表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お化け少女と契約《エンゲージ》  作者: 探偵コアラ
お化け少女と契約《エンゲージ》
1/141

第1話 契約(エンゲージ)

ご好評により、連載化致しましたエンゲージです。


短編やブログにて読んで下さった読者さん、ありがとうございました。


そしてこれからもこの作品にお付き合い頂けると幸いです。


それでは「お化け少女と契約エンゲージ」スタートです!!





 夜、一人暮らしをしている俺がトイレを終え、リビングに戻ろうとドアを開けた瞬間の事だった



「…………」



 俺は思わず硬直してしまった。目の前にいるのは女の子だ。

 青いショートの髪に白いワンピース、そしてその小柄な体系。明らかに俺の知り合いではない。では、何故ここにいるのだろうか。俺は頭をフル回転させて考え込む。

 その時だった



「う、うらめしやぁ」



 控えめと言うよりは怯えた声で女の子が言った。

 手をまるで幽霊のように構えている。モノマネだろうか。しかし瞳に涙を浮かべ、眉はハの字になっている。やはり怯えているようにしか見えない



「えっと……なに?」


「えっ?だ、だから、うらめしやぁ……です」



 再チャレンジするも、やはり意味が分からない。この子は何故「うらめしぁ」なんて言っているのだろうか?そもそも、何故ここにいるのだろうか?疑問が次々湧き出てくる。

 とにかく今は、この疑問を解決するしかないか



「いやいや、うらめしやぁって言われても……俺はどうすればいい?」


「あれ?もしかして怖くないんですか?」


「まぁ……。というか、どちらかと言うとキミの方が怯えてる様な気がするけど?」


「なっ!?」



 正直な感想を言うと、少女は驚きながら後退した。この子はどうやら怖がらせようとしていたらしい。

 が、全く怖くない。むしろこちらが心配してしまうほど、この子の方が俺を怖がっているように見える。

 すると女の子は眉を逆ハの字に変え、言った



「お、怯えてなんていないのですよ!!だって私は「オバケ」なんですから!!」


「えっ……?」



 彼女の声に俺の思考が一瞬鈍った。

 オバケ。確かにこの子はそう言った。しかし、そうは見えない。そもそもオバケなんているのだろうか。そんな事を思いながら、改めて問いかけてみる



「えっと……オバケ?」


「はい、そうですよ。人を怖がらせちゃうオバケです。って……あっ」



 妙に自信満々だった顔が段々青ざめていき、同時に俯いていく。


 これはオバケへの覚醒の予兆だろうか。

 確かにゲームでは、姿を変え、一気に強化される……なんて展開がある。だがそれは、あくまでゲームの中の話しだ。


 訳の分らない事態に、慌てて対応しようと試みる。すると、そんな騒がしい脳内とは間逆に、女の子は静かに呟いた



「……い、言っちゃいました」


「えっ……?」


「言っちゃいました。私、オバケって……言っちゃいました……」



 「どうしよう」と言わんばかりの落ち込み顔で女の子は俺を見る。だが、もちろん俺は事態を把握出来ていない。

 そのイレギュラーな事態を把握する為、頭を回転させ思考する。が、それも数秒で止めた



「ダメなんです。私がオバケってバレちゃったら……バレちゃったら……」


「おい。ちょっと、大丈……って、うおっ、なんだこれ!?」



 駆け寄ろうとした瞬間、右手に熱を感じ慌てて視線を向ける。

 すると手の甲に何らかの痣が浮かび上がっており、小さく輝いていた。これは一体なんだろうか。

 そんな事を思いながら触ってみようとする。しかしその瞬間、光は一気に小さくなり、あっという間に消えてしまった。

 残されたのはさっきまで無かったはずの痣。形に添って僅かな光が輝きを放っている



「なんだ……これ?」


「え、えっと……それは『エンゲージ・クレスト』って言うんです」


「エンゲージ……クレスト?」


「「契約紋章」って意味です。その名前の通り、契約をした時に浮かび上がる紋章なんです」


「契約紋章って……。あの、よく分からないから説明してもらっていいか?」


「うぅ……はい」




☆     ☆     ☆     ☆     ☆




「ありがとう、ございます」



 差し出されたお茶を手に女の子が言った。俯きつつも喉は乾いていたらしく、ゆっくりとコップに口を近づ喉を鳴らす。

 どうやら気に入ってもらえたらしく、彼女は一気にそれを飲みほし、テーブルの上に置いた



「それじゃあ、説明をしてもらっていいかな?」



 なるべく怖がらせないように気をつける。本心では沢山聞きたいことがあるものの、この様子だときっと更に怯えてしまう。そう思っての配慮だ。

 すると女の子は小さく頷き話しを始めた



「色々説明する事はあるんですけど、まずはオバケの説明からしますね」


「あぁ」


「私達『オバケ』というのは、何らかの理由であの世に行けなかった魂が現代に残って、形を持った存在のことを言います」


「何らかって……例えば?」


「「やり残したことがある」って言うのが一般的ですね。オバケのうち、9割の人はこれが理由です。でも稀に、ごく稀にそうでないオバケもいます」


「そのごく稀な理由って?」


「えっと……それは……その……」



 自然な質問だったはずだが、それを聞いた彼女は更に顔を俯かせた。その理由はあまり良い理由ではないらしい。

 しかしそれでも彼女は、ゆっくりと口を開き答えてくれた



「……そう。あの世に行く為の試験に不合格だった人です」


「し、試験に不合格……?」


「はい。その……詳しいことはお話し出来ませんけど、あの世に行く為の試験があるんです。それに不合格だった人は、この世界にオバケとして残ることになります」


「な、なるほど……」



 話の流れ、彼女の表情からして、どうやらこの子は試験に不合格だったらしい。だからこうして現代にオバケとして身を残しているのだろう。

 その証拠に少女は俺と目を合わさず、机に視線を向けている。不合格と言うのは、やはり恥ずかしい事なのだろうか。

 俺は慌てて次の質問を考え、彼女に聞いた



「オバケとしてか……。残ってどうするんだ?」


「よくぞ聞いてくれました。それが重要なのですよ」



 急に顔を挙げ、両手を握りしめて胸に当て、必死な表情で俺に顔を突っ込んでくる。

 口と口が触れてしまいそうな距離に不覚にもドキドキしてしまった。

 しかし、そんな俺の心理状態も知らぬであろう女の子は気にしていない。どうやら、話の内容に興奮しているようだ



「お、おう。それが重要なんだな……」


「はい。現世に残ったオバケにはですね、ある試練が出されるんです」


「試練って……どんな?」


「それはですね「人を怖がらせること」なんです」


「怖がらせる……?」


「はい」



 拍子抜けした俺の顔を見て落ち着いたのだろうか、少女は身体を引き、座っていた椅子の上へと戻っていく



「オバケは「この人だっ!!」って決めた人を選んで怖がらせるんです。それをまだ公表されていない期限内にどれだけ出来るか、それが試練なんです」


「なるほど。つまり、キミ達オバケが俺達を沢山怖がらせれば良いってわけだ」


「はい。ただ、その中に注意事項がいくつかありまして。その一つが「自分がオバケだと見抜いた相手とは契約を結ぶこと」なんです」


「契約?契約を結んでどうするんだ?」


「一緒に協力して人を怖がらせるんです。そうですね……分かりやすく言うなら「パートナー」になってもらうって事でしょうか」


「パートナー……」



 彼女のこの一言を最後に数秒間の沈黙が訪れる。

 何故だろうか、俺の頭の中ではつい数分前の出来事が連想されている。この子が俺の前に現れて、怖がらせようとして、それから、それから―――



「確かキミ、俺にオバケだって自白したよな?」


「……はい」



 しょんぼりしながら頷いた。どうやら俺の勘違いでは無かったようだ。そうなると、今度は契約の話しが頭に浮かんだ。

 契約はオバケだとバレた相手とする。そして彼女がオバケだと俺にバレた。そうなると答えは一つしかない



「それってつまり、俺はキミと契約した……と」


「はい、そういうことになります」



 女の子は小さく「コクン」と頷いた



「本当は様子を伺ってから、契約するものなんです。でも私、ついオバケだって自分で言っちゃって……」


「天然のオバケ、ってことか」



 彼女のその面白さに堪え切れず、少々だが笑いを零してしまう。

 すると、それに気付いたのだろうか。ハの字になった眉を見せながら、今にも泣きそうな顔で女の子が俺を見てくる



「うぅ……笑わなくたっていいじゃないですかぁ」


「あぁ、ごめん。でも、自分で自白しちゃうって……なんだか可愛いなって思ったんだよ」



 思わず口に出してしまった素直な感想。それを聞いた彼女の顔は改めて赤くなり、やがて慌てた様子へと変化した。

 その証拠に口をパクパクと動かしてはいるが、言葉になっていない



「か、可愛いって……。もう、褒めれば良いって思ってませんか?いくら私でも怒っちゃいますよぉ……?」



 赤くなりながらも必死に怖そうな表情を作っている。

 しかし、正直これもまた可愛い。残念ながら怖いとは程遠い。セリフと顔が完璧に合っていなかった。どちらかと言えば、少し嬉しそうに見える。

 すると、話が脱線しているのに気付いたのだろうか。「コホン」と小さく咳払いをして、雰囲気を元に戻した



「と、とにかく、あなたは私と契約を交わしてしまったんです。それで、その……一度パートナーが決まれば、それ以降変更することは出来ません。つまり、私のパートナーはあなただけ……ということになるんです」


「……うん」


「それでお願いなのですが、その……私に協力してもらえないですか?無理なお願いというのは分かっています。でも、なるべく迷惑をかけないように努力しますから。だから……」



 不安そうに女の子が俺を見た。瞳に涙を浮かべ、両手を握りしめている。

 俺には読心術なんて技術は無い。しかし彼女がとても必死だということ、それだけは分かった。

 何かに一生懸命なその表情は例えオバケになっても変わらない。そう思い知らされた。

 だから、答えは一つしかない



「いいよ」


「えっ……?」



 少々、いや、かなりお人よしだとは思う。普通なら断るだろうとも思う。だけど、こんなに一生懸命な子を放っておけない



「俺はキミのパートナーだ。協力する。だから迷惑をかけても良い。俺の為に何かしなくてもいい。自由にして良い」


「良いん……ですか?」


「まぁ……なんだ。俺も1人暮らしだったからな。その、少しでも賑やかな方が良いかな……って」


「賑やか、ですか?」


「あぁ。だってほら、キミって言っちゃいけない事を自白しちゃうほど天然だしさ」


「も、もう!!それは終わった事じゃないですかぁ」



 女の子が俺に近づき、ポカポカと胸を叩いてくる。身長が小さいからか、頭が胸の位置にあった。

 そんな彼女に微笑みながら、俺はある事に気付く



「っと、そう言えばまだ自己紹介がまだだったな。俺は春人。水上春人って言うんだ」


「は……る……と……。ハルですねっ!!」


「あぁ、そう呼んでもらっていいよ。キミは?」


「私は弥生。弥生って言います」


「弥生か。それじゃあ弥生、これからよろしくな」


「はい、よろしくです、ハル!!」



 弥生がにっこりとほほ笑んだ。


 一人のお化け少女との不思議な出会い。


 それが「俺たち」の始まりだった




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ