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異世界少女は殺し合う  作者: 廃丁
2/14

第2話 シャルディア大陸

「異世界にて殺し合いをしてもらいます」



天使がこの言葉を発した瞬間

シンと場が静まり返った


私を含めたすべての人がこの現実を信じたくなかった

さっきまで夢見たなんでもかなえてくれる魔法のランプが

ここにいる自分以外のすべての人達の屍で成り立つと考えた途端

それまでの喜びや希望がすっかり真逆のドロドロした罪悪感へと変貌した


そして自分がこの中で生き残れるのか

果たして人を殺せるのか

今までフィクションの話だと思っていた

難題が自分自身に突きつけられた


しばらくの沈黙の後ある少女が天使に問いかけた



「殺しあうってどういうことですか?

異世界ってなんですか?」



黒髪の天使は微笑んで答えた



「ではその質問の回答を含め

儀式の説明をしていきます」



黒髪の天使は右手を宙にかざした

すると私達の地面にあった砂場が揺れ始め

砂の一粒一粒が私たちをその場に残して下に落ち始めた


やがて砂がすべて落ちると

この闘技場に入るときに見た

深淵ともいえる宇宙がこちらをのぞき込んでいた



「皆様がこれから殺し合いをしていただく会場はこちら」



天使の説明とともに地面の宇宙に浮遊する島が現れた

ぱっと見は丸い陸地に右側に海の穴がある三日月形の島


最初私は日本列島よりも小さい島だと思った

だけどその島は段々と大きくなってついには

宇宙船から見た大陸ほどの大きさになった



「我々がこの儀式のために特別に創造した世界

シャルディア大陸です」



誰もが息をのむ光景だった

現代の物理法則も天文学も吹き飛ぶ天体が宇宙に漂っているのだ


形は一枚の円盤に近かった

その表面の表側は緑に覆われていて裏側は岩石の山

そして表と裏の境には海が円盤状に広がっており

その淵からは裏側に落ちていくように滝が流れていた



「それではこの世界の説明を行います

第一にこの大陸にはあなた方がいた世界の物理法則のほかに

魔法という別の理が存在します」



今度は黒髪の天使ではなく隣の栗色の天使が話始めた



「第二にこの世界から脱出する方法はありません

大陸の周りの海を渡っても大陸の方に引き戻されてしまいます」


「第三にこの世界にはこの世界の魔法文明が存在します

ですがご安心ください

言語はすべて日本語に統一してありますので

新たな言語を覚える必要はございません」


「第四にこの大陸は日本の20倍程度の大きさです

皆様の世界でいうところのオーストラリア大陸ほどですね」


「これがシャルディア大陸の全容でございます

何か質問のある方はいらっしゃいますか?」



オレンジ髪の天使が妖艶にほほ笑んだ



だが誰も質問する者はいなかった

もっとも天使の話を無視していたわけではない

魔法やら大陸やら文明やら

壮大なスケールの説明をなかなか飲み込むことができなかったのだ



「質問がないようですので次の説明に移りますね」


栗色の髪の天使が丁寧にお辞儀をして後ろに下がった


「では私

キラリスフィから儀式のメインルールについて説明いたします」


代わりに前に出たのは金色の長い髪に

頭の後ろから生えている小さな翼を目の前で交差させている

一風変わった天使だった


「最初に皆様はシャルディア大陸のランダムな位置に転送されます

それと同時に一人一つ専用のスキルが与えられます

この内容はランダムとなっており後から変えることなどはできません」


「無事転送されればその瞬間から

殺し合いが始まります

始まった後は好きになさってかまいません

自らの足で他のプレイヤーを探すもよし

スキルや魔法を極めるのもよしです」


「最後の一人になるまで

殺しあってください」


天使は説明を終えた後唯一見える口元を

ニヤリとさせ自分の位置に戻っていった



「最後にこの私コルキコから

死亡時に関するルールを説明します」



そう言って栗色の髪の天使の横に立っていた白い天使が前に出てきた

彼女も先ほどの天使のように頭の後ろから羽が生えており

それを口元にもってきて白いマスクのようにしていた



「この世界で転生者の方が死んだ場合

前世の徳に関係なく地獄に落ちます」



この天使の言葉と同じタイミングで床の宇宙が消え去り

代わりに真っ赤な炎の景色が下に映し出された

そこが地獄であることは誰が見ても明らかだった


黒く焼け焦げた地面にはいくつもの死体が転がっており

身体には炎が燃え盛っていて焼けただれた皮膚が

染み出た体液を浴びててかりを帯びていた


だがよく見ればそれは死体ではなかった

死体の顔をよく見ると苦悶の表情を浮かべた顔がピクリと動き

こちらを見上げたのだ


さらに恐ろしいことに

私が地面だと思っていた黒い焦土は

焼死体が積み重なってできた死体の山だった

やがてその黒い死体たちも見下ろす私らに気づいたのか

立ち上がりはじめこちらに向かって手を伸ばした


それはさながら荒波のようだった

不規則に天に伸びる腕が波打ち

少しでも天に近づこうと周りの死体を踏み

踏まれた死体が痛がってあちこちでかすれた悲鳴が聞こえた




それまで

殺し合いをするという宣言を受けてから

まったく静かだった少女たちが真下の光景を見た途端

激昂した



「どういうことですか!?」

「なんでこんなところに行かなきゃならないの!?」

「あなたたちが勝手に呼んどいて

死んだら地獄行きって頭おかしいんじゃないですか?!」


「戻してください!元の場所にぃ!

家族のもとに返してください!」

「いやだぁいやだぁ」


「なんかのドッキリなんでしょ?

ねぇ?

そうだよねぇ?」



怒る者、悲しむ者、疑う者

皆それぞれ天使にこの残酷な結末を非難した


5人の天使は騒ぎ出す私たちを見下ろし

口元をゆがめた


「皆様には望んだ来世に行く権利があるのです

これくらいのリスクは当然です」



白い天使がさも常識かのように語る

しかしそんな簡単に納得できるものではなかった

誰もがこの凄惨な地獄の住人に

仲間入りするのだけは避けたいと思っていた



「なら私は降りる」



列の後ろにいた長髪の少女が手を挙げた

天使を含めたこの場にいる全員が少女の方を見た



「こんなバカげた話に乗れない

私はこの殺し合いから降りる

さっさとあの世にでも送ってくれ」



長髪の少女はジト目で天使たちの方を見つめ

彼女たちの言葉を待った



「かまいませんよ北条リコ

この儀式への参加はあなた方の権利です

もちろん降りる選択を取っていただいて構いません」



白い天使が少女の要求に応じ

リコと呼ばれた少女はやってられないとばかりに

天使たちを睨んでため息をついた


一連のリコと天使の会話を聞き

私を含めた誰もがこの殺し合いから

自分も降りたいと思った次の瞬間



「では」



白い天使が微笑みを浮かべながらリコを指さした



するとリコの真下に波紋が浮かび

少女はスッと落ちていった



「は?」



リコの間抜けな声だけがその場に残り

少女は炎が燃え盛る地獄へと落ちていった


少女たちは床に映る地獄の風景を食い入るように見つめた

落ちた少女がどうなったのか気になってしまったのだ


リコは落ちていって

やがて地面に着地した

いや

正しくは墜落したといった方が正しい気がする


彼女の身体は地面にめり込み

胸からあばら骨が突き出ていた

腕はあらぬ方向へとひしゃげ両腕ともくねくねと折れ曲がっていた

両脚は墜落の衝撃でもげてしまい

傷口からは血がどくどくと流れてしまっていた


「うぅぅ痛い

痛いのに

なんで、わたし生きてるの?」


地獄の100メートルくらい上空にいるはずなのに

彼女の声が聞こえた


さらに唯一かわいらしい顔だけが無傷で

身体が仰向けに倒れたおかげでこちらからその顔が伺えた


それまで冷静に天使と対峙していたジト目の顔は

痛みと恐怖で顔をゆがませて目元からは涙を浮かべていた


この地獄に彼女の苦痛の声がこだまする

しかしそれはより激しい悲鳴に切り替わった


彼女が墜落した地面は燃え盛る亡者たちの身体

墜落の衝撃で目覚めた彼らは体を起き上がらせ

彼女を取り囲んだ


「い、いやぁ!」


ある亡者は彼女の身体の隅々をまさぐり

久しぶりの若々しい肉体を楽しんだ


「やめてっ!」


さらにある亡者はそのみずみずしい体を羨ましがり

その肉体に噛みつき

そのうえ彼女の肉を噛みちぎった


「はなしてぇ

おねがい」


さらに恐ろしいのは

ここまでされてもリコは死ななかった


彼女の苦しみは永遠に終わらない

その声帯が焼き切れるまで叫び続け

やがて亡者と同じ姿になっていくのを

抗えぬまま感じていく


「はぁはぁ

だれか

タスケテ」


その光景を見て彼女の悲鳴を聞いてしまった私たちは絶望した

私の隣に座っていた子が崩れ落ち体を震わせながら失禁するのを

私はただただ見ているしかなかった


私自身恐ろしくて仕方がなかった



「すでにこの儀式は始まっております

この儀式から降りるということはすなわち

自ら地獄へ落ちるのと同義

さて

他に降りる方はいらっしゃいますか?」


もちろん

誰ひとりとして名乗り出る者はいなかった


すでに皆悟ってしまっていた

もう逃げることも抗うことも許されない

ここにいる全員を殺して来世の安寧を得ることでしか

あの苦しみから逃れる方法はない


誰もが覚悟を決め始めていた

私も生き残る覚悟を決めた


絶対に殺す

瞼をとじてママとパパの顔を思い浮かべる

ここにいるヤツ全員殺して

必ず生き返る



「どうやら皆さん

準備ができたようですね」



黒髪の天使ラシャメルリが声をかけた

皆殺意の籠った眼で彼女を見つめる



「それでは皆様をシャルディア大陸にお送りいたします

マイヤキール!」



「はぁ~い!」



黒髪の天使は私が最初に出会った桃髪の天使の名を呼んだ



「それでは皆さん!

ご武運を~!」



マイヤキールが叫んだのと同時に床の地獄に

霧がかかり地獄を覆い隠した

次に霧が晴れ

シャルディア大陸が姿を現した


少女たちの足元に波紋が浮かび上がった

一人また一人と下に広がる緑の大地へと落ちていく


私は最後に周りを見渡した

全員が転送される前に

どんな子がいるのか顔を覚えようと思ったのだ


しかし私は一人の子に目を奪われてしまった

皆が殺気の籠った眼で下の大陸を見つめる中

その子だけは悲しむように桃髪の天使を見ていた


真っ白い肌に黒い髪をストレートに伸ばした

雪女のような儚げな少女だった


それが私の最後に見た光景だった

そして私は大地に落ちていった




瞼を開けると

私の目の前には草原が広がっていた

遠くにはアルプスのような山々が見え

そのふもとか小川が流れていた



この美しい世界に

殺さなくちゃいけない相手がごまんといる

今は散り散りになっているけど

そのうち戦わなくちゃいけない


私はやる

全員殺して生き返る



この美しい世界に決意を固めていると

ふと右手に何かを握っていることに気が付いた



「なにこれ

こんな持ってたっけ?

手紙?」



それは羊皮紙を使った手紙で

開け口は封蝋で閉じられていた

ゆっくりと封をはがし中身を読んでみる



『ようこそシャルディア大陸へ

ここは剣と魔法の世界

きっと貴方を偉大な冒険の日々に連れだしてくれるでしょう


さてあなたには転生者としてスキルが配られました

このスキルは転生者すべてに与えられ

それぞれが違う能力を持っています


貴方の神技(スキル)はスティグマ

能力は


サッ


読んでいる途中で手紙の一部が落ちた

いや

正しく言うならば金色の何かに切り落とされた



「あらあら

読んでいる途中でしたの?」



声のした方向を向くと

黄金の大剣を持った少女が

いじわるそうな笑みを浮かべてこちらを見ていた


間違いない

あの闘技場にいた少女の内の一人だ


「あんた転生者ね」



「正解ですわ!

まさかこんなに近くに転送されるなんて

運が良いのか悪いのか」



少女は栗色の髪をポニーテールにまとめ

ワインレッドのロングコートを着ていた



「さっそく

一人目を殺さなくてはいけないようですわね!」



大剣を持った少女は大きく振りかぶり

私に襲い掛かってきた


大きく振り下ろした大剣は

私の体に向かって真っすぐ落ちてきた


すんでのところでかわしたものの

大剣が落ちてきた地面は大きくえぐれ

当たればひとたまりもないことが伺えた


「あら?

外してしまいましたわ

次こそは貴方をこの大剣で仕留めさせていただきます」



大剣の少女はもう一度振りかぶり

今度は横方向に向けて薙ぎ払うように大剣を振った


さらに続けて横に斜めに大剣を振り

大剣が速い速度で私の目の前をかすめた


切っ先が空を切るたびにシュッシュッと恐ろしい音を立て

私は逃げるように後退する



「逃げてばかりでは戦いは終わりませんわぁ~

ハァッ!」



しびれを切らした少女が飛び上がり大剣を私めがけて振り上げた

おおよそ少女が飛ぶには高すぎる跳躍を見せ

大剣の少女は逃げる私に追いついた

そして黄金に輝く大剣を振り下ろす



「カハッ」



気づけば大剣の切っ先は私の背中に刺さり

その痛みに思わず息が漏れてしまった


幸い貫通はしていなかったが

かなり深いところまで大剣が刺さっているのを感じる


傷口が焼けるようで大剣の冷たさが際立つ


「クッ」


身体をひねり大剣を抜く

ひねった反動を使って少女と対面する



「ウフフフフ

初めて人を刺しましたわ

まさかこんなにも快感だったとは」



少女は口元をかくして笑い

細めた目で見下すように私を見た



「それにしてもあなた

案外しぶといのですね

そんな傷を負っていて立ち続けるなんて

いったいどんな神技(スキル)を持ってっらっしゃるのかしら」



私は背中をかばいながらかろうじて立っているだけで

息も絶え絶えになっていた


そんな私を見つめながら

少女は地面に落ちていた一枚の紙きれを拾い上げた


それは私が読んでいる途中で彼女が切った私宛の手紙の一部だった



「あなたのスキルは・・・


なるほど


ウフフフフフ!

どうりでその傷を負っても生きているわけですわ!

であれば

私は貴方が死ぬまで徹底的に切り刻んで差し上げます」



少女は笑みを浮かべ大剣を地面に刺した

私はこれから何が起こるのかわからないまま

その場に立ち尽くした



「冥途の土産に教えて差し上げましょう

私の名前は西園寺イロハ

私の来世のため死んでくださいまし!」



イロハはそう言うと両手で大剣の柄を握りしめた



「スキル発動!

エクスカリヴァー!」



その言葉とともにイロハは剣を引き抜いた

だがイロハは大剣を引き抜いたのではなかった

大剣の刃の部分は地面に突き刺さったまま

その刃を鞘にして大きな刃に隠れていた細い剣を抜いたのだ


さらに大剣から紅い光が漏れ出した

光は彼女を取り囲み

深紅の鎧へとなって彼女の身体を包んだ


イロハは深紅の剣を構え私に向けて言い放った



「お覚悟なさって?」


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