第58話 平原の深淵
尾張の平原で戦火は最高潮に達する。
増援を得た安土幕府の攻勢は容赦なく、七条久貞と民、兵の盾は深淵のような混迷に立たされる。
覚悟と理念が、今試される瞬間である。
夕暮れが尾張の平原を赤く染め、戦場は血と泥、焦土に覆われていた。
増援部隊が北と東から迫り、戦線の圧力が増す。
七条兵たちは疲労の中でも盾を掲げ、民を後方から守り続ける。
「殿……敵が二手に分かれ、側面を突こうとしています!」
真澄が叫ぶ。
久貞は短刀を握り、冷静に状況を分析する。
「右翼を固め、左翼からも援軍を回す。民を盾の中心に置くのだ!」
槍と矢がぶつかり、火花が散る。
戦場には怒号と叫び声が響き渡り、民の恐怖と覚悟が混ざり合う。
「我らの盾は民を守るためにある!」
久貞の声が戦場に響き、兵たちの士気を奮い立たせる。
赤甲冑の安土将が突進してくる。
久貞は短刀で応戦し、盾の列を崩さずに民の背を守る。
増援の影が迫る中で、兵たちは互いに支え合い、戦線はぎりぎりで保たれる。
平原の深淵のような混沌に包まれながらも、七条の盾は揺るがない。
久貞は瞳を赤旗に向け、次の指示を兵に送る。
「恐れるな。盾は理念と民を守るために存在する。」
嵐と戦火、増援の影が戦場を支配する中、七条の盾は今も民と共に立ち続けていた。
増援の圧力が戦局を深淵に導くが、七条久貞と兵、民の盾は耐え続ける。
次回、第59話「決死の前線」では、戦線の危機に久貞がさらなる決断を下し、戦場の均衡が揺らぐ。




