第15話 ハロウィンパーティー! pert 2
1日目はお店を開くので大忙しだった。
ユウガとアユを外で客寄せに出し、残りは接客でてんてこ舞いだ。珍しく双子も全面協力している。
「ルイちゃーん! ちょっと来て!!」
「今行きます!」
注文票を厨房に出してからサユリさんのもとへ向かう。
「悪いんだけど、これ外に出して来てもらえる?」
「はーい」
巨大なゴミ袋を抱えて私は裏口から外へ出た。ゴミ置き場にゴミ袋を置いて一息。その瞬間、視界の端を微かに何かがかすめた。
「何今の?」
私疲れてんのかなぁ……。昨日も徹夜だったしなぁ。
「ルイちゃん早く!!」
「はい!!」
そうだそうだ。今はこんなことしてる場合じゃない。急いでお店戻らないと!
お店で忙しく働いている間に、私の記憶からゴミ出しの記憶は消えていった。
「午前中はこれでラストオーダーね」
サユリさんの一言でみんな一斉にほっとため息をついた。最後のお客さんが帰ってから私たちは各自厨房から飲み物を持ってきて座り込む。
「疲れたー」
「おいルイ、安心するのはまだ早い。まだ半分だぞ」
「それを言うなばかー」
言い返す私の声もいつもより覇気がない。大好きなココアに口をつけながら幸せに浸る。甘いものは人類の救いだよね。
『ぴんぽんぱんぽーん! ミスコン予選通過者を発表しまーす!』
「お、もう結果出たのか」
「さすが実行委員。仕事が早いな」
「実行委員?」
「あ、ハルトたちは知らなかったか。実行委員会ってのはハロウィン祭を開催するに当たり発足される完全ボランティアの取締役だ。運営は全部ここがやってる」
「ついでに逆らうと大変なことになるからね、ハロウィン期間は」
あ、しまった。放送聞き逃した。
「ねえ、発表聞いてた?」
「全然」
全員一斉に首を振る。サユリさんとイクヤさんは珍しく悪戯を思いついた子供みたいな笑みを浮かべている。……正直あの2人のこの笑みは怖い。
「おい、志波いるか」
そういいながらお店に入ってきたのは30代くらいのお兄さん。独特のはっぴを着ているから実行委員なんだろう。
「げ、佐藤さん……」
「ったく、放送聴いたらすぐに来いっての。探すこっちの身にもなれよ」
どうやらユウガの知り合いらしい。佐藤さんはユウガの首根っこを掴むとずるずると引きずって行った。
「ディフェンディングチャンピオンがいないと盛り上がらねーだろうが。……あ、こいつ借りていきますんで。……だいたいお前はなぁ」
最後にぺこりとお辞儀をして佐藤さんは出ていった。ずるずるとユウガを引きずって。
「……ユウガ、お前のことは忘れないぜ!」
「この敵は必ず討つ……!!」
「はいそこ勝手にユウガを殺さない」
ケイスケとチハヤがシュリに頭をパコンとはたかれた。
午後は別の臨時アルバイトを雇っているそうなので、私たちはユウガの冷やかし……ゲフン、応援に行くため広場へ向かった。
「人多っ!!
「こりゃあいつのファンクラブだな」
『ユウガ様ー!!」
「あ、あはは……。ファンクラブまであるんだ」
ユウガの意外な一面を発見してしまった。
「はい、それでは明日の本選に向けて、予選を突破したミスター&ミス候補の皆さんにインタビューをしたいと思います。司会進行を務めます池上です。よろしくお願いします」
池上さんは髪をポニーテールにした美人なお姉さんだった。
感想一言。ファンクラブがうるさくて何も聞こえなかった。これじゃあからかいようがないじゃないか!!
「それでは今日は時間の都合もありここまでです。みなさん明日の本選も頑張ってください!!」
その時だった。
舞台上の予選突破者を誘導していた池上さんが急に体勢を崩した……と同時に咄嗟に彼女を受け止めるユウガ。湧きあがる黄色い悲鳴。ここで暴動が起きなかったのは池上さんが既婚者だったからであろう。
「ん? 何あれ」
「どうした、ルイ」
「いや、なんかいたような……」
池上さんが体勢を崩した時、その足元に何かオレンジ色の物体が居たような気がした。
朝も何か見たし、なんだか嫌な予感がするなぁ……。
「幻覚じゃない?」
「いや、でも朝も見たの。あの色……かぼちゃ?」
「かぼちゃ……? んー、まあ少し調べてみるか」
シュリが頭をなでなでしてくれた。ちょっとだけほっとした。