表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/20

第7.8話 アユは仲間を手に入れた

今回はアユちゃん視点のお話です。

「あ、火薬切らした」

「アユ何作ってんの!?」

「ルイうるさい」


 ぎゃーぎゃー騒ぐルイを放置して、何やら怪しげな液体を混ぜ合わせているシュリに声をかける。……こっちのがよっぽど危険だと思うんだけど。


「ちょっと火薬買ってくる」

「外雨降ってるから傘忘れないようにな」

「ありがとう」


 今日は攻撃パターンを増やすために本を見ながらボムを作ってみたんだけど、ついうっかり火薬を切らしてしまった。ボムは使い捨てだし火薬を切らしたら作ることもできない。


「雨か。面倒だな」


 私は玄関に置いてある傘立てから自分の傘をとって雨がぱらつく外へと足を踏み出した。




「あー、やっぱ雨の日に火薬なんて買いに来なきゃよかった」


 私のポーチには今ビニールがかかっている。中は四次元になっているから別に大量に買ったって問題はないんだけど、雨水がポーチに入ったら大変なことになる。せっかくの火薬がすべて台無しだ。


「うー。カサカサしてうるさい邪魔早く帰りたい」


 私は今度ポーチを防水機能付きに変えようかと半ば真剣に悩みながら歩くスピードをさらに上げた。


「にゃー」

「ネコ!?」


 ……ちなみに私はネコが大好きだ。これが立ち止まらずにいられるか!!


「ネコどこ?」


 きょろきょろと声が聞こえたあたりを見回す。すると、一か所私の目にとまった。


「にゃーにゃー」

「ここにいたのか」


 建物が途切れたところにある小さな空き地の木の下。そこにぽつんと小さな箱が置かれていた。中から黒猫が顔を覗かせている。

 私は静かに近寄ると、その場にしゃがみこんだ。そっと黒猫の頭を撫でる。


「お前、ご主人は?」

「にゃー」

「賢いな」

「にゃ!」

「私と一緒に来る?」

「にゃー!」


 私はガサガサとビニールを鳴らしながらポーチを開けると、中からタオルを取り出した。


「ほら、おいで」

「にゃー」


 私の方へ飛び込んできた黒猫をしっかりと受け止めると、タオルで雨に濡れた体を拭いてやった。


「よし、帰るか」

「にゃ!」


 私はポーチにビニールをかけ直して、タオルにくるんだ黒猫をしっかりと抱きかかえた。


「お前温いなぁ」

「にゃー」


 頬を擦り寄せると黒猫はくすぐったそうに身をよじった。


「あ、そうだ。名前。黒猫、お前名前は?」

「にゃにゃにゃ」

「そうか、カグラか。よろしくな」

「にゃ」


 私はもう一度ギュッとカグラを抱きしめた。カグラはにゃとしか言わないけど、なんとなく言ってることが分かる気がした。世の中不思議なこともあるもんだ。


「さて、帰るか」

「にゃ!」


 肌寒い、雨がぱらつく街の中を、私は小さいけれども温かい命を抱きかかえながらゆっくりと歩き出した。


「あの2人、カグラ見たらなんて言うかな」

「にゃ?」

「私の……私の仲間だよ」

「にゃー」


 私の小さな相棒が出来た日だった。

ル「わー! 黒猫だー!!」

カ「にゃ」

ル「あー! ねーねー! こいつ私に背を向けるんだけど!!」

シュ「力量を見抜かれたんだよ。……ほら、食べる?」

カ「にゃー」

ル「あー!! シュリには懐いた!」

ア「ルイうるさい」

カ「にゃ」

ル「ねー、二人ともー。カグラが頭ポンポンする」

ア・シュ「カグラ賢いなぁ」

ル「みんなのばかー!!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ