中学生編①
俺は中学受験とかは一切せず、地元の中学に進学した。
入学したては特に何も起こらなかった。
お小遣いも1000円にアップしていたし、22時まで起きていいことになっていた。
テレビもそれなりに見てた。が、勉強はそれ以上にしていた。
中学に入ってしばらくすると、こんなニュースが舞い込んできた。
地元の市が、夏休みに中学生をニュージーランドに10日間派遣するキャンペーンをやるらしい。
書類審査・グループ面接などの厳しい選考を生き残った24人がタダで行けるらしい。
行きたい!ほんとにそう思った。
でも、倍率は限りなく低いはずだ。
だいたい夏休みに10日間も勉強を休むことを母が許すかどうか・・・。
ダメもとで母にこの話をしてみると、母は『ふーん』と言うだけだった。
が、次の日俺が学校から帰ると、母は市役所に行って、書類をもらってきてくれていた。
母「行きなさい。絶対行きなさい。いい経験になるから」
俺「でも面接とか」
母「誰の子やと思ってんの。受かるよ」
俺はもらってきてくれた書類に必要事項を書きこみ、応募した。
あとから聞いた話だが、書類選考まではかなり高い確率で受かるらしい。
意外に簡単に書類選考が受かったのを聞いて俺は喜んだ。
次は面接である。
ーーーーーーーーーー
面接が行われる日。
俺は父に引率され、面接会場まで行った。
父は俺の頭をボカボカ叩き、「がんばれよ!!」と言って俺を送りだした。
面接をする部屋のドアを開けると、椅子が円形に並んでいた。
そこにまばらに座る自分と同じぐらいの年頃の子たち。
そのとき俺はある女の子に目を奪われた。
そこにはとっても可愛い女の子が座っていた。
(可愛い子やなぁ・・・)
見るとローマ字で名札を付けている。
『Aiko』
(あいこちゃんかぁ~可愛いなぁ~・・・)
思わず鼻の下を伸ばした俺だが、いかんいかんと自分を落ち着かせた。
何か視線を感じ、俺は何とはなしにそのまま目をそちらにスライドさせる。
その中に知った顔がいるのに気付き、俺はびっくりした。
俺「A!!!」
A「うわ!Tやん!」
そう、塾での室外無理矢理放り出し事件の元凶、Aだ。
俺「なにしとん(笑)」
A「いやそっちこそ(笑)」
憎いやつだが、この緊張した余裕のない時に知った顔に会えて、俺は正直少し嬉しかった。
話しながら俺はAの横に腰かけた。
いよいよ面接が始まった。
グループ面接でのお題はよく覚えている。
『ニュージーランド(以下NZ)に持っていく、【日本】を感じさせるお土産を皆で話し合って、2つに決めてください。時間は20分」
俺は一生懸命考え、何回か手をあげ、自分の意見を述べた。
俺だけではなく様々な人が手をあげ、意見を述べた。
「やっぱり箸じゃないか、NZでは箸使わないだろうし」
「凧はどうだろう」
「お茶碗とか」
「和菓子」
「食べ物はあんまりよくないんじゃないかな。腐るし」
話せど話せど一向に決まらない。
刻一刻と20分が過ぎようとしていた。
俺は焦っていた。
これって、何にするかとりあえず決まらないと受かんないんじゃないか?
ってことはここのメンバー全員落ちるんじゃないか?
やばいやばいどうしよう。俺は焦って、手を挙げた。
俺「あと5分です!もうそろそろどれかに決めたほうがいいと思うんですけど!!」
上ずった声でそう言うと、横のAが「僕もそう思います!」とすかさずそう言った。
じゃあどれかに決めようってことになってまたわいわい話していたが、結局まとまらず、どのお土産にするか決まらぬまま面接は終わってしまった。
家に帰ってからも俺は凹みっぱなしだった。
絶対落ちた絶対落ちた絶対落ちた・・・。
一瞬でもあの可愛い子、あいこちゃんと一緒にNZか~はふ~んなんて夢を見たのが間違いだった・・・。どこの中学なのかなあの子・・・はぁ~ぁ・・・。
両親は慰めのつもりだろう、その日の晩御飯にステーキを用意してくれた。
それもあってか心は幾分か軽くなり、通知が来るころには俺はもう諦めていつもの日常を過ごしていた。
忘れたころに通知がやってきた。
どーせ落ちてるんだろうと包み紙を破き、文面を見る。
『・・・あなたは二次審査に合格されましたので、ここにお知ら・・・』
俺「おかあさーーーん!!おかあさん!!!おかあさん!」
母「なにー!うるさい!」
俺「おかあさん!受かった!合格した!やったあああああああああ!!!!!」
母「わああああやったやーん!!!!ほら言ったやろー!!受かるってー!!」
俺「よっしゃああああああああああ」
見事厳しい倍率を乗り越え、俺は晴れてNZに行けることになった。




