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第10話 ルイは迷子になった

やっと男性陣の登場。構想出来てから約半年まったく出番がなかったという奴らです。

 その次の日である。


「……ここどこ?」


 私は茫然として座り込んだ。見渡す限り、そこにあるのは木、木、木木木木……とまあ、要するに森の中である。


 その場に座り込んでここに至るまでの経緯を思い出してみる。遡ること数時間前……




「おふぁよ~」


 まだ呂律の回らない私は目をこすりながらリビングに入った。と、普段ならもうすでにそこに姿があるはずのアユとシュリの姿がない。


「あれ、おかしいな。私よりも2人のが起きるの遅いなんて」


 しかし時計を見るとそろそろ出ないとまずい時刻。仕方がないので私は1人で家を出ることにした。


 ……そもそもこれが間違いだったのだ。


~~歩くこと数時間~~


「おかしいなー。こっちの道のはずなのになー」


 既に自分の周りの景色は明らかに市街のそれと違う。うん、まあ、何とかなるよ。


 挫けそうになる自分の心を励ましながら一歩ずつ前へと進む。


 ……そして現在に至る。


「んー、ここ、明らかに森だよねー。ダンジョンだよねー。モンスター出るよねー!!」


 案の定モンスターに見つかって全力走である。冷静に言ってるようにみえるだろうけどね、必死なんだよこっちは!!


 恐る恐る後ろを振り返ると、……出ました、先日もお会いしたウルフさん。前回はこっちが狩る側だけどね、今度はこっちが狩られる側……笑い事じゃない!!


「いやーーーーーーー!!」


 私とウルフの生死をかけた争いが始まった。


―――数分後―――


「あいうぃん!!」


 勝った。見事な勝利だった。私はウルフに1人で、1人で! 勝ったのだ!! 逃げ足の勝利!!


「で、ここどこ?」


 気がつけば明らかに木の密度が上がっており、うん、いわゆる最深部ってやつだね!


 時計を見れば約束の時間はとうに過ぎている。もう少しすれば心配したアユとシュリが迎えに来てくれるはずだ。うん、きっとそうに違いない。


「家宝は寝て待てだよね~」


 あれ、でも家宝って寝てればくるんだっけ? まあいいや。


 私はその場にストンと座り込んだ。お腹空いたな~。


「グルル……」

「いくらお腹空いたからってこんな大きなお腹の音が鳴るなんておかし……」


 そう。おかしいのだ。私は1つの予感に思い当って恐る恐る後ろを振り返る。


 ウルフさんご対面!(2回目)


「勘弁してよ……」


 相手は既に飛びかかる姿勢万端、対するこちらは座ったまま。少しでも動けば私の命はないだろう。


 考えろルイ、どうすれば生き残れるんだ!!


「無理ぽ……」


 今更後悔したってもう遅い。あー、サユリさんの手料理、一度は食べてみたかったなぁ……。


「とおーー!!」


 急に間抜けな声が聞こえてきたと思ったら、誰かがウルフに向かってライダーキックをかますところだった。


 ウルフ、あっけなくKO。


「ふう、こんなもんか。大丈夫だった?」

「はい! ありがとうございました」

「いやいや、かわいい女の子助けるのは基本っしょ。ところでどうしてこんなところに?」


 私が頭を下げてからそっと上をうかがうと、人のいい笑みを浮かべた1人の少年、たぶん私たちと同い年くらいが訊ねてきた。身長はシュリと同じくらいかな?


「実は……」

「殿ー。あいつ見つかった?」

「いや、まだだけど」


 私が説明しようと口開いたところで誰かが割り込んできた。ちょっとムッとして声をした方をみると、背の高いこれまた同い年くらいの少年がこちらに歩いてくるところだった。


 ……ってあれ? なんか私警戒されてる?


「えと、私に何か?」

「チハヤ、今回の討伐ターゲットの特徴は?」

「カエルアンコウ。少女や少年の姿をした疑似餌で人間を誘い、自らの食料とする」

「ってことは、こいつ、本当に人間か?」


 冷や汗がたらり。一難去ってまた一難? 今日の私ついてなさすぎ!


 とりあえずどうにかしてこの人たちに私は人間だって分からせないと。


「んー、まあ、雷一発でも当てれば本体出てくるんじゃね?」

「ひぃ!!」

「よせよチハヤ。女の子怖がってるじゃん」

「んじゃ引っ張ってみる?」

「一本釣りか……悪くねえな」


 なんなのこの人たち!? ……こうなったら隙を見て逃げるしかない!!


 私が逃げ出そうと後ろに一歩踏み出した時、背中に何かが当たった。


「ふぇ?」


 恐る恐る振り返るとそこにはとっても大きなウサギさん。とても凶悪な面構えをしています。


「ユウガ今だ!!」

「了解!」


 とっさにしゃがみこんだ私の上を何かが通過した。後ろからどさりという音が聞こえたので振り返ってみると、額に矢が突き刺さったウサギさんが倒れていた。


 ……あれ、一歩間違えれば私に突き刺さってたんじゃない?


「いやー、囮みたいに使って悪かったね。オレはケイスケ。二条啓介だ」

「……チハヤ」

「俺は志波佑我。一応弓の腕には自信あるんだけど、怖がらせたならごめん」

「私は岡谷瑠衣です。助けてもらってありがとうございました」


 怖かったのはこの際置いておいて、とりあえずお礼の言葉を言う。なにはともあれ命は助かったし。


「ルイ、だな。改めて聞くけどどうしてこんなところに?」

「実は……かくかくしかじか」


 あれ、おかしいな。なんだか目から液体が……。


「………………」

「殿、この子泣いてるよ。どうすんの」

「うし! ルイ!!」

「はい!」


 急に名前を呼ばれたので反射的に元気よくお返事。挨拶は基本です。


「オレたちが家まで送ってやるよ」

「え、でも……」

「家、分かんの?」

「分かんないです……」

「じゃあ、決まりだね。女の子森において帰るわけにもいかないし」


 ユウガさんに頭なでなでされた。あれ?


「そうと決まれば日も暮れるしさっさと帰るぞ! チハヤー! お前も走れー!!」

「おー」


 とか言いつつまったく走る気配のないチハヤさん。ケイスケさんだけ1人小さくなっていく。


「あいつ、ああいう奴だから」


 と苦笑いするユウガさん。私も苦笑いを返しておいた。

ちなみにルイが最後に襲われたモンスター


・ラビットベア

クマサイズのウサギ

すばしっこくて無類の女好き


もひとつおまけ

カエルアンコウは実在します。出てくる機会はもうないと思うけど。

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