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お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》Ⅱ エクストラストーリー ユートピア編
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第3話 青髪の学者少女


 理恵の転校初日から数週間が経過した。

 学園生活は順調。仲のいい友人も作ることができている。

 最初は苦戦していた魔法にも慣れており、自分専用の魔法武器ディレクトリの作成、授与をされるレベルにまでなっていた。 

 そして今、彼女は自分のディレクトリを受け取るため学園内の一室に来ている



「失礼しまーす」



 少し扉を開いて覗き込んでから中に入る。そこには理恵の見たことがない景色が広がっていた。大きなモニターとその手前に置かれたパソコン。その周辺には何やらよく分からない機械が設置されている。

 素人目で見れば実験器具だろうか。そんな予測を立てながら理恵は足を進めていく



「マスター、ここで合っているんですよね?」


「うん、そのはずだよ」



 理恵は自分の携帯端末にタッチして地図を表示させる。自分たちの居る位置を示す青い丸と指定された位置を示す赤い丸は重なっている。間違いはなさそうだった。

 しかし、人がいない以上どうしたものか。理恵が辺りを見渡して考え始める。

 すると、近くで人の軽快な足音が聞こえた



「あっ、来てくれてたんだ。ごめんね。御もてなししようと思ったら料理に集中しちゃって」



 目の前の機械たちから視線を変えると少し離れた場所に一人の女性が立っていた。

 灰色のパーカーとロングスカートに白衣。体格的には小柄で背中まで届く青い髪は一部をまとめポニーテールにしている。

 雰囲気的に優しく可愛らしい。だから理恵たちも警戒することなく話しかけることができた



「えっと……あなたは……?」


「私は「アクア」。ここで研究をしてるんだ」


「研究……?」


「うん。ユートピアの古代遺跡。その研究や調査をやってる学者なんだ。っと、立ち話もなんだね。そこに座って」



 アクアに言われて理恵と瑠璃は近くにあったソファーに座った。感じるフワフワ感。機械同様、これの手入れもしてあるようだった。

 結構マメな人なんだな。

 理恵がそんなことを考えていると、アクアはいくつかに切り分けられたケーキを持って理恵の前に立っていた



「理恵ちゃん、ケーキは好き?」


「ケーキですか。好きですけど……」


「これね、私が作ったケーキなんだ。食べて感想を聞かせてもらっていいかな?」


「は、はい」


「瑠璃ちゃんも、どうかな?」


「はい。私も甘いモノは比較的好物です。頂きます」


「それじゃあ、はい。どうぞ」



 魔法武器ディレクトリを取りに来たのにどうしてこんな展開になっているんだろう。

 と疑問に思いつつも理恵は机に置かれたケーキを持ってきてもらった小皿に移し、フォークを入れて食べてみる。

 瞬間、理恵は驚きを隠せなかった。何となく食べたケーキだが美味しい。種類としてはチーズケーキ。食感は生地がしっとりとしていながらも一部はクッキーの様になっており、味に関してはしつこくない程よい甘さが口の中いっぱいに広がる。

 理恵自身、ケーキが特に好物というわけではなく詳しいことは分からないが、これを食べてアクアは料理が得意ということだけは分かる。瑠璃も珍しくケーキを夢中になって食べていた



「美味しい……。美味しいです、アクアさん」


「ありがとう。そういってもらえると嬉しいな」



 カップに注いだココアを渡しながらアクアが微笑む



「マスター、このケーキはとても美味しいです。私はぜひ、二個目も食べたいです」


「いや、二個目って……。それはさすがに申し訳ないよ、瑠璃」


「いいよ。このケーキは二人のために作ったモノだから全部二人で食べっちゃっても平気だよ」


「それは本当ですか?マスター、食べる許可が出ました。私は今から二個目に突入します」


「って瑠璃、取るの早いよ。アクアさん、すいません」


「大丈夫、大丈夫。それよりよかったら理恵ちゃんも食べて。そのままだと全部、瑠璃ちゃんが食べちゃいそうな勢いだから」


「はい」



 瑠璃に負けじとケーキを皿に取り、再び食べ始める。そんな二人をアクアは嬉しそうに見ていた



☆     ☆     ☆     ☆     ☆




「ふぅ。ごちそうさまでした」


「ごちそうさまでした」


「うん。お粗末さまでした。二人とも、全部食べてくれてありがとね」


「いえ、こちらこそ美味しいケーキをご馳走してもらっちゃってありがとうございます」



 アクアが皿を机の端にまとめた。残ったのはカップのみ。そこに新しいココアが注ぎ込まれる



「さて、ケーキも食べてもらったことだし、正式な自己紹介をしようかな。あっ、正式っていっても私自身、堅苦しいのは苦手だからそのココアでも飲みながら聞いてね」



 理恵がコクりと頷く



「改めて。私はアクア。このユートピアにある古代遺跡を調査、研究している学者……正式にはチーム「絆」のメンバーだよ」


「チーム「絆」……?」


「そう。ラグって人をリーダーにして、魔法国の色々な補助をやってるチーム。それがチーム「絆」。そのメンバーの中にはシルキって人がいてね。シルキはディレクトリを作ってる人なんだ。そして今回、理恵ちゃんのディレクトリを作ったのもシルキなの」


「ということは、シルキさんから渡されたディレクトリをアクアさんがあたしに渡してくれる……ってことですか?」


「察しがいいね、その通り」



 アクアが右手に力を込め、魔力がディレクトリを構成していく。そしてわずか二、三秒後に現れたのは理恵もよく知る形状の武器だった。



「これが理恵ちゃんのディレクトリ。名前は『ガイアース』だよ」


「ガイアース……小型のハンマーですか?」


「うん。理恵ちゃん、マジックバトルコロシアムってゲームでよくハンマーを武器にしたキャラを使ってたでしょ?それを考えて理恵ちゃんにはこの武器が合うと思ったんだって」



 アクアの手にあるガイアースが理恵に渡された。受け取った瞬間に感じる重量感。軽いとはいえない。が、理恵はゲームの中でプレイする際にも少し重量感のあるキャラを使うのが得意だった。その影響か重いからイヤだとは思わない。むしろ、このガイアースのように多少の重さはあった方が良いと思うくらいだ



「えっと、部位の説明をするね。まず握る柄の部分は置いといて、先端のコアとその両端にあるヘッド部分。このヘッド部分が攻撃をするときに使う部分だね。ここに魔力を送り込むことで魔力のヘッドを作り出すことが出来るの」


「魔力の……あっ、それってマジックバトルコロシアムにもありました。」



 理恵が記憶を辿ると似た能力が登場したことがあった。

 対戦の中で専用のゲージを溜めて一定時間発動できる特殊技。発動させれば魔力で作られたヘッドが現れるのだ



「効果は攻撃範囲の拡大。あとヒットした場合、相手が例え防御をしていても衝撃によってダメージを与えるショックダメージ。豪快な見た目とは違って意外と細かく動いて、いかに相手にショックダメージを与えるかが重要な技なんですよね……って、すみません。ついゲームのことを思い出しちゃって」


「ふふっ、さすが理恵ちゃん。ゲームのことを思い出すとテクニックも思い出されるんだね。だったら安心したよ。ここで使う場合も同じような使い方だから」


「えっ……?」


「正確には発動時間はかなり長くなるけど効果は同じ。攻撃範囲の拡大と防御上から与える衝撃ダメージの増加なんだ。使うコツは……私より理恵ちゃんの方が熟知してそうかな」



 アクアは手元のココアを一口飲んだ。それに続いて何となく理恵もカップを手に取り、同じように口に入れる



「あとはディレクトリに搭載されてるシステムなんだけど「ゲージブレイク」っていうのがあってね。ゲームで言うところの一時的なパワーアップシステムなの。使う条件はディレクトリの魔力ゲージを壊すだけ。これは自分が使いたいって思って言葉にして言ってみたり、ディレクトリが自動で使うこともあれば瑠璃ちゃんが使う場合もあるかな」


「瑠璃が……?」


「そう。実は理恵ちゃんと瑠璃ちゃんが融合して一緒に戦うシステムもあるんだ。その名も連結融合リンクコネクト。」


「リンク……コネクト……」


「これに関してはまた今度、私か唯香ちゃんが教えると思うから」



 アクアはそういって笑顔を見せた。理恵はそれに同じ表情で返しながら手元のガイアースに視線を移す。

 新しく与えられた力は数多く、まだ未知の力まであるらしい。そのことに理恵は魔法国に来た時と同じようにワクワクを感じていた




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