第9話 ルイはギルドに所属した
「ルイー!! 起きろ!!!」
「んー、あと5分ー……」
「それ何回目だ! ったく、あと5秒以内に起きなければ……」
「わー!? 起きる! 起きるー!!」
朝からシュリにとんでもない脅しをかけられながら飛び起きた私は、眠い目をこすりながら朝ごはんを食べていた。
「牛乳やだー……」
「わがまま言うな。というか食べながら寝るな」
アユに頭をぽかりと叩かれてやっと覚醒する。
「うー。だって牛乳嫌いだもん……」
「そういうこと言ってるから背伸びないんだよ」
「アユに言われたくな……わー!? ごめんなさいごめんなさいごめんなさいー!!」
アユの顔を見て私は必死で頭を下げる。たぶんあれだね、これがアニメとか漫画なら顔にモザイクかかってそうだよ、そのくらい怖いんだよ!!
「さて、ルイの支度終ったら出かけるぞ」
「ふぇ? どこに?」
「所属ギルド探しにだばか!!」
シュリの持っていた紙の束が私の頭に綺麗にヒットする。
「痛いー! 今すごくいい音してたよ。スパコーンってきれいに決まってたよ!?」
「いいから早く支度しろ! 今日中に所属ギルド決めるぞ」
「私がリーダー……」
「あぁ?」
「なんでもないですごめんなさいー!!」
とりあえずシュリの機嫌がまた悪くなる前にと急いで残りの牛乳を飲み干す。うえぇ……。
その後5秒で洗顔し、20秒で歯磨き。櫛で髪を梳きながら自分の部屋に飛び込み着替える。所要時間計3分。
「支度終りました!!」
「よろしい。行くぞ」
こうして私たちは既に日も高く昇った外へと足を踏み出した。
「あついー」
「うるさい黙れ」
「アユー、シュリが怖いよー」
「そりゃそうでしょ。もう10件断られたからね。イライラもするでしょ」
「うー。横暴ー」
口ではそう言いながらも私はひたすら足を動かす。一応分かってはいるつもりだ。自分のせいですべて断られていると。
「……きついなー」
「ん? 何か言った?」
「なんでもなーい」
それからまたしばらく歩いたところで地図を見ていたアユが歩みを止めた。
「ここだ。ラスト1件。ここがダメだったらもう自営業しかないね」
見た感じとても明るい雰囲気をもつ建物だった。1階は飲食店になっているらしく、ドアには可愛らしいフォントでopenの文字。
「副業で食堂とか酒場とかやってるギルドも多いからね」
「へー。これ可愛い」
私はドアの前に置かれていたウサギの置物の前にしゃがみこむ。
「ほら、とりあえず中入ってみよう」
アユとシュリに手を引かれて、ウサギに後ろ髪を引かれつつ中へと入る。
ガチャッ
カランコローン
「あら、いらっしゃい。冒険者さん?」
「はい! えっと、今所属させてもらえるギルド探してて……」
「そうなの? うちなら大歓迎よ! わたし一人で経営してるからなかなか宣伝も出来なくって……。あなたたち見たいな可愛い女の子が3人も入ってくれるなんてラッキーだわ!!」
「あの、私たちまだ新人なんですけど、大丈夫ですか?」
「誰だって最初は初心者よ。これから少しずつ経験を積めばいいの。それにほら、わたしだって出来る限りお手伝いするし、ね?」
……神だ!!
このとき私たち3人の心はシンクロした。きっとそうに違いない!! そのぐらいこの人はいい人だった。
「よし決めた!! 絶対ここ入る!! リーダー命れ……痛!!」
「うるさい黙れ分かってる」
「うるさくてすみません。この子ちょっと幼いんで」
「ちょ、アユ!? ひどくない?」
「あらあら、元気ね。じゃあ改めまして。わたしは小百合。これからよろしくね」
小百合さんは少しおっとりした感じの美人さんだった。始終ニコニコしていて少し幼い印象を与える。
「私はルイです! それで、あっちの背高い眼鏡がシュリでこっちのちっちゃいの……ゲフゴフ」
「アユです。よろしくお願いします。……ルイ? 少しあっちでお話ししてこようか」
怖い! アユさん怖いです!! というか既に襟絞めあげてます!!
「……アユ、そろそろほんとにルイが死ぬ。止めとけ。……とまあこんな感じで迷惑おかけするかもしれませんがよろしくお願いします」
「うふふ。明日から楽しみだわ」
そう言いながらサユリさんは一旦奥へと引っ込む。そして戻ってきたときにはその手に数枚の紙を持っていた。
「これが必要な書類ね。ここにパーティー名とメンバーの名前、年齢とか必要事項書いてね。それでここに1人ずつサインして」
サユリさんに言われたとおりに全員が必要な書類を書きあげる。
「よし。windyね。これで手続き完了よ。これからよろしく」
「あのー、このギルドって私たちのほかにどんな人が所属しているんですか?」
「他にはもう1組み、男の子3人組だけよ。あなたたちとも年が近いし……明日顔合わせ兼ねてパーティー開くわ! そうと決まればさっそく準備しなくちゃ。腕がなるわー!!」
そう言って私たちはサユリさんに追い出されてしまった。張り切ったサユリさん怖い。
「他のメンバーってどんな人かな」
「依頼によっては協力することもあるしね、バカじゃなければいいけど」
ちょ、シュリさん? そこでなぜちらりと私の方を見るんですか!!
「ここなら依頼来なくてもお店のお手伝いとかで稼げそうだし。何とかなるんじゃない?」
私たちはとりあえず明日に備えて帰ることにした。