第12話 ルイはものすごく驚いた
今回も短いです。その分次がめちゃくちゃ長いです。ごめんなさい
それは、私たちがお昼の休憩時間をだらだらとしゃべりながら過ごしていた時のことだった。
「みんなー!! 副代表が決まったわよー!!」
そんな言葉とともに店の中に入ってきたのはここの店長であるサユリさん。ギルド代表も兼任する彼女が言うのだから、副代表とはギルドのほうだろう。
「では副代表兼副店長の……」
どっちもかい!!
サユリさんは外にいるのであろうその人に早く早く、と声をかけながら手招きしている。
「みんなご存じイクヤさんでーす!」
「まさかのー!?」
びっくりだ。ひっじょーにびっくりだ。それはもう天と地がひっくり返るほどの……
「はい、ルイは一旦落ち着こうね」
シュリにポンポンと頭を撫でられ……るわけもなくぼかすかと殴られながら私は悲鳴をあげる。
「分かったから! ……うー、バカになったらどうしてくれんだ」
「それは死活問題だ」
今度は大真面目な顔をしたシュリがアユと男の子三人組(シュリ曰く3バカトリオ)を集めてひそひそと相談し始めた。なんなんだよこいつら!!
「皆さまお久しぶりです。行政改革の後、就職先を失い路頭に迷っていたところをサユリ殿に拾っていただきました。微力ながらお手伝いさせていただきたいと思います」
私たちの騒ぎ声もなんのその、完璧ともいえる丁寧な礼をするイクヤさん。いやー、その角度惚れ惚れするね!
「さて、顔合わせも済んだところさっそくで悪いんだけど依頼を持ってきた方がいるの。どうぞ入っていらして」
「やっほー! シュリ元気?」
「マレノ!?」
元気いっぱいに店の中に入ってきたのは真っ黒なマントを被った、これまた髪がさらっさらの小柄な女の子だった。その後ろからはゆったりと銀色の毛並みを持つ狼が入ってくる。
話を聞くとどうやらマレノさんはシュリの幼馴染らしい。
「にしても急にどうした?」
「それがさ、うちが今住んでる町の領主の息子が中央の町に向かってる途中連絡が取れなくなったらしいの。それも3日前から。心配でしょ?」
「あれ? ここ中央の町に属してなくね? マレノさん、だっけ? なんでここに来たの?」
「ご存じなかったのですか? 先の行政改革の項目の中に大規模市町村合併がありましたよ。この村は中央の町に合併されました」
ユウガの問いに丁寧な回答をするイクヤさん。さすが、出来る人は違う。
「まあ、それで領主の代替わりが間近なこともあって政敵に狙われたんじゃないかって心配した現領主が依頼を出したってわけ。それでこっち来たはいいんだけど捜索がうまくいかなくて。それで現地民に協力頼もうと思って、ここに辿りついたってわけ」
マレノさんが話し終えたところで部屋に小さくメールの着信を知らせる電子音を響いた。勝手知ったる様子でメールをチェックしたのはイクヤさん。イクヤさん万能すぎるだろ。
「……どうやらその領主の息子殿に関する依頼がこちらにも届いたようですよ」
そう言ってイクヤさんがパソコンを操作すると、私たちの端末が一斉に振動した。
「今データを送信しました。各自依頼を確認してみてください」
「イクヤさんさすがです」
その言葉が自然と私たち6人の口からこぼれた。
私は手元の携帯端末に視線を落とした。
『中央の町南の洞窟に一般人3名迷い込んだ模様。要救出。情報によると迷い込んだ人物は南の町の領主子息、従者2名。最後に目撃されたのは洞窟の入り口で3日前』
「間違いないな」
「というわけでマレノさん、よろしくね」
ユウガスマイル炸裂。マレノさんの頬が赤く染まってるよ。さすがユウガだね。
「今回俺留守ば……」
「はい、チハヤ行くよー」
ケイスケに襟首を掴まれたチハヤがずるずると引きずられながら出ていく。
「あいつら自己紹介してけよ……。俺はユウガ。で、さっき出ていった小さいほうがケイスケで大きいほうがチハヤ。よろしくな」
「私はルイ。windyのリーダー。そう、私がリーダーなの!! よろしくね」
「お前はいいから。私はアユです」
「協力感謝します。うちは関希乃。マレノって呼んで! よろしく頼むわ」
にこやかに今回のパーティーが編成されて、私たちは洞窟へ向かった。
洞窟へ向かう道すがら、私は1つ気づいたことがあった。
「そういえばさ、その南の町の領主の息子ってツバサじゃない?」
「よく知ってるね。そうだよ」
「アイツももうすぐ領主かー」
「ルイ知り合いなのか?」
シュリの問いに私は首を縦に振る。
「親同士が仲良くて、必然的に私たちもよく会ってたから」
「あー、そう言えばルイんちは金持ちなんだっけ」
「そうなんだ。意外だなー」
おいおいユウガさん、それは一体どういう意味だ。つまり私にはお嬢様的な要素はないと。
「でもほら、世間知らずなところとか虚弱体質とかは」
「なるほど。確かにそうだ」
……もういい。私は何も言いません。言わないもん!!
「まあ、でもほら、そこがルイのいいところでもあるから」
「アユ~」
「良いところと悪いところは紙一重っていうしな」
「………………」
シュリさん、そこで落とさないでください。