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お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》
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第11話 鈴

「えぇ、間違いないわ、あたしはオバケよ。実はね、アナタに会いに来たの。そう、そこのおバカなお猿さんにね」



 金髪の髪をツインテールで纏め、薄いピンクのワンピースを着た少女はそう言った。見知らぬ彼女の一言に、良太が固まる。無理もない。急に現れた少女に「オバケ」だの「会いに来た」だの言われたのだ。

 恐らくコイツの頭の中では現状を理解しようと頭がフル回転していることだろう。しかし、きっとフル回転したところで「今」を理解することは出来ない



「あ、あのな良太、これは……」


「だ…………」


「だ…………?」


「だから…………俺はサルじゃねぇ!!猿渡だって言ってるだろうが!!猿渡良太ァ!!この名前をよーーーく覚えとけっ!!」


「えっ……えぇ!?」



 言い放ったコイツの顔はまさにキメ顔だった。多分効果音としては「キラーン」という音がついてもおかしくない、そんな雰囲気。だが気にする点が違う。コイツはオバケを気にしているんじゃない。名前を間違えられたことを気にしているのだ



「りょ、良太?お前気にする点が……」


「あぁ、分かってるぜ春人。俺の名前は猿渡だ。決してサルなんかではない!!そう、言いたいんだな?」


「えっ、あ、いや、違うんだけど……」



 正直めんどくさい。熱くなったコイツは時折手に負えなくなるから大変だ。そして今がその状態。どうやらスイッチが入ってしまっているらしい。相手方の少女も若干面倒そうな顔をしながら苦笑いをしている



「ホント、筋金入りのおバカさんね……」


「くっ、こんなチビッ子にバカ呼ばわりされるなんて何たる不覚」


「ちょ、誰がチビッ子よ、誰が!!」



 目の前ではアホな友人と、謎の少女が漫才を繰り広げている。さっきのオバケ発言で出たシリアスな空気とは何だったのか、俺と陽花さんは顔を見合わせて苦笑いをしていた



「ま、まぁ良いわ。そんなの気にしてても話しは進まないし。今回は大目に見てあげる」


「なんだよその上から目線……ってかホント誰なんだ?なんかオバケとか言ってたけど……」


「そう、あたしはオバケよ。あなたに用事が会ってここまで来たの」


「俺に……用事?」


「えぇ、色々話すと面倒そうだから単刀直入に言うわ。アナタ……あたしと契約しなさい」


「…………ハァ?」



 少女の言葉に良太の表情が変わった。流石に重要な部分まで省きすぎている。赤の他人にも等しい人物にいきなり「契約しろ」なんて言われれば当然の反応かもしれない



「契約ってなんのことだよ?もっと詳しい説明してもらわないとわけが分からないぞ?」


「あら、聞いてなかったの?言ったでしょ、「色々話すと面倒そうだから単刀直入に言うわ」って」


「うわぁ、そこから省略するのかよ。だけどさ、いくらなんでもその状態で契約……ってのは出来ないぜ?」


「ふふ、それなら問題ないわ。右手を見てみなさいな」


「右手……?」



 少女に言われた通り、良太は自分の右手に視線を移す。すると甲の部分が光を放ち、痣が描かれていく。俺が弥生と契約した際に見た事のある契約紋章『エンゲージ・クレスト』だ



「な、なんだこれ!?なんか甲に浮かびあがってるぞ!?」


「それが契約の証し。これでアナタとあたしはパートナー……つまり、ペア結成ってわけね。ちょっと強引っぽい気はしたけど、まぁ詳しい事は後でちゃんと話してあげる。とりあえずは現状を飲み込みなさい」


「げっ、勝手に話し進んでるのかよ……。まぁ契約しちまったもんはしょうがねぇか。とりあえず納得しとくよ」


「ありがとう。そういう楽天的な解釈が出来る部分はおバカさんで助かったわ」


「バカバカ言うんじゃねぇ!!理解力が優れてるって言うんだよ!!」


「それは理解力じゃない。単純だからこそ見込みが速いって言うのよ」


「な、なんか急に褒められてる感が……」


「まぁ意味としては同じようなものだとは思うけれど」


「おいっ!!今ボソッと本音が出てただろ!!」



 また漫才のような会話が繰り広げられている。この2人、意外に相性が良いのかもしれない。まぁ何かあった時には良太が尻に敷かれそうだが、きっとコイツならなんだかんだ上手くやりぬけて行く気がする。何はともあれとりあえず大丈夫だろう




「あっ、そう言えば良太くん」


「はい?」


「良太くんって私の事名字で呼んでるじゃない?あれ、名前で呼んでもらっても大丈夫だからね?」


「ほ、ホントですか!?それじゃあ陽花先輩って呼んでも……?」


「うん、もちろん。というか普通に陽花さんでいいよ。大抵の人はそう呼んでくれてるから」


「陽花さん、陽花さん……。くぅ!!春人……いや、ハル!!俺の真の学生時代は今、スタートしたぞ!!」


「あー。分かった分かった。暑苦しいからそんなに燃えるなって」



 俺は興奮する良太を避けながら落ち着かせた。一気に事が進んだが、結果として良太も契約をし、俺達と同じ状況になったというわけだ。詳しく聞かないのかとは思ったが、この少女は家に帰ってから説明するというし、契約自体に害がある訳でもないので大丈夫だろう。そう思った時だった。ドアが開き、誰かが屋上に入ってくる。弥生とリクだ



「えーっと多分ここに……あっ、いました!!」


「もう、急にどっかに行っちゃったから探したんだよ、鈴」



 2人は一目散にこちらに走ってきて少女に話しかける。どうやら名前は「鈴」と言うらしい。するとその横にいた俺達に気付いたのか弥生がこちらに顔を向けた



「……ってハルじゃないですか!!どうしてここに?今はまだ授業中ですよね?」


「えっ、あ、それはだな……」


「あ~、サボりってヤツですね。ダメですよ、真面目にお勉強しないと。って……あれ?」



 弥生のお説教が急に止まった。彼女は今、良太に直視されているのだ。弥生は良太が契約した事をまだ知らない。だから見えるはずがないと思っているのだろう



「(あ、あれ?何故か見られてる気が……)」


「……なぁ、もしかしてこの子がハルの契約した子なのか?」


「ーッ!?」



 その瞬間、弥生が後ずさりした。眉をひそめ、瞳を少し見開いたその顔は明らかに警戒している



「な、なんででしょう?見えるはず無いのに……なんで私の事が見えてるみたいな事を……?」


「弥生ちゃん、弥生ちゃん。もしかしてだけどあの人、ぼく達のこと見えてるんじゃないのかな?」


「えっ?そ、そんなはずないですよ。だって虚空化してる限りオバケと契約してないと見えないはずですし……」


「だってそこに鈴がいるでしょ?もし鈴がこの人と契約したらぼく達の事、見えるんじゃない?」


「あっ…………」



 「なるほど」と言いながら弥生が頷いた。どうやら理解が出来たようだ



「なぁハル、この子達もオバケなのか?」


「あぁ、そっちの女の子が弥生で俺のパートナー。男の子がリクで、陽花さんのパートナーだ」


「弥生ちゃんとリクか……。あっ、俺は猿渡良太って言うんだ。これからよろしくな」


「私は弥生です。よろしくお願いしますね」


「ぼくはね、リクって言うの。よろしくね、りょーた」


「おう!!」



 弥生とリクの差しだした小さな手で良太は握手を交わす。一見すると流れで成立されてしまったかのように見える契約かもしれない。だが何も分かっていないとはいえ、良太もそれなりに納得はしているようだ。俺としても仲間が増えてくれるのは純粋に心強い


 

「……それで、アナタ達が弥生とリクのマスターの春人と陽花よね?」


「あぁ。えっとキミは鈴……だよね?弥生達のこと前から知ってるみたいだけど……」


「弥生やリクとは結構前から友達なの。何はともあれ、これからよろしくね」



 俺と陽花さんは差しだされた鈴の小さな手と握手を交わした。そして俺は予感していた。新しい仲間が増え、きっと更に賑やかな毎日が待っているのだろう……と




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