小学生編⑨
面白くて楽しい算数の先生は、この時、母親の次に怖い人とランク付けされた。
だがしかし。それでも俺は帰らなかった。
家には、こんなに怖い先生より1000倍は怖い母親がいる。
俺は今日どうなってしまうのだろう。
きっと先生から家に電話がいって、俺は母に殺されてしまうのだろう。
どうしようどうしようどうしよう・・・。
ふと見ると、白板の字が教室の扉の窓からちらっと見えた。
そうだ。せめて白板はうつして帰るんだ。
外に出されても出来る限り授業は受けてきました。
そう言えるようにしておくんだ。
せめて。
俺はぐすぐす泣きながらも、自分のノートを取り出し、そこにうつる文字を必死で書きだした。
他の学年の生徒たちに変な目で見られたりいろいろ話しかけられたりもしたが、そんなのどうでもいい。
自分の出来る最大限をするんだ。
のろのろと時間は過ぎ、その日の授業が終わった。
俺は自分のノートを手に持ち、そこにたたずんでいた。生徒たちがわらわらと外に出てくる。
俺の方を気の毒そうに、または面白そうに見ながら、一人一人帰って行った。
先生が教室の電気を消して、出てくる。
生ゴミか何かを見るような目で俺を見て、一言。
「授業を受けたかったら、次回の授業の時に反省文を書いてきなさい。以上」
これだけを言い捨て、すたすたと去って行った。
帰りのバスの中で、俺は誰とも、もちろん隼人とも一言も言葉を交わさず、ひたすら、ただひたすら、家に帰ったらどうするかを考えていた。
すぐに自分の部屋に逃げ込もうか。いやそんなことをしても鍵はないし意味はない。
いっそのこと帰り道で自殺しようか。
怖い。
隼人のところに泊めてもらおうか。
そんなことしようもんなら殴りこみに来るだろうな・・・。隼人に迷惑がかかる。
ああああああどうしよう・・・。
そうしているうちに。
いつのまにやら俺は家に帰ってきてしまっていた。
ーーーーーーーーーー
おそるおそる家のドアを開ける。
開けてすぐの玄関に母の姿があった。
俺「・・・ただいま」
消え入りそうな声でつぶやく。
無言のまま母が近付いてくる。
俺は覚悟してぎゅっと目をつぶる。
スパアアアアアアアアン!!!!
俺の頬をひっぱたく音。
続いて二発目、三発目が頬に浴びせられる。
俺は泣きながらごめんなさいを連発した。
母は鬼の形相で俺をしばき続けている。
俺は、好奇の目に晒されながらも必死で書いたノートを見せたが、そんなものは家の外に投げられてしまった。
母「しょっぱなから私に恥かかせて!!どうしてくれるの!?」
やっとしゃべったと思ったらこんな言葉が聞こえた。
俺は恐ろしくて恐ろしくて、数日は母親とまともに会話ができなかった。
しかしまだ話は終わっていなかった。
反省文を書かなければ。




