ヘッドフォンと耳の穴
すっごく短くて、『これ小説??』って感じなんですが、電車に揺られながらでもいいので、読んでいただけたらいいカナァと。
…酔ってもなんの責任もおいませんケド。(笑)
「私が皿を洗ったげる!!」
そう言ったアタシ、沙良は皿を洗っていた。
ヘッドフォンをつけ、歌を口ずさむ。
「~♪」
スポンジの泡を皿に擦り付け、洗い流す。
たまにやると楽しいものだ。
…だが、しばらくして…それは起こった…。
「……う゛っ…!?」
……痒み。
ヘッドフォンの近くで痒みが生じた。
「…っ。
痒い…でも掻いたら…。」
自分の手が濡れている。
こんな手で耳を掻いてみろ。
ヘッドフォンが壊れるかもしれない。
「ここは耐えなきゃ。」
なんとかガンバってみる。
しばらくして皿があと2・3枚ぐらいに減り、まだ痒いままだが光が見えた…気がした。
「…やっと…掻ける!!」
少し笑いを浮かべ手を動かしていた。
すると母がこっちに向かって来て。
「ゴメンねぇ??沙良。
洗い物…増えちゃった。」
…母は大量の皿を持っていた。
「………。」
思わず眉間に皺をよせ、黙りこんでしまう。
母は申し訳なさそうだがお茶目な表情をしていた。
表すなら、『てへっ』ってトコだろうか。
母は皿を流し台に置き、スタスタとリビングへと行ってしまった。
…正直ムカつく。
「…増えちゃった。」
か細い声で呟く。
だが、ここでやめたら親切に
『私が皿を洗ってあげる!!』
なんて言ったのが水の泡となるだろう。
もういいか???
掻いちゃおうか???
いいんじゃないの???
ヘッドフォン…壊れても。
ヘッドフォンはまた買えるけど、この痒くてたまらなくて、ツラい時間はプライスレスなのだから。
「……ダメ。
ダメよ、アタシ!!」
とにかく一所懸命手を動かす。
もう泣きそうだった。
音楽なんて耳に入らない。
寧ろ、なんでつけたんだろう。
それのせいでこんなに苦しんでいるというのに。
今思えば、母が来たときに『掻いてくれ。』って言えばよかったのか??
……いんや。
そんなコト恥ずかしくて言えやしない。
そんな感じで焦りながら皿を洗っていると、少し年の離れた妹がやって来た。
「喉乾いちゃった。」
そういうと妹は私が洗ったコップを1つ手に取る。
そのもう片方の手にはアップルティーが持たれていた。
「……かうな。」
「?」
「使うな……!!」
「え…???」
「コップを使うなァァァァァァァ!!」
「ええええええ!?」
『らっぱ飲みしろ!!』と妹に怒鳴り付けコップを使用するのを阻止した。
痒いのだから…と自分に言い聞かせ、無我夢中で皿に泡を擦り付ける。
もうそこから誰もキッチンに出入りする人はいなかった。
痒みなど忘れ、手を動かす。
蛇口を思い切り捻り、水がすごい勢いで噴き出す。
それから十五分後だろうか。
「…終わったぁ~!!!」
そう叫んだのは。
もうその時には痒みなど消え…え??
「……痒み…ないわ。」
沙良はしばらく立ちすくんだ。
それから大人になった沙良は
『皿を洗う際、ヘッドフォンは付けないように』
と自分の子供にも教えるのであった。
投稿する際に思ったんですケド。
一回手を拭いて掻く、ってことは出来なかったのかなぁ??
…自分で書いておきながらですが。