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第二次戦国時代 ―令和動乱記―  作者: 足利
第一章 影の久貞(前半)
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第43話 安土からの書状

七条の再建が進む中、遠く安土より届いた一通の書状。

それは表向きの外交文書ではなく、血のにおいを帯びた“密命”だった。

夜、七条城の執務室。

蝋燭の灯が揺れ、机の上の封書を照らしていた。

黒い封蝋には、かつて天下を統べた印――“安土桜”の紋。


久貞は手に取ると、短刀の刃で封を切った。

中から現れたのは、古びた和紙一枚。

そこには力強い筆致でこう記されていた。


「再び戦を起こせ。

七条の軍を以て、西国の残党を討て。

天下の再興は、そなたの剣に懸かっておる。」


署名は「織田信景」。

かつて久貞が若き日に仕えた、安土幕府の老臣の名だった。


「……まだ、戦を望むか。」

低くつぶやく久貞の横顔に、蝋燭の炎が影を落とした。


佐久間が静かに言う。

「殿、これは明確な挑発です。安土の中にも意見が割れている。

 民を盾に、勢力を試そうとしているのでは……」


「分かっている。」

久貞は書状を握りつぶし、机の上に置いた。

「だが、戦を拒めば“臆病者”とされる。

 応じれば、また血が流れる。」


沈黙の中、城外から太鼓の音が響いた。

それは夜警の合図。だが、どこか不穏に響く。


「……安土の間者が動き始めているな。」


「討ちましょうか?」と佐久間。

久貞は首を振る。

「いや、泳がせよ。闇の中で動く影を見極める。」


その瞬間、戸の外から小走りの足音。

若い家臣・結城真澄が駆け込んできた。

「殿! 安土よりの使者がもう一人、今まさに城門前に――!」


「またか。」久貞は立ち上がる。

「今度は何を告げに来た?」


真澄は一息つき、唇を震わせて言った。

「――“安土桜”の旗が、再び掲げられたそうです。

 場所は……尾張。」


久貞の瞳が細く光った。

「尾張……信景ではなく、その子か。」


彼はゆっくりと窓の外を見やった。

遠く夜空の向こう、東の方角にかすかな赤光が見える。

それは、再び燃え上がろうとする戦火の予兆だった。

かつての主君・織田信景の血を継ぐ者が、尾張で新たな旗を掲げた。

七条久貞の理想と、旧安土の野望。

再び、二つの理念がぶつかろうとしている。


次回、第44話「血盟の誓い」

――久貞は、ある若武者と密かに誓いを交わす。

それは、来るべき決戦の火種となる。

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