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序
八月十九日、午後七時。私、成田良美が記す。
私はこれまで、この世に不思議なものなどないと信じて生きていた。この世界に存在するものは全て科学により説明することができ、そうでないもの、例えば幽霊や妖怪などの怪異は、空想の産物に過ぎないと考えていた。そう、あの恐ろしい体験をするまでは。
私はこれから、自ら経験した不可解な事件の全貌を、記そうと思う。現在日本に住む多くの人々は、かつての私と同じようにこの話を信じようとはしないかもしれない。しかし、私はこのノートが誰かの手に渡り、この悪夢のような出来事を一人でも多くの人が信じてくれることを、切に願う。