてないんですか?今回ハル達しか出てきてないですよ?」


……そ、それを気にしちゃいけないよ弥生。なんでここにキミを呼んだと思ってるの?


「えぇ!?本編で出れなかったからここで登場って事なんですか!?」


ま、まぁキミちょくちょくおいしい所持っててるじゃない。ほら、あの……クレープの話しの時とか


※『第12話 学校帰りは天国タイムなのです』参照です


「むぅ、そう言われればそうですけど……」


と、ということで次回もお楽しみにー!!



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