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異世界少女は殺し合う  作者: 廃丁
4/9

第4話 二コルとガレット

「ん」


目を開けると

茶色い空が見えた


いやよく見れば

それは空ではなく木組みの天井だった



(ん?

私、外にいたはずじゃ)



周りを見渡すと

漆喰の壁に木材の床と天井

イスズは荒めの布で作られたベッドに寝ていた


右の壁には窓があり

朝なのか部屋に光が差し込んで

鳥のさえずりがかすかに聞こえていた


状況が理解できないまま

とりあえず体を起こしてみる


すると体に違和感を感じ自分の衣服を確認した

イスズの服は今まで着ていた

現代の洋服ではなくなっており


ベッドの布と同じ荒い生地でできた

長袖とズボンに代わっていた


(私の服は・・・)


いまだ理解しきれない状況のなか

ボーっとしていると

となりの部屋からくぐもった声が

聞こえてきた



「もうすぐ起きてくるころだと思うの

そしたら話を聞きましょう?」



「わかったけど

あの子をどうするつもり?

どこの誰かもわからないのに・・・」



「はぁもう!

うじうじしないで!

早くいくわよ!」



どうやら二人の男女がしゃべっているようだった

女の方は少し高い声で話し

男はなよなよした雰囲気の声だった


聞き耳を立てていると二人の足音がこちらに

向かっていることに気づいた


そして部屋の扉が勢いよく開き

二人の男女が入ってきた



「起きてるー?」



「そんな大きい声だすなよ

寝てたら可哀そうだろ」



ヨーロッパ風の十代の若者が二人騒がしく入ってきた

一人は金髪の巻き毛を肩まで伸ばし

赤いローブを身にまとった女の子だった


もう一人は青い髪の短髪に

革の鎧を身に着けた男の子だった


二人とも彫りの深い顔立ちだが

どこか幼く二人並ぶとお似合いの背丈だった



「あ!

やっぱり起きてるじゃない!

身体は大丈夫?痛いところはない?

そうだ!お腹はすいてるかしら?」



いきなり質問されて戸惑っていると

男の子が女の子を静止した



「待って

起きたばかりなんだから

ゆっくり話してあげないと」



男の子の忠告に女の子はムッとした表情をするが

すぐに表情を笑顔にして話始めた



「わかったわ

あたしの名前は二コル・ニコレ

こっちはあたしの幼馴染でガレットっていうの

ここまで理解できた?」



ガレットと紹介された男の子はため息をついたが

二コルはいたって真面目にイスズに質問していた


当のイスズは二コルに圧倒され

思考が止まっており

なんとなくうなずいた



「そう

じゃあ聞くけど

何か体が痛かったり違和感があったりする?」



イスズは首を振る

しかし回答に不満があったのか

二コルが不満げな顔をする



「ねえ二コル

もしかしてこの子

口がきけないんじゃないの?」



ガレットが二コルにそう言うと

納得した様子を見せる



「そういうこと!

だったら早く言いなさいよ!」



「はぁ」



ガレットがまたしても頭を抱え

ため息をつく


もちろんしゃべれなくないわけではないので

イスズは二人とコミュニケーションをとることにした



「私はしゃべれる」



第一声にしては低い声が出てしまった

喉の調子が悪いわけではないが

寝起きなのも相まって

少し怖い印象を与えてしまったかもしれない



「わぁ!

びっくりした

あなた案外低い声なのね!

自分のこと話せる?」



二コルが目をパチパチさせながら

イスズに近寄った



「ええ

私は古屋イスズ

異世界からきた」



イスズの自己紹介に

二コルとガレットは首をかしげる



「フルヤちゃんっていうのね

少し変わった名前ね!」



「いや

それよりも異世界から来たって

言ってる方を気にしろよ

もしかしてまだ混乱してるんじゃないのか?」



よく考えれば彼らがこのような疑問を呈するのも

無理はないだろう

逆の立場なら異世界人を自称する奴は

精神科への受診をお勧めしている



「いや私は狂ってない

それに私の名前はイスズ」



「へぇー

イスズちゃんね

やっぱり変な名前だわ」



「はぁ

それで異世界ってどういうこと?」



なおも名前が気になる二コルを置いて

ガレットがイスズに質問した



「言葉通りだけど・・・

私はこの世界とは別の場所から来たの」



「別の場所ってどんな?」



「うーんと

別の星っていうのかな

とにかくその場所で死んじゃって

今はこの世界で・・・」



そこまで言いかけた時

ふとイスズは言いとどまった


(もしこの世界で殺し合いをしてるって言ったら

どうなるだろう・・・

この人たちは私を厄介者だと思うかもしれない)


「?」

「おい大丈夫か?」



ガレットと二コルは

急に黙ったイスズを見て心配した




「大丈夫

心配しないで」



それからイスズは自分の状況を

どう伝えようか考えていると

二コルが話始めた



「あなたは平原の真ん中で倒れていたの

周りはすごい荒れてて地面はえぐれて

近くの森も全部切り倒されてたの

最初はすごく心配したわ」



「ちょうどダンジョンから街に帰る途中だった

俺たちが君を見つけたんだけど

服はボロボロで顔も血だらけだったから

俺たちが泊ってる宿まで運んできたんだ」

「一応言っとくけど

身体を拭いたのも着替えさせたのも

俺じゃなくて二コルがやったからな」



ガレットが慌てて付け足すように言った


「そうなの・・・

ありがとう」



どうやらあの戦いの後

私は眠ってしまったらしい

正直記憶がおぼろげで腹を刺されたあたりからは

よく覚えていなかった



「ああそれと

これが近くに落ちていたんだ

内容は見てないんだけど

君のだろう?」



そう言ってガレットは

あの手紙の切れ端をイスズに渡した



手紙には

能力の詳細が書かれていて

イスズはそこで初めて自分のスキルの内容を知った




「ねぇなんて書いてあったの?」



「いえ

特に教えるようなものじゃないから・・・」



三人の間に沈黙が走った



「それであんた

行く当てはあるの?」



しびれを切らした二コルが

話を切り出す



「行く当て?

そう言えばないけど」



「だったら丁度いいわ

あなた

あたし達と一緒にダンジョンに行くわよ!」


「おい!

勝手に決めるなよ!」


「しょうがないでしょう!

あたしこの子をほっとけないわ!」


「そりゃそうだけど・・・」



二人は喧嘩を始めた

一方のイスズは二コルの提案をありがたく感じていた


突如飛ばされた異世界で

同じ世界の人間から殺されかけ

野原に倒れていたところを助けられた


右も左もわからないこの異世界でどう生きていくのか

イスズには全く見当もつかなかった


そんな時にこの世界の人から

ついてこいと言われたのだ

それを聞いて安心しない訳がなかった


だが申し訳なさも感じていた

これから先また同じ転生者に襲われるかもしれない

その時彼らが巻き込まれたら自分のせいだと思った


イスズは悩み

二人の喧嘩の結末をただ見ているしかなかった


そして


「もう!

いいから一緒に行くわよ!

イスズ!」



半ば強引に二コルはガレットを説得し

イスズに手を差し伸べた


ガレットはしぶしぶといった感じだったが

二コルは満面の笑みを浮かべて

イスズの名を呼んだ


そのことが

イスズにはたまらなくうれしかった



「うん」



イスズはうなずいて二コルの手を取った



「さあ!

そうと決まれば早速準備よ!

ガレット!」



「なに?」



少しだけ不機嫌なガレットが返事をした



「着替えるから出ていって」



二コルはぴしゃりとガレットに言い放ち

彼はむっとしたがこのまま居座るわけにもいかず

しぶしぶ出ていった


二コルは部屋の隅に置いてあった

大きなカバンを開けて

いくつか服を取り出した



「さて

イスズ!あなたは何の魔法を使うの?」



「魔法?使えないけど」



生まれてこのかた

魔法を使ったことも見たこともなかった

しいて言うならマジックぐらいで

イスズはおかしなことを聞くなぁと思った



「なら武器かしら

何の武器を使うの?

剣?ハンマー?弓矢?」



「いえ

あいにく武道はやってなくって

泳ぎなら習ってたけど」



「えぇー!

じゃああの荒れてた地面は何だったの?

てっきりあなたたが起こした魔法だと思ってたわ!」



二コルは仰天して大きな声で叫んだ



「ごめんなさい

私じゃないの」



「そうだったのね

大魔法使いを仲間に引き入れたと思ったのに・・・」



二コルは悔し涙を流しながら

自分の服をしまい始めた



「はぁ

まぁいいわ

あなたを迎い入れるって

ガレットに言っちゃったし

いったんご飯にしましょう!」



「うん」



二コルは自分のカバンをもとの位置に戻して

イスズを一階の食堂に連れて行った


一階はまさに中世ファンタジーに出てくるような酒場で

無骨なデザインの長テーブルに背もたれのない椅子が並んでいて

ひげもじゃの大男がキッチンに立っていた



「おじさん!

朝ごはんをお願いするわ!」



二コルが大男に注文すると

大男はのそのそと作業を始めた


机にはすでにガレットが座っており

その向かい側に二コルとイスズが座った



「着替えた割には何も変わってないように見えるけど」



ガレットがふてくされて嫌みったらしく口を開いた



「失礼ね!

乙女が服装を変えたなら少しは褒めなさいよ!

でも正解よ!

イスズに合う服がなかったの」


「それならどうする?

買いに行くかい?」


「いえ

特訓するわ!」


「特訓?なんで?」


「イスズは魔法を使ったことがないんですって

だからご飯を食べたら町の外まで行って

魔法を教えるわ」


二コルは自分の杖を取り出し

自慢げに今後の予定を話した


丁度その時

大男のコックが朝食を運んできて

三人の机に置いて行った


「まあ

パンとチーズにリンゴまでついてる!

しっかり食べなくっちゃ!」



二コルは嬉しそうに朝食に手を伸ばした



「おいまて二コル!

魔法を使ったことがないってどういうことだ!

じゃああのえぐれた地面とかは何だったんだよ?」



まだ納得できでいないガレットは

二コルに詰め寄った

二コルはめんどくさそうに答えながら

器用にご飯を食べていた



イスズも自分のパンに手を伸ばし

久しぶりの食事をした



あっという間に食べ終わり

ガレットも二コルの話を聞いて

半ば納得したことで外に出ることになった



食堂の扉を開け外に出ると

そこにはまるでテーマパークのような

幻想的な風景が広がっていた


レンガ造りの家々や異国情緒漂う露天商

通りでは車ではなく馬が荷馬車を引いて闊歩し

中世風の鎧を着た人や魔法使いの帽子を被った人など

異世界らしい光景だった



「すごい」



この風景にイスズは思わす声を漏らす



「そうかしら

まあ今日はちょっと人通りが多いわね

さあ行きましょう」



二コルとガレットが歩き出す

イスズははぐれないように彼らの後ろを

ぴったりとついていく


宿は比較的町の中心にあった

周りには同じような格安の宿屋と酒場が並び

一本の太い通りに店が集中しておかれていた


道行く人は町人のようなシンプルな服装をしている人や

武器を背中にかつぐ筋骨隆々の大男もいた


さらに驚いたのは

馬車で

正確に言うなら馬が引いてる荷馬車に乗っていた

ドラゴンの死骸だった


骨だけになっていたが

恐竜のような頭部に角が生え

背中には腕の骨ほどもある

翼の骨があった



「ねぇ二コル

この町はなんていう場所なの?」


この町について知りたくなったイスズが

二コルに聞いた



「ここはランスの町

街の近くにいくつものダンジョンが見つかってからは

冒険者の街って言われるようになったの」



「じゃあ二人も冒険者なの?」



「そうよ

言ってなかったかしら

あたし達はダンジョンに潜って

魔物を倒してその報酬で生きてるの」



その後二コルはダンジョンのことを詳しく話してくれた


なんでも

ダンジョンとは魔物が密集しやすい建物のことを言うそうで

たいてい地下に大きな空洞があって

そこに魔物がうじゃうじゃいるそうだ


この魔物を放置するとやがてダンジョンから溢れだし

近くの町や村に行って人を襲うそうだ


これを食い止めるため町の人々は

ギルドを通して依頼をだし

冒険者たちがダンジョンを定期的に攻略しているという


倒した魔物によって報酬も変わるそうで

さっきのドラゴンの死骸は高い報酬が付くそうだ



そんな話を説明しているうちに

いつの間にか町の外に出ていた

さらに少し歩いて開けた野原に来ると


二コルが振り返り魔法の特訓の開始を宣言した



「さて!

この辺で特訓しましょう!

イスズ!覚悟しなさい

あたしの特訓は厳しいわよ!」



「わかった

始めましょう」



イスズは少しワクワクしていた

魔法という夢のような力

これからそれを教わるのだと思うと

笑みがこぼれた


ガレットはというと

少し離れたところで剣の素振りをし始めていた



「それじゃあ魔法を教えてあげるわ!」

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