第1話 ルイはハローワークに行った
ル「この物語は~」
ア「とある高校の~」
シュ「とある教室の~」
ル・ア・シュ「クラスメイトのパロディからお送りします!」
※この物語の登場人物は、実在する人物をRPGで例えたらどんなふうになるかを想像して書かれたものです。実在する人物名、団体名は全てフィクションです。探さないでください。ちなみに作者もいるよ!
この世にはあってはならないものが二つある。それは……
「ルイ!! 何時まで寝てんの! 早く起きなさい!」
「朝日イヤー!!」
目覚めかけに浴びる朝日と……
「いい加減引きこもってないで仕事探しに行け!!」
仕事である。
私、岡谷瑠衣はこの村での義務教育、小、中学校の9年間を終え、現在絶賛ニート中の16歳である。ちなみにこの村の同級生たちは家の手伝いだのなんだのですでに全員働いている。
なぜ私が仕事しないのか。別に私が無能なわけではない!←これ大事。
する必要がないのだ。現在私はこの村の村長の家に身を寄せており、金には困っていない。現村長も大変優秀な方で、私がいると逆に迷惑がかかるくらいだ。
だからといって何もしていないのは外聞がよろしくないらしく、毎朝学校に通ってた頃と同じ時間に叩き起され、仕事を探すように言われている。探す気無いけどね。
「あんたねぇ、これ以上定職につかないでいるつもりなら……この家追い出すわよ」
「うわー! それだけはやめて! 探しに行ってきます!!」
というわけで、私、ルイの定職探しが始まったわけである。
「はい。こちらハローワークです。岡谷瑠衣様ですね? お待ちしておりました」
というわけで、私が今日やってきたのは各村や町にあるハローワークである。村長があらかじめ話を通しておいてくれたらしく、すぐに私の番が回ってきた。
「では、こちらの書類に必要事項をご記入ください。出来ましたら私のところまで。制限時間は10分です」
「へ? 制限時間?」
渡された書類に目を落とすと、そこには仕事探しにはまるで関係無いようなことばかりが学生の敵、いわゆるテスト形式で書かれていた。
「うへぇ、嫌な記憶が……」
もともと仕事を探す気なんかないし、テストなんか大嫌いであった私は、しかし、学生の性というものでけっこう本気で解いてしまった。だって卒業してからまだ一年も経ってないんだよ?
「できたぁ……」
ここまででかなりの生気をしぼりとられた私は少々ぐったりとしながら受付のお姉さんにテスト用紙、もとい書類を渡した。
「はい。ご苦労様でした。次はこちらに手をかざしてください」
「? こうですか?」
「はい、それで結構です。……ありがとうございました。では検査結果が出るまであちらでお待ちください」
「検査?」
仕事探しに検査? 不思議に思って隣の窓口を見ると、隣の窓口もちょうど検査とやらが終わったところらしく、私同様きょとんとしていた。
隣の子は黒いショートの髪に、くりくりっとした黒い目。身長は、私よりもちょっと低いくらいかな? とってもかわいい子である。
私は暇つぶしも兼ねてその子に話かけてみることにした。
「こんにち「20番と21番でお待ちの方ー。検査結果が出ましたので窓口までどうぞ」
手元の番号札を見ると、20番。ちくしょう、何故そのタイミングで呼ぶ!?
隣をうかがうと、その子も呼ばれたらしく、私のことはさらりと無視して窓口へと向かっていた。
「えーと、20番岡谷瑠衣様と、21番石中亜優様ですね? 検査の結果、適性ありと判断されたため、特別課へご案内します」
「え、特別課って、ちょ、聞いたこと無い……」
「………………」
一人パニクっている私を置いて、先ほど石中亜優と呼ばれた女の子は特に動揺した様子もなく、無言で係のお姉さんの後についていっている。何故そんなに冷静になれるんだ。
仕方がないので、私もおとなしくついていくことにした。
「それでは改めまして、初めまして、ルイ様、アユ様。私はハローワーク特別課、初心者歓迎部の郁哉と申します。それではまず初めに、冒険者という仕事についてご説明します」
「初心者歓迎部って……」
「……ツッコムとこそこ?」
隣のアユさんから初めてツッコミが入った。なんか感動!
しかしその後すぐに私から興味を失ったらしく、ニコニコと待っている郁哉さんに向き直った。
「その、“冒険者”というのはどういうものなんですか?」
「冒険者というのはこの世界中にあるダンジョンを探索し、調査から魔物討伐まで、さまざまな依頼をこなしていく仕事です。腕が立ち、有名になれば個人的に依頼を受けることもあるそうですよ」
「その……ちなみに稼ぎ、とかは?」
「それはもう、あなたたちの頑張り次第で0~∞まで。高額なモノは難しいものが多いですからね」
一人ポカーンとしている私を置いてけぼりにしてアユさんと郁哉さんはサクサクと要点を押さえた会話をしている。ホントに私大丈夫かな……。
「冒険者初心者の方はだいたいパーティを組むか、隊商の1員となって旅をする方が多いそうですよ。稼ぎはその分少なくなりますが、安全ですから。腕が立つようになれば、傭兵といって一人で活動する方もいらっしゃいます」
「なるほど。今からでも私が入れそうなパーティとかキャラバンとかありますか?」
「少々お待ちください……、現在ですと、一週間後位に一つそこそこ大きなキャラバンが来る予定ですが……」
「うーん……」
手元の端末に指を滑らせながら郁哉さんが答えた。一方アユさんは一週間後という短いようで長い期間をどうするか悩んでいるらしい。
よし、質問なら今がチャンス!
「あの~」
「はい、何でしょう」
「私とパーティ組んでくれそうな人で、強そうな人って……」
「テメェみてえなもやしを相手にするような奴ぁいねぇよ」
うわぁ! めっちゃ笑顔ですごいことさらりと言われた! というか郁哉さんアユさんと私で態度違いすぎない!? どーせ私なんて引きこもりのもやしっ子なんだ……。
「……(何かへこんでる。面白い♪)」
何か視線を感じて隣を見ると、アユさんがめちゃくちゃキラキラした瞳でこちらを見つめていた。
「ルイさん、でしたっけ? 私とパーティ組みませんか?」
「え、いいの!? やったぁ!」
そのキラキラしたおめめはちょっと気になるけど、まあいっか。
そんなこんなで冒険者パーティ『windy』が誕生した。
誤字脱字、設定等でおかしなところがあったら作者まで。