第2話 ルイは装備をもらった
「それでは、冒険を始める前に、初期装備をお渡ししたいと思います。何か希望はございますか?」
「白魔装備で!!」
「……軽いので」
かしこまりました。と言って奥に消える郁哉さん。私は装備を待つ間、アユさんと親睦を深めることにした。
「えと、じゃあ改めまして。私、岡谷瑠衣と申します。ルイって呼んでね。それと、好きなモノは本で、嫌いなモノは、明るいもの?」
「(引きこもりの典型か……)石中亜優。16。私もアユと呼び捨ててもらって構わないわ」
「へえ、アユも16なんだ。私もだよ」
「……見えない?」
「うん。ちっちゃいからもう少しちい……」
そこまで言って私は固まった。背中から冷や汗が出ているのを感じる。アユがすさまじい眼光で私を睨みつけていた。身長のことは触れちゃだめだった……?
「ちい……、そう地域にはあまり見かけないおとなっぽい子だなぁって……」
「何それ!」
自分でもわけが分からなくなってきたが、アユが笑ってくれたから、まあよしとしよう。アユ相手に身長の話は厳禁っと。
「お待たせしました。こちらがルイ様、こちらがアユ様用の装備となっております。お試しください」
そう言って郁哉さんが私に差し出したのは黒いローブと木でできたロッド。アユが渡されたのは黒いひざ丈ブーツにカーキ色の丸い小さなポシェットだ。
アユはポシェットの中身を見て満足げな表情を浮かべた。中に何が入ってるんだろう? まあいいや。それよりも問題なのは、
「何で白魔装備って言ったのにローブが黒なのよ」
これである。白魔と行ったらローブも白でしょ。
「申し訳ありません。しかし、初心者用の魔導師向けローブは黒しかないんです。初心者が白いローブ着ると霊力が高すぎて一瞬であの世行きになりますけど、試してみます?」
「いえ、黒で十分です」
慎んで辞退させてもらった。私もむやみやたらと死にたくはない。
「では最後にこちらをどうぞ」
そう言って郁哉さんが机の下から取り出したのはケータイのようなものと、腕時計のようなものと、眼鏡のようなものだった。
「何ですか、これ?」
「これは冒険者用携帯端末です。これで個人のパラメータ、パーティ情報、依頼の確認等ができるようになります。もちろん、敵の情報もこちらの特別課で把握している程度なら調べることがきます。これは冒険者の証のようなものなので、絶対に失くさないでくださいね」
「「へー」」
冒険者初心者の二人が物珍しげに携帯端末を取り上げる。
「3つの型がありますので、ご自分が気に入ったものをお選びください」
「じゃ、私これ」
「私はこれ」
私が選んだのはケータイ型の端末、アユが選んだのは腕時計型の端末だった。
「それでは、幸運を祈っています。神のご加護を」
郁哉さんがそういうと、私たちの体が一瞬白く輝いた。
「今の何?」
「神の加護です。冒険者ですと死ぬことも少なくはないので、蘇生ができるようになります。ただしそれなりの魔力やお金が必要になりますが」
「なるほど」
蘇生できるなら結構楽かも。でもそれなりに金とかかかるのか。できるだけ死なないほうがいいな。痛いのやだし。
それは隣のアユも同じらしく、郁哉さんの話を真剣に聞いている。
「とは言っても、初心者向けの依頼とかダンジョンとかあるので、初心者でも滅多に死ぬことはありませんからご安心ください」
「じゃ、その初心者向けのダンジョン、教えてください!」
かくして私たち、初心者冒険者の初探求は始まったのである。