第16話 ハロウィンパーティー! pert 3
「祝! ユウガ君ミスコン本選出場!! ということで、今日はお店の前に机出してドリンクとハロウィンスイーツ販売のみにするから今日はみんな遊びに行っていいわよ」
「サユリさん天使!!」
サユリさんの粋な計らいによって私たちは今日1日お祭りを満喫できることになった。
「うわぁ、あれおいしそう!」
「ん? ルイはリンゴ飴初めて? 食べてみる?」
「うん!」
ユウガにリンゴ飴を買ってもらって一口舐める。
「これが庶民の味……!」
「ルイ、一体お前はどういう生活をしてきたんだ……」
ケイスケとチハヤが若干引いているのを尻目にリンゴ飴をぺろぺろ舐める。甘くておいしい。
「お客さん、もう勘弁してください!!」
「えー、まだちょっとじゃん」
何やら泣き声が聞こえてきてそちらに視線を向けると、ハルトが射的用の銃を手に拗ねた顔をしている。……ちょっとって、それおそらく半分は景品消えてるよ。
その隣では輪投げの屋台があってこちらもアユが挑戦している。……店主の目つきからこちらが泣きだすのも時間の問題だろう。
「おっちゃん! 焼きそば1つ!!」
「500円だよ」
「おいおっちゃん、それはぼったくりだぜ。100円!」
「いやいや兄ちゃん、お祭り価格だ。400円」
「いやいやいや、ぼったくりすぎだ。200円」
「いやいやいやいや、これでも標準だ。300円」
「のった!!」
……ケイスケが屋台で値切っている。私は呆れて視線をケイスケから移すと、何やら怪しいテントに入っていくシュリが視界に入った。好奇心に駆られて後をつけてみる。テントの隙間からそっと覗いて……後悔した。そうだ、私は何も見なかった。
『ぴんぽんぱんぽーん! ミスコンの結果発表&表彰式を行いまーす! 候補者の皆さんは中央広場に集まってくださーい!!』
そんな放送が入って私たちはぞろぞろと移動する。結果は言わずもがな、ユウガのぶっちぎり優勝。今回で3連覇らしい。すごいなー。
「あ、いたいた。君たちちょっといい?」
声をかけられた方を見れば、そこにいたのは昨日ぶりの佐藤さん。ユウガが私の隣で若干身構えている。
「あ、志波、今回はお前じゃない。二条のほうだ。このあと行われる有志パフォーマンスで怪我人が出てな、確か二条はアクロバットいけるよな……ということで出ろ」
「命令っすか……。まあいいけど。んじゃちょっと行ってくるわ」
ケイスケのアクロバットかー。見てみたいかも。後で見にこよう。
「みんな、この後どこ行く?」
「いや、俺はいいですから」
「近寄らないでもらえますか」
「アユにユウガひどいっ!」
「お前じゃねーよ」
シュリにはたかれてよく見たら2人はナンパされてるらしかった。いやー、2人ともモテモテだね!
「あ、あれは……イクヤ様!!」
ミウが急に走り出した。慌てて追いかけると確かにそこにはイクヤさんがいた。よく気づいたな、すごい。
「おや、みなさんご一緒でしたか。お祭りは楽しまれましたか?」
「うん! 店番押しつけちゃってごめんなさい」
「私はいいんですよ。もう去年までで十分楽しんできましたから」
そういいながらイクヤさんのにっこりスマイル。はあぁ、癒される。ミウなんてもう溶けそうだ。
「ところでイクヤさんはどうしてここに?」
「それがですね、何者かに店の裏側にあるゴミ置き場が荒らされていて。その被害届を出しにいくところなんです」
「それならさっき広場で佐藤さん見かけたからまだいると思うよ」
というわけで私たちはぞろぞろと中央広場に戻っていった。案の定そこにはまだ佐藤さんが残っていた。
「お疲れ様です。今年は異様にトラブルが多いそうですね」
「ああ。ほんの子供のイタズラ程度なんだがな。困ったもんだ」
イクヤさんから被害届を受け取りながら佐藤さんはそう言った。
「原因がさっぱりなもんでこうイライラが……」
そう言いつつ煙草に火をつけて咥える。
「先輩!」
「ん? どうした池ちゃん」
司会をやっていた池上さんがかなり慌てた様子でこちらに走ってきた。
「先輩の、……先輩の煙草が盗まれました」
「!! んだと!?」
うわー、今ぶちっていったよ。フィルター噛みちぎったよ。佐藤さん怖い……。
私たちの怯えた様子を感じ取ったのか、すぐさま平静を取り戻し新しい煙草に火をつけて咥える佐藤さん。小声で、今年はどうなってんだ……ってぐちぐち言っている。
そこでシュリが小さく手を挙げる。勇者だ。
「もしよければ町回るついでに探しますよ」
「おお、それは助かる。さすがに私用に人員は割けないからな。助かるよ」
最後に頼んだ、と念を押されて佐藤さんとは別れた。
「では、私も仕事に戻りますね」
「イクヤ様が行くのならば私も行きますわ」
「姉さん待ってよ」
イクヤさんと双子も店に戻るらしい。5人になった私たちは佐藤さんの煙草の捜索を開始した。
「煙草ねー、煙草。佐藤さんってヘビースモーカーだったんだね」
「あたしもびっくりだわ。早いとこ見つけて煙草与えないと」
「どんどん機嫌悪くなっていきそうだもんな、あの人」
そんなこんなで歩くこと数歩。広場から近いにも関わらず、木が多くて見通しが悪いためひっそりと存在している公園で。
「あったーーーー!!」
ゴミ箱に大量の煙草の箱が入っているのを確認した。