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第二次戦国時代 ―令和動乱記―  作者: 足利
第一章 影の久貞(前半)
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第38話 崩れゆく誓約

報復の夜を越えた翌朝――。

燃え尽きた屋敷と焼けた誓文が、幕府の「信義」という名の柱を音を立てて崩していく。

夜明け前の空は灰色に濁り、煙が城下を覆っていた。

燃え残った屋敷の柱から、黒い煙が細く立ち昇る。

その中心に、久貞は立っていた。


足元には焼け焦げた文書――幕府の誓約書が散らばっている。

かつて諸家が血判を押して交わした「忠誠の誓い」。

それは今や、灰と化し、風に舞っていた。


「……これが、我らの結末か」

久貞の声は掠れていた。

佐久間がそっと跪く。

「殿。まだ立て直せます。今は一度退き、態勢を整えねば」


「退く先はどこだ。

 この城も、民も、すでに敵味方で裂けてしまった」

久貞の手が震えていた。

それは怒りでも恐れでもなく、無力さゆえの震えだった。


そのとき、城門の方角から急報が入る。

「報告! 北門の兵が従順派の残党と交戦中! 内部の裏切りが発生しています!」

佐久間の表情が凍る。

「……もう、幕府の中で戦が起きているのですか」


久貞は深く息を吐き、空を見上げた。

「我が父の代に築いた信義の塔が、今、自ら崩れようとしている」

その言葉とともに、城の奥から爆ぜるような音が響いた。

火薬庫が燃えたのだ。


煙が立ちこめ、兵たちが悲鳴を上げる。

同情派の兵が消火を試みるが、すでに炎は止められぬ。

燃え上がる城の天守を背に、久貞は振り返らなかった。


「信義を掲げてきたが、それはただの幻想だったのかもしれぬ。

 ――いや、幻想だったとしても、私は守る」

久貞の瞳は再び燃えていた。

その炎は絶望ではなく、最後の意志の輝きだった。

幕府を支えてきた「誓約」は崩れ去り、同士討ちの混乱が始まった。

しかし、久貞の心には、まだ消えぬ炎が宿っている。

次回――第39話「約定の残響」では、滅びゆく幕府の中で彼が見出す“新たな覚悟”が描かれる。

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