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第13話 ルイは黄泉送りをした

ものすごく長いです。

読みにくい、誤字脱字等何かありましたらご連絡お願いします。

 私が道中ずっとしょぼんとしながら歩いていると、ようやく目的の洞窟が見えてきた。長かった、長かったよ。


「おーい! 遅いぞ」

「お前らがさっさと行っちまうのが悪いんだろ」

「悪い悪い」


 ケイスケがちっとも悪いと思っていない顔で謝る。しかしユウガのほうも慣れっこなのか1つため息を吐いただけで何も言わなかった。


「そういえばマレノって武器何使ってんの?」

「ん、うち? うちはこれ」


 そう言ってマレノは被っていたマントから一冊の分厚い本を取り出した。


「これ便利よー。詠唱のカンペにもなるし、このまま殴ってもいいし」


 あれ、魔導書って殴るものだっけ。


「ちなみにポチはナイフくわえて前衛やってくれるよ」


 そう言ってマレノは隣を歩く銀毛の狼を優しく撫でる。なんとこの立派な狼、マレノのペットでポチという名前らしい。

 マレノに撫でられたポチは得意げに喉を鳴らす。やばい、こいつ私より頭いいかも。


 私が密かにポチに対して対抗心を燃やしている間に一行はさっさと洞窟へ入ってしまった。ちょっと待って置いてかないでよう。


「雷」


 入った瞬間チハヤの声が聞こえて、次の瞬間私の目の前に雷が落ちた。


「チ、チハヤさん!? いきなり危ないよ!?」

「お前の目の前にモンスターいるだろ」


 チハヤに言われて足元に目を落とす、とそこにはぴくりとも動かないゾンビさん。


「きゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

「南の洞窟のモンスターはアンデッド系みたいだね」


 そんなに穏やかにいうものじゃないですからそれ!!


 いつもは冷静なアユとシュリも若干顔が引きつっている。マレノはというとこちらも口が高速回転してるから詠唱に必死なのだろう。


「というかチハヤ詠唱短縮スキル持ってるんだね」

「んー、詠唱めんどいから」


 さすがです。


「魔法なら私も! ……ひとつ、ふたつ、みっつ、数えし言の葉神の意を借る、邪を打ち払う光は夢の如く、微睡みて安らかなる救いを与えよ」


 次の瞬間、静まるその場。あれ? 私なんかした?


「おいルイ今何やった一体何をしたんだ!?」

「ぐるじいぃ」

「シュリ、落ち着いて」


 シュリに絞められて乱れた襟元を直していると、マレノが遠慮がちに話しかけてきた。


「あのー、ルイ? こんな大規模な対アンデッド魔法、初めて見たんだけど?」

「ん? 大規模?」


 そう言われて改めて辺りを見回してみる。先ほどまでうじゃうじゃいらっしゃったアンデッドが跡形もなく消えている。


「え? これ私がやったの?」

「お前以外に誰がいる」

「シュリが冷たいー!!」

「シュリも混乱してんだからあんたも落ち着きなさい」


 アユに頭をポンポンされて私も涙を引っ込める。


「そういえば俺も噂でしか聞いたことないんだけど。ルイが今使ったのって“黄泉送り”じゃないか?」

「“黄泉送り”? 何それ。私はただ家にあった本から学んだだけだけど」

「お前んちの蔵書こええ!!」


 何はともあれ恐ろしいものが視界から消えたので気分いい。うん、ルンルンだ。


「ルイ、対アンデッド戦では最強……?」

「なんか言ったー?」

「いや別に」


 なんか周りのみんなが挙動不審のような気もするけど、いっか。


 それからアンデッドが現れるたびに私が“黄泉送り”を発動しつつ移動し、30分ほどで最深部に到着した。


「ツバサ!!」

「ん? この声は……ルイ? ルイなのか!?」


 10年ぶり程の再会になる知り合いの青年は、あれからなかなかの好青年に育ったらしい。


「驚いたなぁ。おばさんにはルイは引きこもりになったって聞いてたのに」

「何それひどーい!」

「まあまあ、むくれるな。助けに来てくれてありがとう。助かったよ」

(大人だ……)


 ツバサの優しい一言で私は満面の笑みになる。最近優しい言葉とかもらってなかったもんなー。


「南の町の領主のご子息、海音寺翼さんですね。うちはお父上から依頼を受けた者です」

「父さんが? どうやら大事にしてしまったようだ。すまない」

「いえいえ。それでは戻りましょうか」


 それからは特に問題もなく、私たちは洞窟の入口まで戻ってきた。


「しっ。静かに」


 アユがそっとみんなに制止をかける。ユウガとアユがそっと外の様子を窺う。


「どうしたの?」

「なんか穏やかじゃない奴らが外にうようよいる」

「ツバサさん、どうやら本気で命を狙われているみたいだね」

「ルイとチハヤは念のためここでツバサさんたちと待機。残りは外の奴らやっつけるぞ」


 ケイスケの指示に私たちは無言でうなずく。さすがblazerのリーダーだね!!


「あー、誰だこいつら」


 ケイスケ達が洞窟から出ていったそうそう、リーダー格っぽい奴がそう口を開いた。


「俺らさー、金持ちっぽい坊ちゃんをやれって依頼受けてんだよ。さっさと引き渡してくんねーかな」

「知っててもテメーらなんかに誰が引き渡すか」

「ああ? お前ちゃんと相手見て言ったほうがいいよ」

「相手見んのはお前らだろッ!!」


 ケイスケ渾身の一撃がリーダー格の顔にのめりこむ。一発で沈んだ。ケイスケさんさすがです。


「テメーらやっちまえ!!」


 なんか余計にいきりたつガラの悪いお兄さん方。しかしそんなのにひるむ私たちではない。


「俺のこと忘れられたら困るなぁ」

「あたし男じゃないし」

「女だからってなめるな」

「うちの出る幕ないな」


 ユウガさん笑顔で弓射るの止めてください。シュリさんがちでキレてます。アユも爆弾投げない! マレノは戦ってください!!


 私が心の中で突っ込んでいると、戦闘はすぐに終了した。積み上がるガラの悪いお兄さん方。うん、一応みんな息はしてるのね。この人たちの技量が恐ろしい。


「みんないい腕してるなー」

「ツバサ、今は感心するとこじゃないから」


 ツバサは相変わらず大物すぎる。私とチハヤとツバサたちで談笑しながら洞窟を出た。


 ん?


 今、何か視界の隅で光ったような……気のせいか。


「あー、オレ腹減った! 早く帰ってサユリさんの飯!!」

「俺も久々に動いて腹減った」

「お前は魔法一発しかうってないだろうが」


 これだけ戦闘が続いても男の子たちは元気だ。もちろん私も。10年前から少しは成長したであろう私を、ツバサは優しい目で見ていた。




 ―――一方その頃。


「あら、イクヤ様ではありませんか! お久しぶりですわ。お会いしとうございました」

「私もです。出来ればそれをしまっていただけませんか」


 イクヤが指し示したのは、上品な言葉を操る可憐な少女が構えている巨大なスナイパーライフル。それに対し、少女は可愛らしく首をかしげた。


「あら、どうして? 私も正式な依頼を受けてこれを構えているのですが」

「あの青年は私が所属するギルドで保護することになっているのです。出来れば貴女方とは争いたくないのですが」

「まあ、争うだなんて! イクヤ様の命とあらば」


 そう言って少女は慣れた手つきでてきぱきと片付け始める。


「あんたも早く片付けなさい」


 少女がそう言い放った先には、これまた少女に瓜二つと言っていいほどの容姿を持つ少年。


「姉さん、また依頼放棄かよ」

「イクヤ様の命ならば仕方がないわ。ほら、行くわよ」


 少年はしぶしぶと言った様子で腰に銃を戻し、立ち上がる。


「もしよろしければ四精亭というところにいらしてください。私が今お世話になっているところです」

「四精亭、ね。かしこまりましたわ。近々お伺いします」

「それにしても、随分と暗殺者として有名になったのですね」


 イクヤの言葉に、少女は愛らしく微笑むだけでその場を立ち去った。




 ……その数日後、四精亭に美雨と晴斗と名乗る双子の愛らしい姉弟が訪れたのだった。

イクヤさんが暗躍しています。


この双子については次回もっと詳しく書きます。

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