第4話 ルイは仲間を手に入れた
「ホンットーに、ありがとうございました!!」
「ありがとうございました」
同時に頭を下げる私とアユ。それに手を振って答えるシュリ。
「いいのよ、あれくらい。さてと、ひと段落ついたとこ早速で悪いんだけど、あたしを仲間に入れてくれない?」
「いいよー。……仲間!?」
私は一瞬快諾しかけて焦った。こんな凄いお人が仲間ですと!?
「うーん、私はいいと思いますけど、シュリさん、もうキャラバンとかに所属してるんじゃないですか? それなのに、私たちのところに来るんですか?」
「あー、まあ。ちょっといろいろあって……。ちょうどいい機会だし、新しいチーム組むって言ってそのまま抜けちゃおうかと思って」
「んなあっさり……」
私は呆然としてシュリを見ていたが、アユは特に驚いた様子もなく、ただ頷いていた。
「で、どうすんの、ルイ? 私的にはシュリさんが入ってくれたほうがいいと思うけど」
「何故私に聞く?」
「だって、あんたリーダーでしょ」
「そっか……。私がリーダー!?」
もちろん初耳である。だがリーダーという響きが気に入ったのでそのまま引き受けることにする。私がリーダーかぁ……。
「何一人でうっとりしてるんだ、お前」
まだ出会って間もないはずなのにシュリに突っ込まれてしまった。私は慌てて表情を引き締めると、気を取り直してリーダーらしく振る舞うことにする。
「そんなに入りたいって言うなら入ってもいいわよ。『私が』許すわ」
「……お前、リーダーを勘違いしてないか……?」
白い目で私のことを見るアユとシュリ。あれ? 私、間違ってないよね?
「え、だって、リーダーって偉い人だよね……?」
恐る恐る白い目を向ける2人に小さく手を挙げて質問。一層白くなる目。あれれ、私、なんか間違えた……?
「お前って奴は……」
……呆れられた。
「これだから目を離せない。まったく、あたしがたまたま通りかかったからいいものを……」
ん? んん? んんんんん? 呆れられて、ない? むしろ心配されてる?
「何か申し訳ないです……」
「わかりゃいいんだよ。以後気をつけるように。……何かあたしがいないと野垂れ死にしそうだな、こいつ」
私は恐縮して小さくなっていた。……私が小さくなったのが信じられない? 私だって恐縮くらいするわよ。なんてったって、私はヘタレだからな!!
「何かお前、人様に自慢できないようなことで胸張ってないか? 可哀想な奴め」
「なぬ!? そ、そんなことないもん!! 私にだって特出すべき才能が、才能が……才能……才……」
冷や汗がすごい。たぶん私の目は宙をさまよっているだろう。あれ? 私に才能なんて、あった?
「ルイにもすごい才能あるじゃない」
「え、何!? 教えて教えて!!」
アユの一言に思いっきり喰いつく私。この際プライドもくそもあったものじゃない。
「物を失くす。ピンチを呼び込む。ヘタレ。打たれ弱い。トロイ。防御紙。アホ。死に損ない」
「いきなり饒舌になったと思ったら言うことそれ!? それっていいことないよね!?」
「これも一種の才能じゃない。それに私、良い才能だなんて一言も言ってないわ」
「アユちゃんヒドイ……」
ついでに一言。人を貶すときだけイキイキとしないでください。怖いです。でもそんなこと本人に直接言えるような度胸を私は持ち合わせていないので心の中で呟くにとどまる。
「何、ルイ? 私に何か言いたいことでもあるの?」
「私の心を読まないでぇーー!!」
「だって、ルイ、すぐに顔に出るんだもん。分かりやす過ぎ」
「そっか。ウフフ。私、すぐに顔に出ちゃうんだ……」
「何アレ。ウザ……」
「いいから放っておくぞ。ああいうのは勝手にいじけさせておけばいいの」
腹黒2人(怖いから直接言うことはできないが)がこそこそと話しているとは露にも知らず、私は一人で小一時間ほど(長っ!! by腹黒ズ)いじけてたら、だんだん何にいじけていたのか分からなくなってきたので、復活することにする。
「ルイ、復活!!」
「あー、復活しなくてよかったのに」
「ヒドイ!!」
復活早々、またいじけタイムに入りたくなったが、そこはぐっとこらえて立ち直る。わ、私だってやればできる子だもん!!(涙目)
「(ああ、涙目だ。やっぱりこいつ面白い。いじりがいあるわぁ。最初にこいつとチーム組んで良かった♪)」
「あの、アユ? 何一人でニヤニヤしてるの?」
「別に……」
聞きたいのは山々だが、私の動物的直感がこれ以上はヤバいと告げているので、これ以上の詮索は諦めることにする。人間誰だって自分が一番可愛いもんだ。うん。
「んじゃ、新しいメンバーも加わったし、いっちょ派手にいきますかぁ!!」
「あー、お一人でどうぞ」
「あたしそう言うの苦手ー」
神様、こいつらは私をいじめるために生まれてきたんですか?